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『フットサルの街』と呼ばれる由縁。成人の日に戦う2つの府中

2018.01.12

「正月、盛り上がるんですよ」。

 お盆を過ぎた2017年8月19日に聞いた言葉がずっと気になっていた。でも、その日には別の予定が入っている。それでもあの言葉の意味を知りたい、その空気を感じたい。悩んだ挙句、前日に予定変更を決意。翌朝の2018年1月8日の成人の日、予定とは異なる分倍河原駅へ向かう電車に乗った。

 あの言葉を聞いた場所、府中市立総合体育館で『第32回府中市フットサル大会』が行われていた。

 朝の10時、会場には20代の若者もいれば60歳を超える男性が、40代の女性が集っている。年齢と性別で分けられたカテゴリーは実に12。参加チーム数は200を越えている。フットサルを成立させる人数である5を掛ければ、1,000。最低でも1,000人が、この大会に訪れていることになる。

 大会は3日連続で開催。初日は小学生や中学生が戦い、2日目は高校生以上による争いがスタートし、この日訪れた最終日へと続く。使用する体育館は5か所。本宿、白糸台、押立、日吉、そして郷土の森こと府中市立である。この日の府中市立のフロアには、4つのゴールが用意され2つのピッチがあった。

 体育館前には、明らかに参加者とわかる人たちがいる。「20年ぐらい前から参加している」と、試合を控える選手たちがウォーミングアップをしていた。スーパーシニアにカテゴライズされた彼らは「普段からシニアの大会に出ている」現役プレーヤーである。その下には50代と40代、それぞれカテゴリー分けされている。「正月にみんな集まってフットサルをやって、この後に飲むのが楽しみ」と初蹴りを楽しんでいる人たちがいた。

「10月ぐらいからソワソワする」とは女性プレーヤー。「昔、成人式帰りの女の子が髪を盛ったままプレーしていた」と、その長い歴史であった光景を教えてくれる。「息子のフットサルがきっかけ」であるお母さん方は、応援する立場からプレーヤーに変化していた。

 次に体育館へやって来たのは、「こっちに引っ越したばかりで」という初参戦者の方。普段からサッカーをやっている男性は友人に誘われてこの体育館へ、リピーターが新たなリピーターを作っていた。そして「勝ちにいきますよ」と、真剣な表情をしていた。

 体育館内の掲示板には、朝8時から夜の21時まで大会が続くと書いてある。体育館にやってくるバスで、これから戦う者と戦いを終えた者が入れ替わる。ジャージ姿のお父さんが試合の合間に子供とゴーカートに乗っている。

「正月、盛り上がるんですよ」。

 2017年8月19日、Fリーグ第11節、府中アスレティックFCの府中市立総合体育館ラストマッチであるサポーターが話していた。その言葉は本当だった。これが『フットサルの街』と呼ばれる由縁であると感じていた。

 そして午後を回る頃、名残惜しさを抑え本来の予定である駒沢に向かった。府中市でフットサル大会が行われているその時、府中アスレティックFCは駒沢でFリーグ最終節を戦っていた。

写真・文=佐藤功(デジタルピヴォ!)

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