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7-0の完勝で初陣を飾った木暮賢一郎監督「またここから歴史が始まればいい」

2016.04.23

試合後の会見に出席したフットサル日本代表の木暮賢一郎監督 [写真]=河合拓

 2月に開催されたAFCフットサル選手権で屈辱にまみれたフットサル日本代表。アジア選手権3連覇、2016 FIFAフットサルワールドカップ・コロンビア出場権を逃したチームは、22日のベトナム戦で再スタートを切った。アジア選手権準々決勝でPK戦の末に敗れた相手に対し、日本は前半だけで6ゴールを奪い、後半もシュート20本を打つ攻撃的な姿勢を持続して7-0で完勝した。

 決して満足のいく練習時間もなかった中、木暮監督は選手たちのやるべきことを明確にし、勝つためにすべてを出し切ることを求めた。結果、日本はアジア選手権で敗れたベトナムを圧倒し、木暮監督も初陣を白星で飾った。スペインでプロ選手として活躍し、日本代表選手としても3大会連続でW杯に出場するなど、圧倒的な実績を誇る青年監督は、大舞台で再び日本が格下相手に敗れないために必要なことを、日本代表の歴史を知り、本当の意味での誇りを持って戦うことだと語った。

 以下、木暮賢一郎監督試合後記者会見要旨

――試合を振り返って?

「ずっと言ってきたことですが、こういう(アジア選手権でベスト8で敗退し、W杯出場を逃した)タイミングでのゲームですので、日本代表の誇りを持って、熱いゲームをしたうえで勝つという目標を持って大会に臨みました。選手にも言いましたが、ウオーミングアップからとか、開始のホイッスルが鳴ってから相手を圧倒するような、そういう気持ちを持って入っていこうということを立ち上がり実行してくれたので。最初の入りの部分がこういう結果を呼んだ重要な部分かなと思います」

 以下質疑応答

――立ち上がりピヴォにボールを当てるシンプルな形を見せて、そこからかなり点を取りました。試合の中でピヴォを置かない形もありましたが、この短期間でどういろいろな形を植え付けたのでしょうか。

「非常に短い時間でしたので、選手に伝えてきたのはとにかくシンプルにプレーしようと。特別難しいことを何か構築する時間はなかったので、誰もが知っているような、シンプルな攻撃のパターンをやろうとしました。大きく分ければ、ピヴォを使う形とピヴォを使わない形があると思います。今回(代表選手を)ラージリストから選んだ部分の中で、比較的に同じチームで普段プレーをしている選手の組み合わせを意識して招集している部分もあります。起用の部分でも、時間が特別あるなかではないので、日常的に各クラブでやっているコンビネーションを最大限に引き出すことは、選手にも伝えました。そういう起用は心掛けましたし、それを選手はしっかり感じ取ってやってくれたと思います。もちろん、トレーニングの中でシンプルなパターン練習といいますか、ある程度、こういう動きをして、こういう狙いを持ってというのは伝えましたが、それプラス選手の理解力の高さと、とにかくコミュニケーションをとってくれたり、普段のコンビネーションを最大限に発揮して、シンプルにやろうというのを最後まで貫くことができたのが、ある程度のバリエーションを見せることができた一つの理由だと思います」

――短時間で一番目指したものと成果は?

「目指したものは、まず勝つこと。何がなんでも勝つということは、最初のミーティングで話しました。勝つためにシンプルにプレーすることを一つ大きなテーマに掲げて臨みました。成果という意味では、勝つということは達成できました。選手には1-0でも、10-9でもいい。どんなスコアになるかより、40分終わったときに勝つ。勝つために誇りを持ってハードワークして、戦う姿勢を見せようということを言っていました。そういう意味では達成することができたと思っていますが、これで終わりではありません。もう一試合ありますから。まだ前半が終わったところです。そういう日本の誇りをいろんな方に見せる。そして勇気を与えるという意味では、まだ最初に立てたミッションはクリアしたわけではないので、もう1試合に向けては今から切り開けて臨みたいと思います」

――GK含めて全選手起用しましたが、GKの評価は?

「トレーニングが短い期間の中で、当然ここに来ているということで、非常に優れている実力であったり、リーグで結果を出している両GKですので、どういう使い方をするか、2試合トータルで見ていますし、状況にもよると思います。イゴール選手に関しては初めてのゲームということで、どういうタイミングで使うかとか、関口(優志)選手はAFCフットサル選手権を戦って、ベトナムとのゲームを戦っているとか、そういうモチベーションやどういうタイミングが一番心に響くというか、良い形で迎えられるかということを考えました。この試合に関しては、点差もあったということも(2人ともを起用した)理由にはあったと思います。もう1試合は、今からゲームのプランであったりを見たいと思います」

――こういうフラットな状態になると、これだけレベルの差が明確になる相手でした。アジア選手権のようなプレッシャーの掛かる場面で、100回に1回起きてしまうような敗戦が起きましたが、それを再び起こさないために、まだ日本代表の監督をやって1試合ですが、必要だと感じていることがあったら教えてください。

「日本代表の監督としてはまだ1試合目ですし、親善試合の1試合だけなので、あくまで僕が選手として経験したところでしか話せません。アジアの中での歴史を僕はしっかりとみんなが理解する必要があるかなと思っています。そういう話をゲームの前にも話しました。16年以上前というのは、W杯にも出ることができませんでしたし、僕だけではなく、その当時のフットサル界は当然イランにも勝てませんでしたし、タイにも負けたりとか、アジアでベスト4に行くのがギリギリとか、合宿の回数も少なかったですし、とにかく苦しい時代がありました。ただ、その中で2004年に初めて(W杯予選を)自力で突破したのですが、2000年に負けて、その4年間というのは、本当に当時の選手であったり関係者は、とにかく4年後のW杯(予選)を自力で突破しないと日本のフットサルを変えるというか、自分たちの環境を変えていくとか、注目されるとか、それこそW杯に出れば何かが変わるのではないかと思っていました。当時はFリーグという全国リーグもなかったですし、2004年の合言葉としてW杯に出れば全国リーグができるんじゃないかとか、多くの人に注目してもらえるのではないかと。そういう想いで4年間取り組んだことを僕自身もはっきり覚えています。その中の積み重ねの中でイランに迫ったり、当初、イランには0-8で負けたりと勝てなかったですし、他の国とも接戦をしているという中で、とにかくそういう強い想いと、自分たちで道を切り開いていくという思いとともににアジアの中での地位と言いますか、アジア選手権で優勝したり、W杯に出たり、イランと日本が常にアジアの中の2強という中でやってきました。そういうつらい時代の経験、思い、プライドを選手が変わっても、時代が変わってもつないできました。絶対にそういう思いは絶やさないという思いがあったから、アジアの中でそういう結果を築いてきたと思います。ただ、いつかは負けるときがありますし、今回がそういう残念な結果になったと思いますが、それまで築き上げてきたものが、その敗戦でゼロになると僕は思っていません。もちろんW杯に出られないことは悲しいこと、悔しいことであったり、進化を止めてしまう可能性があることかもしれませんが、原点に戻って、そういう時代があったのだから、ただ、自分たちを信じて、自分たちの力で変える。そういうスタートだという話を選手たちにもしました。そういう意味でフットサル日本代表選手の誇りを、ここに来た選手だけで思うのではなくて、あらためて日本フットサル界全体でそういうプライドを持ってやるしかないと思っていますし、そういうものを見せたいなというのは選手にも伝えたので。またここからそういう歴史が始まればいいなと思っています」

――初招集の選手も多くいますが、勝つということ以外にどういうことを感じ取ってクラブに帰ってもらいたいでしょうか?

「感じ取ってほしいのは、今ずっと話してきたようなものだと思います。日本代表を経験しないと、そういう誇りがどうだとか、日本がどうあるべきだとか、外から見ているよりも、やはりユニフォームを着て試合をすることでより実感したり、何かを感じる場だと思っています。この大会の中で伝えたいことは、技術的なものが何か変わるかとか、戦術的なものが何か変化があるということではなくて、日本代表に呼ばれて、練習着でもなんでも袖を通して、気持ちが昂って、この場所にもう一度戻りたい、この場所を失いたくないとか、常に呼ばれたいとか。そういうものをクラブに持ち帰ってもらったり、その選手にそういうものを感じてもらって、さらなる努力をしてもらう。僕ができることは、そういう機会を、ただ2試合終わったということではなく、今まで何試合も経験している選手もいますが、今回、ここにいる14名の選手に伝えたいのは、そういうところです。日本代表をクラブに帰ってからもっと強く意識してほしいですし、代表に行ったことで、クラブの他の選手が『アイツ変わったな』とか、そういうものを伝えて、みんなが本当に日本代表に呼ばれたいというものを、もう一度日本のフットサル全体に伝えたいなと。そういうものを体現したいなと思うきっかけを、この数日間で少しでも伝えることができればいいかなと思っています」

――帰化をしてイゴール(・ピレス)選手が加わることの意義を踏まえて、どういう言葉をかけてピッチに送り出しましたか?

「まず話をしたのは、いま言われたように帰化をしたという経緯はあると思いますが、日本人だから、ここに来ていると僕は思っていますし、日本人として見ています。なので、日本語しか使わないとか、そういう話はしました。彼だけではありませんが、この場にいるということがどういうことか理解して、そういうチャンスをしっかりつかんでほしいとは話しました。それはイゴール選手だけではなく、年齢は関係ないと思っているので、若い選手も経験のある選手も日本代表っていうのは誰にも保証はされていないと思っていますから。次があるからとか、そういったことではなく、とにかくやり残すことはなく、自分でチャンスをつかんでほしいというところです。僕も言葉(ポルトガル語)は通じますが、そういう意味でしっかり日本語でやろうとか、選手とも日本語でコミュニケーションをとろうとか、そういうことは伝えましたし、グループの中でリーダーシップをとってやってくれています。そういうのは素晴らしいなと実感をしています」

文=河合拓

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