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【インタビュー連載】フットサル日本代表『タシュケントの夜に』~GK関口優志「大きな忘れ物」~

2016.03.07

アジア選手権で背番号1を背負ったGK関口優志(エスポラーダ北海道) [写真]=河合拓

 フットサル日本代表は、4大会連続のフットサルW杯出場と大会3連覇を目指し、ウズベキスタンの首都タシュケントで開催されたAFCフットサル選手権に臨んだ。W杯の出場権が与えられるのは上位5チーム。日本は過去14大会すべてで4強入りを果たしていた上に、今大会に出場したチームは、「史上最強」とも評され、W杯出場は確実視されていた。しかし、準々決勝でPK戦の末に敗れると、順位決定プレーオフ1回戦でもキルギスタンに2-6で惨敗。大会3連覇どころか、W杯の連続出場を途切れるという最悪の結末に終わってしまった。

 プレーオフ1回戦終了後、フットサル日本代表の選手たちはウズベキスタンの地に残っていた。現地で、選手たちは現実を受け入れられずに、それぞれに苦悩、後悔を抱えながら、それでも懸命に前を向こうとしていた。そのときにインタビューに応じてくれた選手たちの言葉を『タシュケントの夜に』という連載として記す。

 第1回目は、初めて背番号1を付けてアジア選手権に臨み、初戦のカタール戦から準々決勝のベトナム戦まで日本代表のゴールマウスを守っていたGK関口優志(エスポラーダ北海道)。日本の若い守護神は、W杯出場権の懸かったベトナム戦に大きな忘れ物をしてきてしまった。

 以下、関口優志インタビュー

――今回のアジア選手権では、初めて1番を背負ってゴールを守りました。大会にはどのような心持で臨みましたか?
「いつも通りにプレーしようという意識がありましたし、実際にプレーしていても違和感はありませんでした。僕自身のメンタルも通常通りだったかなと思います」

――ベトナム戦で最初に決められたFKからのゴールについて。あの場面では、壁が一枚足りなかったのでは?
「あそこに関しては、結論から言うと僕の判断ミスです。最初、『3枚で壁をつくる』と言っていたのですが、逸見(勝利ラファエル)に『2枚で壁をつくれ』と言われて、そっちに合わせてしまいました。そこは僕の決断が悪かった。結局、逸見の言ったことに合わせてしまったので。そこは判断ミスというか。あとから他の選手たちと話したときは『3枚の方がよかったんじゃないか』と言っていたので、僕がしっかり決断できたなかったことが失点につながってしまったと思います」

――そのあとも、そのプレーを引きずってしまっていたように感じたのですが、実際はどうだったのでしょうか?
「失点に関しては引きずっていませんでしたね。あの瞬間は『やってしまった』と思いましたが、入れられてしまったあとも2-1で勝っていましたし、前半もそのまま終えることができたので。あの失点に関しては、引きずっていた部分はなかったと思います」

――そうなんですね。4失点目の場面、普段の関口選手なら止められていたのかなと思い質問しました。
「あそこはもう一歩、前に出るか、出ないかのところで、ちょっと一歩足を出してしまい、(シュートに対して)タイミングがズレてしまって、手が出なかった部分があったんですけど…。間違いなくあそこは流れ的にも状況的にも、絶対に止めないといけないところだったと思います。昨日も一昨日も、そのシーンが浮かんだり、『あそこでああしておけばな』、『こうしておけばな』という残像が残っていて。一昨日(ベトナム戦の当日、キルギスタン戦前日)に関しては、ほとんど眠れませんでした」

――それは日本代表として戦うプレッシャーだったのですか?
「負けたことに対する悔しさですね。(キルギスに)負けそうで怖いとかではなく、喪失感というか。まだ(W杯出場の)チャンスはあるのに、喪失感で。何とも言えない感情で。でも、そう振り返るとプレッシャーがあったのかなと思います。ベトナム戦が終わって、ピッチではこらえていたのですが、試合後にミーティングをしたときも、ずっと我慢して。でも、悔しくて、悔しくて、ミゲル監督に話しかけてもらって、(星)翔太さんに話しかけてもらって、最後に松崎(康弘)さん(FリーグCOO)にも優しい声を掛けてもらって…。そのときは体育館も暗くなっていて、ロッカーを出て、ちょうど一人になったとき、いろいろとこみあげて、涙が止まらなくなっちゃいました。ずっと我慢していたんですけど、抑えきれなくて…。これまで泣いたのなんて、Fリーグのデビュー戦で胸トラップに失敗して失点したときくらいかな…。それくらい、今大会に懸けていた想いもあったし、潤さん、俊さんのぶんも戦わないといけないという思いが強くあったので。申し訳なさ、悔しさがあふれました」

――ベトナム戦はPK戦にもつれました。前回大会の決勝ではイラン相手にPKを3本連続で止めていましたし、交代に関しては『なんでだよ』と思うところもあったのではありませんか?
「試合は、決して良い流れではありませんでした。ゴールを入れて、追いつかれて、入れて追いつかれてという流れだったので、交代になったとき僕は『なんでだよ』という気持ちもなかったですし、(PK戦から出場した藤原)潤さんに関しても、(第3GKの)俊さん(田中俊則)にしても、誰が出てもいいようなGKです。もちろん、自分が出たいという気持ちもありましたが、特に『なんだよ。オレを出せよ』という不満はありませんでした。『止めてくれ』と願うだけでした」

――今大会で選手たちに残った後悔は、次につなげていかないといけません。関口選手の中で、最も悔しく思っているシーンは、どのシーンでしょうか。
「振り返ると、その1点目のFKの失点が悔やまれることかなという気がします。2-0で勝っていた展開でしたし…。その場面では特に引きずらなかったのですが、今振り返ると、なんで逸見の言うことを聞いたかな…とか。もちろん、僕の判断ミスですが、自分の意思を貫いておけばなと考えたりもしますし……。4点目の場面も脳裏に焼き付くというか、もう目をつぶったら、試合の映像が流れてきて、本当に悔しい。そういう失点のシーンは、印象に残るというか、悔しい部分です」

――キルギス戦のあと、藤原選手に話をきいたとき「(関口)優志をW杯に連れて行きたかった」と話していました。W杯への思いは、他の選手に伝わるくらい強かったのですか?
「もちろん強くありましたが、それは潤さんの優しさでしょう。ベトナム戦までは僕がずっと試合に出ていたし、僕の想いも持って出てくれていたと思うので、そのように言ってくれたのだと思います。それはありがたいことです。ただ、本当にW杯には行きたかった。もし行くことができたら、本当にフットサルを辞めてもいいというくらいの想いはあったので悔しいです」

――まだコロンビア大会も始まっていませんが、次に出られるのは4年後になってしまいました。全員がプロではない中、今大会を区切りにする選手も出てくるかもしれませんが、関口選手は4年後を目指しますか?
「次の監督がどうなるかわかりませんし、もしかしたら(ミゲル監督が)継続するかもしれませんが、もし代わるのであれば選考基準も変わると思います。僕はそれほど大きい選手ではないので、監督の好みで選ばれる、選ばれないが出てくるでしょうが、W杯に出るという目標のためにも絶対に選ばれたい思いはありますし、今回、こうやってアジア3連覇を落として、W杯出場権も落としてしまい、この悔しい想いをもう一回、自らの手で取り戻したい気持ちはあるので、Fリーグからしっかりとアピールしてやっていけたらなと思います」

――先ほどのFKでの壁づくりの話のように、関口選手にはわかりやすい後悔、課題があるように感じます。この4年間で、誰に何を言われても確信を持てる状態にならないといけませんね。
「そこは振り返ると本当に悔しい部分で……。多分、あそこで壁を3枚にしていたら、相手はシュートを打たずにパスを出していたと思うんです。そこからどう流れが変わったかはわかりませんが、多分そういう状況になっていたと思うし、そうしたら違った流れになっていたと思うので。そこを振り返ると本当に悔しいです」

――あのシュートに関しては強かったものの、コースも正面に近かったのでは?
「ちょっと壁に入っていた(吉川)智貴くんに当たっていたんです。それでコースが変わったこともあるのですが、ファーポストの前に相手選手がいたので、蹴る瞬間にちょっとだけ意識がそちらにいって右に動いたところで、僕の左肩口にシュートが来たんです。僕の手もかすめたのですが、弾ききれなくて……。そういう部分があるので、本当に悔しいというか一つの決断で流れを変えてしまったのかなと思いますし、反省すべきところです」

――日本とアジア王者を争っているイランは、得点を重ねて相手を突き放す一方で、守備もゼロで抑えています。攻撃する時間が長くGKが守る回数が少ないこともあると思いますが、日本とイランの差はどこにあると感じていますか。
「イランの試合は映像では見ましたが、直接、生で見たわけではないので、はっきりとは言えません。ハイライトで見る限りは、良いシュートばかりが決まっていました。ゴール前にシュート性のボールを蹴って、ファーポストの前で他の選手が合わせるより、ドンと打ちきって入るイメージがあります。そういう個のシュート精度の高さは、(日本とイランの)差としてあるのかなと思います。(森岡)薫さんみたいなシュートを打てる選手が、イランには何人かいる印象です。そういう差が点を取り切れるところにあるのかなと。チャンスの数でいえば、日本もイランとそんなに変わらないと思いますが、そこを決めきれませんでした。ベトナム戦も、キルギスタン戦もそうですが、そういうチャンスのとき、本当にガッツポーズをしそうなシーンが結構あったので。そういうところで決めきれるかどうかが、今の日本とイランの差かなと思います」

――決めきることができれば相手も戦意喪失し、楽な試合も増えていくはずです。
「GK目線じゃないですが、ちょっと客観視してみると、3点目を取って、4点目を取ったら相手も戦意を喪失すると思うんです。それこそ日本のマレーシア戦(11-1)が特徴的というか。3点目、4点目を取ったら(マレーシアの)ディフェンスが崩壊していました。そういう状況を多くの試合でつくれることが、イランの強さだと思います。チャンスで点を取り切れる。そんなにすべてがうまくいくわけではないと思いますが、そういう強さ、うまさが必要なのかなと思います」

――大会前、『史上最強』と言われたチームが、過去最低の結果を残してしまいました。ここから取り戻さないといけないことは多いですね。
「いまSNSを開くと、1スクロール、2スクロールしたところで、代表のあまり良くない記事が載っているので。今のフットサル、サッカーを応援してくれている方々には、大きなショックを与えてしまいましたし、『やってくれたな』みたいな感じになっていると思います。そこを取り戻さないといけないと思いますし、取り戻すためには2年後のアジア選手権で優勝することは絶対条件だと感じています。そのためにFリーグで、チームでしっかりとやっていかないといけません。代表活動はそれほど多くあるわけではないので、どう取り戻すかをパッと口にするのは難しい部分もありますが、大会ごと、1試合ごとに結果を出していく。勝っていくしかないと思うので。今後の日本代表のスケジュールがどうなるかはわかりませんが、そのチャンスが、試合があるなら、必ず勝利していくことしか今はできないと思っています。その上で、しっかり結果、タイトルを獲るしかないと思うので。それをやっても、この結果は言われ続けるでしょうし、2年後のアジア選手権に優勝しても、4年後のW杯予選を兼ねた大会で優勝しないと『またか』となると思います。2年後の優勝は絶対条件ですが、4年後に重きを置いて取り組まないといけないと思っています」

――いっぱい落し物をしてしまいましたね。
「落し物はしましたね。かなり取り返しのつかない落し物を。それでもチャンスがあるなら、また日本を背負ってプレーできるなら、絶対に4年後のW杯に出たい。このチームにも、年齢的に4年後は難しいという選手もいると思いますし、僕自身もどうなるかわかりませんが、そういう人の分も頑張りたいですし、今日から取り組まないといけないと思います。SNSで、どの記事を見ても、『まじか』、『なんでだよ』と書いてありますし、今回はテレビ放送もしていただいて、ニュース番組でも取り上げていただいたと耳にしていたので。そういう意味でも、今大会は結果を出さなければいけなかったと思いますし、そこでこういう結果になったのは、波紋を広げていると思うので…。申し訳ない気持ち、やるせない気持ち、悔しさ、悲しみ、情けなさがずっと頭の中をよぎっています。これを取り返すのは4年後だと思うので、2年後優勝しても、W杯に行けなかったら意味がないと思うので、まずは4年後のW杯に出ることを目標にして、ここから、今日から踏み出さないといけないと思います」

インタビュー・文・写真=河合拓

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関口優志(せきぐち・ゆうし)
1991年10月24日生まれ。北海道帯広市出身。帯広北高卒業後、Fリーグのエスポラーダ北海道に加入。鍛え抜かれた鋼の肉体でゴールを守り抜く。2014年のアジア選手権では決勝で初出場し、PK戦では3本連続シュートストップし、日本の大会2連覇に貢献した。これからの日本代表を支えていく存在としても期待されている。

By 河合拓

フットサル専門誌Pivo!編集部⇒サッカーマガジン編集部⇒ゲキサカを経て、フリーランスに。現在もサッカー、フットサルを中心に取材活動。

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