2017.09.21

【コラム】その伸びしろは無限大…川崎に新たな可能性を示す若武者・板倉滉

板倉滉
天皇杯で好プレーを披露した板倉滉 [写真]=Getty Images
朝日新聞。2010、14年W杯、07、15年アジア杯などを現地で取材。ゆるくつぶやいています(ツイッターアカウント:@nakagawafumi)。

 ふっと気の抜けてしまう瞬間が、どうしたって人にはある。チームもまた然りだ。この夜の川崎フロンターレが、そんな瞬間に陥りかねないタイミングにあった。

 20日の天皇杯全日本サッカー選手権大会ラウンド16。1週間前のAFCチャンピオンズリーグ準々決勝、浦和レッズにまさかの「逆転負け」を喫していた。4日前の明治安田生命J1リーグ、折れた心を奮い立たせて清水エスパルスに勝ち切った。張りつめて切れそうな緊張の糸、相手は同じ清水。「ほっとしがちなところだった」。試合後、鬼木達監督は正直に打ち明けている。

 実は危うかった一戦を、実に有意義に鬼木監督は活用した。新たなトライで心身はフレッシュなままに。二つの仕掛けがあった。

 一つは選手起用。当たり前の手段ではあるけれど、ターンオーバーをより大胆に敢行した。J1から先発8人を代え、中村憲剛に至ってはベンチからも外して休ませた。もう一つはシステム。定型の4-2-3-1を引き出しにしまい、見慣れぬ3-4-3を採用した。

 そんな刺激を与えられ、若手が新たな可能性を示す。やっぱり、今の川崎は乗っている。

 3バックの右に入った20歳、板倉滉だ。

 本職はボランチ。186センチの上背を生かした空中戦に安定感があり、4バックの中央も担う。センターバックとサイドバックを兼ねたような今回の役割を託され、肝に銘じたのは「まずは守り。前に出た後に下がるスピードだとか、基本に忠実に」。押し込む展開で守備力を問われる場面は少なく「守ったうえで特長を出したかった」という攻撃面で見せ場は訪れた。森本貴幸のハットトリックを支えた。

 先制点を導いた8分のプレー。守備網の隙間を縫ってペナルティエリア近くまでドリブルで持ち上がり、右足で森本の足元に優しいスルーパス。「ボランチの時みたいに高い位置でボールを受けられて、前が空いていたのも分かっていた。そのまま運んじゃおうと。パスコースも見えていた」。本業で磨いた感性を生かしたアシストだった。41分には右を駆け上がり、鋭く曲がるクロス。森本の今度は頭に合わせた。

 チーム全体を見渡せば、いつもより選手間の距離が間延びした感は否めない。それでも4-1の大勝を果たし、鬼木監督に好感触が残る。「前半は攻守の切り替えが重かったが、後半は修正できた。今は誰が出ても同じ意思でやれる。むしろ、違う形の違うパワーも生まれてくる」。収穫の一つが板倉だったろう。当の本人は「ボランチなら360度から相手が来るけど(3バックの右は)その範囲が狭まる。やりやすい分、いいパスをつなげなければダメですね。個人でボールを奪いきる回数も増やしたい。1人で奪えると、その後に(自ら)攻撃に移れる流れができるので」。

 高まる自覚。無理もない。FIFA U-20ワールドカップ韓国の出場メンバーも、J1の出番は3試合67分間にとどまっているのだから。彼のような存在が、そのまま川崎の伸びしろになる。伸びしろが満たされるほど、川崎の勢いは確かな地力に変わる。

文=中川文如

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