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【ライターコラムfrom川崎】中村憲剛、現役セレソンから手渡されたユニフォームは“一流の証”

2017.04.19

マッチアップする中村とパウリーニョ [写真]=Getty Images

 4月12日に行われたAFCチャンピオンズリーグ第4節、広州恒大戦の試合後のこと。ミックスゾーンで中村憲剛を取材していると、中村の後ろでふと立ち止まる広州恒大の選手がいた。

 それは、なんと現役ブラジル代表MFパウリーニョ。その場でカバンから自分のユニフォームを取り出した彼は、なにやら声をかけてから中村に手渡し。取材対応中だったこともあり、軽く言葉を交わしただけのやりとりでその場は別れたが、中村は驚きつつも嬉しかった様子だった。なぜパウリーニョからユニフォームを受け取ったのかを尋ねると、こんな風に明かしてくれた。


「試合が終わったときに『ヘイ!』みたいな感じで握手をしてくれたんです。『おっ!』と思って、(ユニフォームを)交換しようと言ったら、それを覚えてくれてたみたいです。最初は忘れたんだなと思ったら、(ミックスで)渡してくれた。後半に入るときも(※中村は後半からの出場だった)、むこうがコミュニケーションを取ってきてくれて、何かフレンドリーだった。なぜだかは、よくわからないですけどね」

 両者がピッチで対峙するのは、実はこれが初めてというわけではない。初めての対戦は、さかのぼること約5年前の2012年、ザックジャパン時代だ。ポーランドで行われたブラジル代表との親善試合で中村憲剛が先発出場し、同じくスタメンだったパウリーニョと中盤でマッチアップを繰り広げた。そして今年のアウェイ・広州恒大戦も含め、今回が3回目のマッチアップだったのである。

「(5年前に対戦したことを)覚えているのかな? たぶん覚えていないと思うんだけど…(笑)」と笑いつつも、「なかなか(ブラジル代表と)やれるチャンスはないですからね。良い選手ですし、そういう選手はリスペクトしている。相手の穴を見つけて、入っていくのが抜群に速い。一本ピンチになったときも置いていかれた。速いし、あの嗅覚はすごい」と、やはり現役セレソンのプレーには大きな刺激を受けた様子だった。


2009年、JOMO CUPでのオリヴェイラと中村 ©J.LEAGUE PHOTOS

 なお「対戦相手の外国人に気に入られがち」というのは中村憲剛あるあるでもある。

 過去には鹿島のオズワルド・オリヴェイラ監督やトニーニョ・セレーゾ監督からも、「ウチに移籍しないか?」、「鹿島で待ってるぞ」などと冗談半分のラブコールをよく受けており、昨年のJリーグ得点王であるピーター・ウタカ(FC東京)は、中村のプレースタイルが大のお気に入りである。

 ウタカが清水エスパルスに所属していた2015年には、「君はJリーグで1番良い選手だ! (アンドレア)ピルロのようだ!」と試合後のミックスゾーンで中村を絶賛。熱心にユニフォームの交換をせがんでいる。あいにく鄭大世と交換してしたために中村に持ち合わせがなく、結局、後日クラブハウス宛に郵送して交換したという逸話があるほどだ。現在でも対戦するたび、ウタカは中村に満面の笑みで駆け寄り、熱い抱擁を交わしている。
 
 そして今回のパウリーニョである。

 一流のプレイヤーは、言葉を交わさずとも相手の実力を見抜き、パスひとつで意思疎通を図れるとも聞く。もしピッチ上で対峙した中村憲剛の実力を認めていなかったら、わざわざ姿を探して、試合後に律儀にユニフォームを手渡ししたりはしないだろう。現役ブラジル代表選手が、自分からコミュニケーションを取ってくれたのは、しかるべき理由があったということだ。

 そんなことを伝えると、「そういう風に好意的に受け止めてますよ。セレソンも認めているというね…うぬぼれておきます(笑)」と、笑顔を見せていた昨年のJリーグMVP・中村憲剛なのであった。

文=いしかわごう

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