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気鋭の若手社長が語る「地域×エンターテインメント×経営」~アルビレックス新潟是永社長×千葉ジェッツふなばし島田社長 対談~

2019.02.17

「スポーツを使って意欲的に活動する人を増やしていきたい」、「スポーツを使って『人と人』を結び付けていきたい」などの思いから始まった『スポーツの未来に、僕たちができること』。2月12日、新潟日報メディアシップで第4弾が開催された。

 イベントには今スポーツビジネス業界で話題のアルビレックス新潟の新社長 是永大輔氏と、千葉ジェッツの社長 島田慎二氏が登壇した。2人は初対面ながら、新潟に縁があること、サッカー経験者、SNSでスポーツビジネスについて発信しているなど、共通点が多くすぐに意気投合。主催者である新潟スポーツインティチュートの遠藤涼介代表の進行でトークセッションは進められ、参加者120名(来場者80名、Web視聴40名)にとって、今後のプロスポーツクラブの経営の考え方や、地域の中で活動するクラブの在り方を学び、共有する機会となった。

経営理念の考え方(存在意義)

是永:先日の社長就任会見で7つの目標を掲げましたが、これらは基本的にはプロセスであり最終的に目指しているところは「アルビレックス新潟は空気になりたい」と考えている。

「空気」というのは人々が生活する上で必ず必要なもの。「空気」がないと人々が生活できない。これがクラブとしての理想です。そのために短期だけでなく長期のビジョンも見据え、仕事を割り算や因数分解をしながら進めるようにしています。もう少しでKPIの設定ができるようになる予定です。

島田:千葉ジェッツは「千葉ジェッツを取り巻くすべての人たちと共にハッピーになる」を経営理念として掲げています。これは、ステークホルダーを多く抱えるスポーツ業界の特異性を踏まえた上で掲げた目標です。また、経営理念は存在意義であり達成出来ないのであればクラブは不要です。だからこそ、行動指針の1つでもある「問題があれば常に顕在化」する必要があると思いますし、そのために世界で初めてISOをスポーツチームとして取得しました。勝敗成績は、必ず「良い時と悪い時」があります。だからこそ長い目で見ないと地域クラブは成立しないし、だからこそ勝敗に関わらない存在価値こそが重要なのではないか、と考えています。仕事に関しては「スポーツの価値」「クラブ経営の本質」などの「本質」を細部まで突き詰めいる意識で「成功するための確立」を意識するようにしている。

経営者としての考え方(子育て論より)

是永:子育てとも似ていますが、経営者としては「口は挟まない。決断は委ねる。責任は取らせる。ただ、どうしようもない時だけ助ける。」という方針です。以前社長をしていたアルビレックス新潟シンガポールは現在KPIは管理するものの、ほぼ放任の健康体経営になりました。(現地の優秀なスタッフに任せてます。)将来的にはアルビレックス新潟も同様の方向へ舵を切れるようにしたい。社員には基本的に短距離ではなく長距離を意識して働いてもらいたいので、細かくきっちりというよりは、大幅な軌道修正にならない程度の距離感でマネジメントしていくことを意識しています。また社内でも「今日靴下新しいね」などのそういう細かいことに気付けるように、また気兼ねなく言い合えるような雰囲気にしたいなと思います。

島田:私は、本当は自立させなければいけないのに「過保護」になりやすいタイプだと思っています。ただ近年はBリーグでの仕事を兼務するようになり「脱・島田」を掲げて自立を促すようになりました。その中で「放任しない事」と「危機管理」に関しては徹底するようにしています。また、スポーツチームは積み上げ型経営で目標は日本一。これをブレークダウンしていくと最終的には詳細なKPI設定が必要です。最終的には確率論なので、チームの勝ち負けと同様に勝つ確率を高めるためにどこまで緻密な設計を出来るのかというところだと思っています。

マーケティング活動


是永:集客についても単なる招待では意味がない。現在のロールモデルは、Jリーグで成功している名古屋グランパスエイトの例を参考にしています。名古屋グランパスエイトも5年程度かけ現在の状態になっている。今、特に力を入れていることは、新規顧客ではなく、現在の顧客とビッグスワン4万人時代を知っている以前の顧客。(帰ってこれる人)つまり“あの時”を知っている人です。その客層へのアプローチにはTVが最適であると考えて、広報戦略を立てています。

島田:集客においてはまず「来たくなる」「誘いたくなる」商品をつくることが前提だと思います。誘うには責任があり、人を呼びたいならまず「商品価値を高める」ことです。スポーツチームにおける商品価値は勝敗だけでなく、演出をはじめとする非日常空間、ホスピタリティなどがそれにあたります。プラスもマイナスも波及しやすい時代ですから、払拭しづらいマイナスイメージはなるべく排除したいし、良いものが提供出来ればきっとお客様同士で誘い合ってくれるはずです。

SNS活用に関して


是永:SNSでのサポーターとの関係構築は「仕事とは思っていない」というくらい、やり取りは「苦」になっていない。むしろ自分自身もアルビレックス新潟のサポーターである。

島田:SNSの活用は顧客ニーズを知れる事とキャラを立てられること。キャラを立てることは勝敗に対するリスクはあるが、来場の楽しみの1つになる。Twitterの良さは「匿名性」、様々な意見がオープンで見れる(参考になる。)

地域活動や地域連携について

是永:今年から地域貢献活動も強化していきたいと考えていて、昨年度日本一の川崎フロンターレを超える1700回の活動をKPIとして設定しています。KPIとして設定する理由として、今年はJ2での戦いですのでJ1優勝は出来ません。しかし、地域貢献の分野においてJリーグ1位にはなれる。これは実はすごいことだと思っています。

島田:うちは、実はまだそこまで手を付けられていないのが現状です。もちろん最低限のことはやっていますが、今はファン獲得と来場満足度向上を構築する段階。そうやって商品価値が高まっていくことでクラブが大きくなれば、地域に還元できることも沢山あるのかな、と。なんでも出来るように見せるから苦しくなると思っているので、出来ない事は出来ないとはっきり言える姿勢も大切だと思っています。

勝てるチームとは


是永:アルビレックス新潟の今後は、サポーターやメディア等の皆さんも含めてみんなの努力の結果であり、みんなの行動の責任なんだ、と。例えば、報道の記事がポジティブに働けば、チームが良くなるかもしれない。反対に、記事でチームにネガティブな影響が出るかもしれない。そういうことも含めて、「みんなのチームだ」になっていく事が重要だと思います。

アルビレックスには2002年の日韓W杯開催時から熱が高まり、みんなの力で昇格した「過去の実績」があります。だからこそ出来るはずだと。全員に、成功体験のイメージがあります。目指すべきゴールが見えているから実現性が高いと思っています。

島田:結局は「総合力」だと思います。ステークホルダーが多い業界ですから、チームだけでなく、経営やファン、報道、スポンサー、あるいは食事など、取り巻くすべての環境が影響するものだと思っています。Jリーグで日本一になるには54クラブ中の1番に、Bリーグであれば48クラブ中の1番にならなくてはならない。それを達成させるためには選手補強などのチーム強化だけでは難しく、全てのステークホルダーを含めた「総合力」で達成する必要があると思います。

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