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チームも選手も主催者もみんなが「チャレンジ」する“進化する大会”が今年も……フジビレッジカップ ガールズチャレンジ2018/最終日

2019.02.04

1回目より、2回目よりも熱量のある大会に

 2018年12月16日(土)、17日(日)、U-12年代の女子を対象にしたサッカーキャンプと8人制サッカー大会「フジビレッジカップ ガールズチャレンジ2018」が山梨県鳴沢村の富士緑の休暇村で開催された。

 初日のレポートでも伝えた通り、3回目の今大会はこれまでとは異なり、1日目にサッカーキャンプを行い、2日目に大会を行うという内容だ。2日目は、3年連続でホストチームとなった山梨県女子トレセンU-12や地元の武田消毒ジェイドFCを含めた8チームによるワンデー大会。4チームずつ2グループに分かれて予選リーグを戦った後に順位決定トーナメントを行い、3代目女王の座が争われた。

「この場所を女子サッカーの聖地にする思いで大会を続けてきて、3回目を迎えることができました。そうした成果も実って、この度、FCふじざくらというクラブチームを立ち上げ、山梨県からなでしこリーグを戦うチームを目指すことになりました。仕事とサッカーを両立できるチームを目指して頑張りますので、いつかみなさんがここでプレーをしてくれるかもしれないですが、そんなチームがあることも頭の片隅に置いてもらいサッカーを続けてください。今年も、熱い大会にしてもらえたらと思います」

 開会式で登壇した富士観光開発株式会社 レジャー事業本部 取締役副本部長・金子智弘氏は、選手にそう話し掛けた。11月に発足した女子チーム、FCふじざくらのGMを務める金子氏は、3年前と変わらない熱量で、いや、それ以上の熱い志を胸に秘めながらフジビレッジカップの開会を宣言。その思いに応えるように、今回もまた、選手たちは予選リーグから例年以上の熱戦を繰り広げていった。

優勝候補が敗れる波乱含みの予選リーグ

 グループAのオープニングゲームは、第1回大会優勝の山梨県トレセンとFC厚木ガールズの一戦。地力に勝る山梨県トレセンが押し込む展開となったが、一方で厚木ガールズの奮闘も際立った。サッカーを始めて2年弱という10番・安西花織が後ろで鼓舞して、前線では小柄ながら抜群のテクニックで切り込む14番・安西優が存在感を放ち、優勝候補に0-0の接戦を演じるなど、波乱含みの幕開けを予感させた。

 グループAはその厚木ガールズが残りの2試合を落とした一方で、府中なでしこが9得点・無失点で3連勝。山梨県トレセンは、FC Fuji メジェールジュニアとも引き分けて3位に沈み、王座奪還の夢は潰えた。

 グループBも見どころに富む試合が続く。第2回大会優勝のバディフットボールクラブと対戦した福田FCLさくらは、後方からのゲームメイクも、前線でのアタックも10番・杉本光羽がけん引。攻守に冴え渡るリーダーを中心に戦いながら、前半に奪った1点で逃げ切って、大会初戦で金星をマークした。

 その福田FCLさくらも、府中なでしこと同様に8得点・無失点と攻守に成果を出して3連勝で1位通過。2位は、敗戦後に立て直したバディが入り、地元の武田消毒は3位で下位トーナメントへと回った。

 上位トーナメントは、府中なでしことバディの準決勝が白熱。互いに高い集中力を見せてゴールを許さず、0-0のままPK戦での決着に。6人ずつが成功して迎えた7人目、先行のバディのシュートを普段はフィールドプレーヤーをしている22番の守護神・鳥澤知香子がシャットアウトすると、後攻の5番・鈴木波音がきっちり決めてPKスコア7-6で府中なでしこが決勝進出。反対の山は、1-0で4試合連続無失点とした福田FCLさくらが勝ち上がった。

山梨県から女子サッカー熱が広がり始める

 府中なでしこと福田FCLさくらによる初優勝を懸けた決勝はハイレベルな戦いとなった。前半から両者ともに決定機を作りながら、ゴールネットを揺らせないままスコアレス。すると後半の立ち上がり、府中なでしこの11番・持田琴古が体を当ててくる相手に競り勝って中央を抜け出すと、GKとの1対1を決めて先制。

 その後も府中なでしこは、圧倒的なセンスを見せる15番・長谷川紗也を中心にしながら、ボールを持てばみんながゴールを目指す攻撃的な姿勢を崩さずに押し切ってタイムアップ。8人ギリギリで大会に臨んだ彼女たちだったが、どの試合も最後まで闘志あふれる姿を見せて、見事に栄冠を手にした。

 熱戦を終えた閉会式では、3位・バディ、2位・福田FCLさくら、1位・府中なでしこが表彰され、得点王は6ゴールを決めた福田FCLさくらの杉本光羽、最優秀選手は府中なでしこの長谷川紗也が選ばれた。

「チームは3、40人いるのですが、U-12とU-10の大会が重なったため、今回はギリギリの人数での参加となりました。いつもと異なるポジションや組み合わせだった中で、選手は工夫して、助け合い、協力しながら、足を止めずに走って頑張りました。1日ですごく成長したと思います。やはり練習だけでは限界がありますし、こうした強いチームが集まる大会の意義は大きいです。選手はきっと、いろんなチームとの交流の中で刺激を受けて、また頑張らないといけないなという気持ちになったと思います。本当にありがたい一日になりました。またぜひ、参加させてもらいたいですね」(府中なでしこ・白川雅義コーチ)

「勝利を求めていないわけではないですが、何よりもまず楽しんでサッカーができたらと思っている中で、試合とそうではない時間の切り替えがうまくできて楽しめていたと思います。今回は2チームの合同という形でしたが、普段から交流があるので息も合っていましたね。みんな勝ちたい思いを持って戦っている中で、強いチームと対戦できたことで、選手たちも面白かったと思います」(福田FCLさくら・石野光人監督)

 府中なでしこは都内から、福田FCLさくらは神奈川県から参戦。日頃から関東圏のチームとの交流戦や招待大会の機会はあるものの、オフィシャルに近い緊張感のある大会は多くない。府中なでしこの市川代表が「こんなにいいグラウンドで、しかも盛大なセレモニーがある大会はないので、選手も僕らも喜んでいます」と話したように、だからこそ、育成年代の女子サッカーで継続される大会の価値は大きいだろう。

 大会名にあるように、チームや選手に「チャレンジ」を求める今大会は、ある意味で、主催者にとっても「チャレンジ」の舞台。来年もまた、この場所を聖地にするために、フジビレッジカップはさらに進化を遂げて開催されるだろう。女子サッカー熱が、ここ山梨県から、じわじわと広がり始めている──。

取材・写真・文=本田好伸

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