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「まさに“藁にもすがる思い”」親子スプリント教室体験リポート

2017.09.29

 子供の頃の私にとって、運動会は好きなイベントの一つだった。走るのが速い部類に入る少年だったので、徒競走ではほとんどが1位か2位、クラス対抗リレーの選手にも選ばれた。スーパーヒーローだったわけではないが、運動会は楽しかった。

 しかし、今は悩みがある。我が子たちの足が遅いのだ。小学3年生の息子はサッカーをやっているが、スピード勝負になると全く勝てない。小学6年生の息子は、運動会の徒競走では毎年、断トツのビリ。今年の運動会はすでに終わったが(当然ながら100メートル走は最下位だった)、10月には学校対抗の陸上競技大会に出場しなければならない。聞けば、100メートル走には全員が出場するらしい。これはなんとかしてあげたい――。まさに“藁にもすがる思い”で、サッカーキング・アカデミーが主催する秋本真吾さんの「親子スプリント教室」に参加させてもらうことになった。

 まずはフットサルコートに出てウォーミングアップをした後、実際に走る様子を動画で撮影してもらう。「全員、速くなる」という秋本さんが最初に教えてくれたのは、速く走るための「姿勢」。足の動かし方や腕の振り方ももちろん大事だが、何よりもまず背筋を伸ばした正しい姿勢で走ることが大切だということだ。3年生の息子は走る時にいつも背中が曲がっていたが、教わったとおりに走ると少し姿勢が良くなり、スムーズに動けているように見えた。

 続いて「正しい腕振り」を教わる。ここでは6年生の息子が成長を見せ、後ろまでしっかり肘を引き上げるフォームができるようになった。ちなみに、腕を振る時は手のひらをパーにするのか、グーにするのかという議論があると思うのだが、秋本さんいわく「どちらでもOK」とのこと。自然に走れて、余分な力が入らない形で走ればいいという。男子陸上100メートル、200メートル世界記録保持者のウサイン・ボルトは軽いグー、日本人で初めて9秒台を記録した桐生祥秀はパーで走るそうだ。ちなみに、私はパー。息子2人も、改めてみるとパーにして走っていた。遺伝する部分もあるのかな、とふと思った。

 その次は「正しい足の踏み方」。その感覚を覚え込ませるために「エア後ろ回し跳び」や「ケンケン」などをやったのだが……3年生の息子が、ケンケンがうまくできないことが発覚! 普通のケンケンはできるのだが、浮かせているほうの足を秋本さんが教えてくれたとおりに動かそうとすると、コーディネーションがうまくいかなくなってしまうようだ。

 そして、運動会や陸上競技会で大切な要素となるスタートも、秋本さんは丁寧に時間をかけて教えてくれた。左右の足をどの程度、開けばいいのか。どのような姿勢で構え、どこに力を入れて踏み出せばいいのか。今まで専門的に教わったことなどなかっただけに、かなり勉強になったはずだ。

 最後にもう一度走る様子を動画で撮影し、実技部門は終了。室内に場所を移し、座学の時間となる。その冒頭では、実技の最初と最後に撮影した動画を見比べ、秋本さんがビフォーアフターをチェックしてくれた。3年生の息子は、走る時の姿勢や足の接地の仕方に改善が見られたが、腕振りや足を上げる角度はまだまだ練習が必要。6年生の息子も走る姿勢は良くなった。課題は多いが、教えてもらったことを頑張って実践しようとする姿は見せてくれていた。

 参加者全員のランニングフォームのビフォーアフターをチェックした後は、ボルトが世界新記録を樹立した時の走り、そしてクリスティアーノ・ロナウドやピエール・エメリク・オーバメヤン、ネイマールといった快足アタッカーたちのフォームが動画で紹介される。姿勢や足を上げる角度、接地の仕方に共通点があり、子どもたちも納得の表情で映像に見入っていた。ボルトのトップスピード時の歩幅には、私を始め保護者の方々も驚かされた。

 その後、質疑応答の時間では「走る時に首が曲がったり、体が左右に曲がったりするのはどのように直せばいいですか?」と尋ねたところ、まだ全身の筋肉量が足りないので、外に出ていろいろな動きをして、全身の筋肉を少しずつ増やしていくことが大切だ、という回答をいただいた。思えば3年生の息子がケンケンを苦手としていたのも、そのような動きをする機会が少なかったからなのだろう。私の子供の頃に比べて、今の子どもたちは外で遊ぶ機会が少なくなっているかもしれない。幼少期からいろいろな動きをすること、全身を使って遊ぶことも大事なんだと、改めて思い知らされた。

 90分間の実技、そして50分間の座学はあっという間に終了。秋本さんは子どもたちが理解しやすいように、分かりやすい言葉と様々な動画、画像を使って説明してくれたので、大人であればより深く理解することができる。家に帰ってからも動画を取って一緒にチェックしたり、アドバイスを送ったりと、継続的なトレーニングができるはずだ。

 翌日は日曜日。起きると子どもたちが嬉しそうに報告しにきた。「朝、二人でケンケンと後ろ回し跳びしたんだよ」。自主的にトレーニングをするなんて、実に関心。「速く走ること」への意識が少しでも高まったのなら親としてうれしい限りだし、セミナーに参加して本当によかったと思う。1カ月後の陸上競技大会、そして来年の運動会が、少し楽しみになってきた。

文=池田敏明

サッカーキングアカデミー

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