2016.11.10

U-12女子大会に触れたフローラン・ダバディ氏が語る日本フットボールの未来……「日本はスポーツ育成大国になれる」

サッカー総合情報サイト

 10月15日、16日に山梨県の富士山の麓、鳴沢村で開催された「フジビレッジカップ ガールズチャレンジ2016」。15日には、フローラン・ダバディ氏が大会に訪れ、選手に声を掛ける一幕があった。

 フランス出身のダバディ氏は、1999年から02年まで、サッカー日本代表のフィリップ・トルシエ監督の通訳兼アシスタントを務めたことでも知られ、現在はサッカーのみならず、テニスなどの分野でも活動するジャーナリストである。

 かねてからグラスルーツに興味を抱いていたダバディ氏は、今大会に触れ、母国のフランスや、学生時代に何度も留学経験のあるアメリカなどのスポーツシーンを例に、日本の現状や今後、取り組んで行くべきことなどに言及した。

 育成年代の選手にとって必要なこと、そして未来の日本フットボールが目指していくべき、本当の在り方とは、何なのだろうか――。

インタビュー・写真・文=本田好伸

成長した自分を思い描けば前向きになれる

――育成年代の大会を見て、どのようなことを感じましたか?
ダバディ 実は今、テニスに関する活動が多いのですが、テニスにせよサッカーにせよ、育成年代の選手たちは、一つの専門競技に進む前にアスリートです。そこには、漠然とプロになるのかどうかなど、選手としての葛藤やモチベーションの持ち方などがあり、そうしたものは競技を問わずに近いものがあると思います。この大会に出場しているような女の子たちは、まずは楽しそうであるとか、やりたいだとか、そういう情熱を持って、その気持ちをどのように維持していくのかが大事だと感じています。トップレベルのプロ選手でも、そういう遊び心や情熱を持つ選手が最も上達すると思いますが、彼らも初心を忘れてしまうことがあります。これはどのようなスポーツにも言えることです。

――初心を持ち続けるのは簡単なことではないのかもしれないですね。
ダバディ 仮にその気持ちをなくしてしまえば、練習もつらいものになってしまうかもしれません。私は元トップテニスプレーヤーの杉山愛さんとも一緒に仕事をしていますが、彼女が現役の頃には、本当に朝から晩まで、それこそ1時間刻みでメニューが決まっていました。食事も治療もすべてが仕事であり、トレーニングでも、筋トレや戦術、メンタルなど多岐にわたりますから、本当に朝起きた時に、メニューを見ただけでも「ちょっと長いな……」と思ってしまうかもしれません。でもその時、このスポーツが大好きであるとか、プロになりたいとか、絶対にうまくなるんだとか、1日が終わればすごく成長した自分が待っていると思うことで、前向きに取り組めます。厳しいトレーニングも、新しく学べるテクニックや技術もありますし、それらはいろんな人が考えてくれているメニューであったりするので、スケジュールが忙しくても、環境的に恵まれていると感じられるのではないでしょうか。そういうことを、この年代からきちんと説明していかなければ、負荷が増えるたびにつらくなり、そのままギブアップしてしまうかもしれないですよね。

――そうすると、こうした大会は、ボールを蹴る楽しさや、仲間と蹴る充実感、フットボールへの情熱などを再確認できる場だとも言えますよね。
ダバディ そうですね。そして大切なのは、自分の体を知るということです。私は、今後、トップ選手はもっとメディテーション(瞑想)を取り入れていくと思っています。瞑想を通して呼吸を整えて、自分の体を理解するということも必要です。現代社会では、スマートフォンなどでもいろいろな情報が手に入りますが、逆に、頭の中によぎる様々な考えをシャットダウンして、目の前のタスクに集中することは難しいんです。彼女たちも、試合をしたい、動きたいという様々な考えがあると思いますが、それ以前には自分の体を理解することが重要です。例えば、踏み込む時に地面をつかむことなど、現代人があまり意識していない足の指の感覚などもそうです。自分の体を動かせること、それを使えること、それによって楽しいと感じることなど、根本的にやるべきなのはそうした部分です。それを知ることで、柔軟性があるとか、スピードがあるとか、バランスが優れているといったことも分かりますから、あとはスキルを伸ばしていけます。子どもにとっては試行錯誤の毎日ですが、次の日にうまくなっていれば、きっと活き活きとしてきますよね。

子どもにとって日本以上の環境はない

――フランスでも、こうした子どもたちの大会は行われているのでしょうか?
ダバディ フランスでは、日本よりも厳しくはないので、学校が終わってから5対5のストリートサッカーをするなど、草サッカーが盛んです。日本にもそうした光景はあると思いますが、より身近なところに芝があったり、遊べる環境があります。日本では天然芝がそれほどないですから、こうした大会を開く必要がありますよね。学校の土のグラウンドやコンクリートでやるものと、芝でやるサッカーは全然違うスポーツだと思います。

――では女子サッカーということではいかがでしょうか?
ダバディ フランスの女子はまだ、「女子=サッカー」という印象がありません。フランスの女子代表が強くなってきたのはこの数年のことです。日本は2011年にワールドカップで優勝したことも大きいですし、澤(穂希/元サッカー日本女子代表)さんのような女子サッカーのスター選手がアスリートのスーパースターになることはフランスではまだありません。これは日本の大きなアドバンテージだと思います。澤さんは引退しましたが、ロールモデルとなる人が日本には何人かいますからね。フランスの女性で、スポーツを選ぶという人はまだ少ないんです。だからこそ、男女公平にスポーツの機会がある日本の状況はすごいですし、女性ががこれだけサッカーに夢中になれることに感動しています。

――こうした大会に出場している選手が日常に戻り、今度はもっと身近な場所でも蹴って遊んでいるような光景が広まっていくと良いですよね。
ダバディ そう思います。私は1980年代からは毎年2カ月間、小中高はアメリカに行っていたのですが、当時からサッカーは女性のスポーツでしたし、30年前に初めてサッカーのサマーキャンプを訪れた際には、男女が一緒に広大な敷地で練習や試合をしていました。女子だけの合宿や試合も数多く行われていましたね。アメリカには高校や大学にも名門、強豪と言われるサッカー部もありますし、女子リーグも人気がありますから、そういう意味では、サッカーへの情熱では日本がフランスをリードし、スケールや意識ではアメリカが日本をリードしています。そこはまだ10年くらいの遅れがあると思います。ですが日本は、そうしたギャップをものすごい早さで埋めて急成長していく国です。ですからこうしたキャンプなども、もっとたくさんやっていってほしいですよね。アメリカでは50チーム以上が参加するような規模感のキャンプが普通にありますから。

――この大会は、地元に密着した富士観光開発株式会社が主催していますが、グラウンド横には宿泊施設があり、チーム間で交流を深めることもできます。こうした環境が日本中にあるので、もっと活用してグラスルーツを盛り上げていくことが大切ですね。
ダバディ 私が思うのは、これからの日本は、かつてのような経済大国には戻れないかもしれないですが、ソフトパワーは逆にもっと上がっていくだろうということです。日本にはスペースはそれほどないですが、そうした施設、場所などはたくさんあります。ですから、ソフトパワーを使って、アスリートを輩出していくという、スポーツ育成の大国になることは絶対にできると思います。韓国は映画やアートなど、文化、美術を選びましたが、日本はスポーツを選べるのではないでしょうか。空気のきれいさであったり衛生の基準、環境面なども含めて、韓国や中国の子どもを持つ親たちは、子どもたちを日本のキャンプに送り出したいと思うはずです。私は学生時代、「スポーツが好きならアメリカだ」と思っていましたから、ヨーロッパからからアメリカまで6時間も掛けて行っていましたし、やはりスポーツの環境が整っていることを感じていました。今、アジアの人にとっては、「スポーツが好きなら日本だ」と思うでしょうし、日本が安心、安全なところであることをみんなが理解していますよね。

――日本が「スポーツ大国」を目指せるというのは非常に未来を感じます。
ダバディ 少なくとも、子どもたちの年代についてはそれが言えると思います。どうしてもトップカテゴリーのパフォーマンスになると、最近はドーピングの問題もありますし、国を挙げてのコンペティションになるので、生々しい、シビアな部分もありますから。でも本当に、子どもにとって日本以上の環境はないと思っています。

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