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中田浩二と柳沢敦の引退。“常勝鹿島”復活へ小笠原満男に託された使命

「浩二の前で情けない試合をしてしまった」と鳥栖戦に涙を流した小笠原 [写真]=浦正弘

文/元川悦子

 12月6日の2014年J1最終節。1試合残して首位に立ったガンバ大阪が徳島ヴォルティスに引き分け、2位・浦和レッズが名古屋グランパスに苦杯を喫した。3位の鹿島アントラーズはサガン鳥栖に2点差以上で勝っていれば、2007年の奇跡的なJ1逆転優勝の再現を果たせていた。だが、その肝心な試合で、彼らは開始早々、鳥栖の高橋義希に不意打ちのシュートを浴び、それを最後まで跳ね返せないまま、0-1で完敗。G大阪にタイトルを持っていかれてしまった。

 試合後に行われた中田浩二の引退セレモニーで、キャプテンの小笠原満男は終始うつむき、涙をこらえるのに必死だった。1998年から同じ釜の飯を食ってきた盟友が胴上げされている時も動けない。何事にも厳しい彼は、国内16冠を獲得してきた常勝軍団らしくない不甲斐ない戦いぶりが、どうしても許せなかったのだろう。

「言葉に表せないくらい悔しい。結果もそうだし、浩二の最後っていうのもあって。俺としては、あいつが安心して『このチームなら任せられる』っていう試合を見せて、いい最後にしてあげたかったけど…。あれだけ貢献してきた偉大な浩二の前で情けない試合をしてしまったっていうのが一番悔しいです」と、腫れた目をした小笠原は言葉を絞り出すようにこう言った。

 確かに、この日の鹿島は集中力の切れる時間帯が目につき、勝利に徹しきれない脆さと甘さを随所に垣間見せた。今シーズン、大胆な若返りを断行した鈴木満常務取締役強化部長も「サッカー選手は負けて成長することなんかない。こういう勝負のかかった時こそ、勝たなきゃ意味がない。鹿島というチームはそうやって強くなってきたし、数々の修羅場を潜り抜けてきた満男たちの世代は勝ち方をよく知っている。3位という結果はまずまずだったとは思うけど、今の若手にはまだ彼らほどの力がないということだ」と苦言を呈していた。

 発展途上のチームだからこそ、同じ志を持って長年、戦い続けてきた仲間の存在感と影響力がこの先も必要だと小笠原は感じていた。けれども、その意向に反して、中田浩二のみならず、柳沢敦(仙台)までもが今季限りでユニフォームを脱ぐ決断をしてしまった。その衝撃はあまりにも大きかったようだ。

「日本のサッカーに必要なのは、ヤナギさんや浩二みたいな選手。ユース世代の頃から世界を見て、ワールドカップに出て、海外行って、戻ってきてチームに貢献してきたんだから。2人は俺より海外生活も長いし、代表の貢献度もずっと上。そういう選手と一緒にプレーできるのはホントに大きな財産だし、お金じゃ買えないことだからね」

「この試合(鳥栖戦)だって、もし浩二が出ていれば、後ろから厳しいことを言ってくれただろうし、何をすればうまくいくか、勝てるかを考えながら動いてくれたはず。そういう一番大事な選手を失わなきゃいけないのはホントに残念で仕方ないよ……」

 そんな小笠原の落胆ぶりを、鹿島の若い世代はどう見ていただろう。中田浩二が担っていたDFラインを引き継いだ1人である昌子源は「勝って優勝したかった。来季は3冠を獲るつもりでやりたい」と決意を新たにしていたが、彼らはそれを本当にやり抜く強い意志と実行力を身に着けなければいけない。中田浩二が名前を出して期待を示した柴崎岳もそう。彼らが安心してチームをリードできるような存在になるまで、小笠原は叱咤激励を続け、メンタリティを伝えていく必要がある。

 鳥栖戦は悔しいことに後半18分でベンチに下がることになったが、今季も累積警告で出場停止となった1試合を除く33試合に先発出場しており、彼自身は全く衰えを知らない。同じ79年組の遠藤保仁(G大阪)を筆頭に、モンテディオ山形の2度目のJ1昇格と原動力となった石川竜也など第一線で活躍している同世代も少なくないだけに、負けるつもりはない。中田浩二は「自分が先に引退するのはしゃくだけど」とコメントしていたが、一足先にピッチを離れることになった仲間の分も小笠原はタフに逞しく戦い続けていくはずだ。

 多くの人々が見守る中、流した大粒の涙を彼はどう今後の糧にしていくのか……。36歳の大ベテランとなる2015年シーズンの小笠原、そして鹿島という常勝軍団の進化に期待したい。

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