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【インタビュー】あくまで “湘南スタイル”を追求する…eJリーガーSLEDGE選手の目指す道

2019.04.25

 世界中で人気のサッカーゲーム『FIFA 19』を使用したeスポーツ大会、「FIFA 19 グローバルシリーズ eJ.LEAGUE SAMSUNG SSD CUP」の決勝ラウンドが、4月28日(日)、29日(月・祝)に開催される。

 本大会は、オンライン予選通過者、J1クラブから推薦されたプレーヤーに、3月に開催された「PS4 FIFA 19 JAPAN Tournament」優勝者を加えた計37名のプレーヤーによってナンバーワンの座を競うというもの。優勝者を率いるチームには賞金100万円が贈呈され、さらに世界一のプレーヤーを決める大会「FIFA eWorld Cup 2019」の世界予選にあたる、「EA SPORTS FIFA 19 Global Series Playoffs」の出場資格を得るためのポイントが選手に授与される。

 eJ.LEAGUEは、昨年に続き今回が2回目の開催となる。本大会にJ1クラブ推薦枠として出場するプレーヤーのひとりで、市立船橋高校サッカー部出身という経歴を持つ湘南ベルマーレ所属のSLEDGE(スレッジ)選手に話を聞いた。

取材・文=鴫原盛之(フリーライター)
写真=野口岳彦

■父親と遊んだのを機に、『FIFA』にのめり込んだ


――いつ頃から『FIFA』シリーズをプレーするようになったんでしょうか?
ゲーム好きの父親が持っていた『FIFA10』を借りて遊ぶようになったのがきっかけですね。当時の僕は小学校6年生でしたから、12歳の時です。
――お父さんと対戦をすることもあったんですか?
最初はボコボコにされましたけど(笑)、それが悔しくてだんだんと夢中になっていきました。『FIFA 16』、『FIFA 17』あたりから友人とオンラインでも遊ぶようになりました。
――eスポーツ選手になりたい、あるいはプロゲーマーになりたいという気持ちを抱き始めたのはいつ頃からですか?
興味を持ったのは最近なんです。『FIFA19』が発売される時に、世界大会がYouTubeで配信されていたのをたまたま見ていて、そこから興味を持ちました。自分も参加しようと思ったのは、湘南ベルマーレで『FIFA 19』専属のeスポーツ選手を募集するトライアウトが行われるというツイートを見たのがきっかけです。腕試しをするような感覚で応募しました。
――トライアウトのオンライン予選を勝ち上がり、オフラインの決勝大会では見事に無敗で優勝しました。勝ち抜ける自信はありましたか?
ある程度、自信はありましたが、決勝大会はさすがに緊張しました。徐々に慣れていって何とか優勝できたという感じです。
――決勝大会後には、湘南ベルマーレのスタッフによる面接を受けたそうですね。
「湘南のeスポーツの選手になったら、どのようにして地域に貢献していきたいですか?」というような質問を受けました。湘南はサッカー以外のスポーツにも力を入れている地域密着型のクラブであるという説明も受けましたね。
――では、正式に「湘南ベルマーレの選手になってほしい」というオファーを受けたのはいつ頃ですか?
2月の上旬に面接を受けてから、1週間ぐらい後だったと思います。確か、J1が開幕する1週間くらい前でしたね。

■市船時代の盟友、杉岡選手と再び同僚に


――SLEDGE選手は高校サッカーの名門、市立船橋高校の出身ですよね。どういった経緯で入学されたのでしょうか?
中学時代はクラブチームに所属していたのですが、県大会の準決勝の試合を見に来ていたスカウトの方から、「練習会に参加してほしい」という話をいただいたんです。
――市船以外の高校からも誘われていたんですか?
いくつかの学校からお話がありましたが、中1の時に市船が冬の選手権で優勝した試合をテレビで見てから、あの青いユニフォームへの憧れを抱いていたんです。
――当時の市船のメンバーで憧れていた選手は?
磐瀬剛選手(京都サンガF.C.)や打越大樹選手(ギラヴァンツ北九州)ですね。当時、僕はボランチでプレーしていたので、同じポジションの選手をよく見ていました。
――現在、湘南ベルマーレで活躍する杉岡大暉選手は同級生だそうですね。
僕はトップチームに関わることがほとんどなかったので、杉岡とはほんの少ししか一緒にプレーできませんでした。でも、3年間クラスが同じだったので、仲のいいクラスメートという感じですね。
――トライアウトを受けることは杉岡選手に知らせたんですか?
決勝大会が始まる前に、市船の同級生のみんなで忘年会みたいなものを開いたんですが、その時に「eスポーツの大会に出るよ」という話はしていました。面接の前に杉岡が「SLEDGEは市船出身の同級生なんだ」と湘南の方に伝えていたみたいですね。
――今でもボールを蹴ることはありますか?
社会人チームに所属しているので、週に2、3回くらいは体を動かしています。
――小さい頃からサッカーを続けてきたことが、『FIFA』シリーズをプレーする際に役立っていると感じることはありますか?
ビルドアップなど、高校までの間に自分が教えてもらったサッカーの戦術をゲームに反映させているところはありますね。
――では逆に、『FIFA』シリーズをプレーし続けたことで、リアルサッカーに役立っていることはありますか?
サッカーゲームの場合はピッチを俯瞰して見ることができますよね? ゲーム中にピッチ全体を見ながら各選手のポジショニングを頭に入れておくことで、リアルサッカーの時にも状況判断が早くなっていると思います。
――SLEDGE選手がYouTubeにアップした実況動画を拝見したところ、フォーメーションは主に4−3−3を使っているようですが、何か特別なこだわりなどがあるのでしょうか?
ゲームの仕様上、連携を強化するために4−3−3を使っていますが、試合が始まると4−2−3−1に変更することもあります。
――試合を始める前に、毎回選手ごとのプレースタイルや戦術などの設定を細かく作り込むタイプですか?
あまり細かくはやらないですね。基本は型にはめて、状況に応じて変えています。
――試合を見ていて、ディフェンスがすごく上手だなという印象を受けました。守備の面でも、ボランチで実際にプレーした経験が生きているのではないでしょうか?
そうですね。市船はディフェンスにすごくこだわりがあるチームでしたから、そこでは絶対に負けたくないですね。

■ゲームの世界でも、“湘南スタイル”の確立を目指す


――晴れて“湘南の選手”となった今、1日にどれくらいトレーニングをしているのでしょうか?
平日はあまりやらないので、だいたい2時間くらいですね。今は大学にも通っているので、平日の昼間はプレーできないんです。『FIFA19』では、毎週末にリーグ戦のようなイベントがあるので、そこで集中してプレーするようにしています。
――練習は対人戦がメイン?
そうですね。基本的にはいろいろな人とオンライン対戦をして、課題が見つかったらスキルゲーム(トレーニングモード)で局面ごとの練習をしながら、いろいろと試行錯誤をするようにしています。
――湘南はサッカーだけでなく、ビーチバレーやトライアスロンなどを含めた総合型のスポーツクラブとして活動しています。今後、湘南の一員としてホームタウンのためにどのような活動をしていきたいと考えていますか?
湘南のホームゲームに毎回招待していただいて、試合を観戦しています。以前、同じ湘南所属のeスポーツプレーヤー、BLUES(ブルーズ)選手とともに、試合日に合わせて対戦イベントを行ったこともあります。今後はeスポーツの大きなイベントをやっていこうと、いろいろと話をしているところです。湘南に選んでいただいたからには、地域活動も全力でやりたいと思っています。湘南の選手として地域の人に愛されるように、いろいろな活動をしていきたいですね。
――4月28日からは、いよいよ「FIFA19 グローバルシリーズ eJ.LEAGUE SAMSUNG SSD CUP」の決勝ラウンドが始まります。SLEDGE選手の目標は?
もちろん優勝を目指します。残念ながら予選で負けてしまったBLUES選手の分まで、湘南の代表としての誇りと自覚を持って参加したいと思います。
――ライバルとなりそうなプレーヤーは?
つぁくと選手(セレッソ大阪のクラブ推薦選手)や青黒豆選手(ガンバ大阪の推薦選手)になると思います。本大会で対戦するのが楽しみですね。
――昨年のeJ.LEAGUEは見ましたか?
アーカイブ動画でチェックしました。その大会の雰囲気を見て、いろいろと感じるものがあったので、自分も頑張りたいですね。
――大会2日目は、会場から全世界に向けてライブ中継されます。特に注目してほしいプレーなどはありますか?
先ほどもお話ししたとおり、市船出身として守備には自信があります。攻撃面ではビルドアップからの相手ゴール前の崩しや得点パターンを研究しているので、そこに注目してほしいですね。同時に、ゲームでも前線からアグレッシブにボールを奪いにいく “湘南スタイル”を表現して、見ている人にも楽しんでもらいたいと思います。
――ゲームの仕様上、勝利だけを追い求めるならば、例えば5−4−1のようなシステムで守備を固めて、カウンターでワンチャンスに賭けるという方法もありますが、そういったことはしたくない?
ゲーム的に強力な得点パターンのなかには、リアルのサッカーとはちょっと違うプレーもあるんです。「やっぱりこういうところはゲームだな」と思われてしまうというか。そういうプレーはあまり出さずに、現実のサッカーと変わらないプレーでも勝てるというところを見せたいですね。
――今大会に限らず、eスポーツ選手として今後どんなプレーヤーになっていきたいと思いますか?
プロゲーミングチームと契約しているプロゲーマーとは違って、僕は湘南ベルマーレというJ1のクラブに所属しています。それは、より身近に感じられ、スポーツとしてゲームを見ていただける立場でもあると思うんです。成績はもちろん、日本のeスポーツ界に貢献できるような影響力のある選手になりたいですね。まずは今大会での優勝、そして世界大会への出場を目指します。

株式会社湘南ベルマーレ 水谷尚人 代表取締役社長 コメント

 世の中でeスポーツが急速に普及している中、湘南ベルマーレとしてもその流れに乗ろうという考えがあり、昨年eスポーツへの参入を決定しました。湘南ベルマーレというクラブは、地域に生かされているクラブです。そして、スタイルを確立しているクラブだという自負もあります。

 クラブとしてeスポーツに取り組むにあたって、地域に貢献することができ、クラブのスタイルを生かせる選手という、今までの「ゲーマー」のイメージとは異なる選手と取り組んでいきたいという想いがありました。そういう意味では、現在所属しているSLEDGE、BLUESの両名は、その考えに合致した選手だと言えます。二人はeスポーツ選手としての活動と並行して、実際にファン・サポーターと触れ合う機会を持ち、ホームタウンで地域のための活動をしています。

 一方で、湘南ベルマーレは、育成型のクラブという特性があります。今後、義務教育でプログラミングなどが必須科目となり、デジタル教育がますます盛んになりますが、eスポーツはデジタルの世界にふれるきっかけになるのではないかと思います。ゆくゆくは、eスポーツやプログラミングの分野における育成にも取り組んでいければと考えています。

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