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【インタビュー】山田理一郎「“こだわり”がある人こそ、『サカつく』は楽しい」【後編】

2018.02.21

[写真]=野口岳彦

 多くのサッカーファンを虜にしてきた『サカつく』シリーズの最新作、『プロサッカークラブをつくろう! ロード・トゥ・ワールド』が2018年春にスマートフォン向けアプリとしてリリースされる。自らが『サカつく』のファンであり、重度のサッカーオタクだというプロデューサーの山田理一郎氏にその魅力を聞いた。

インタビュー・文=関口剛
写真=野口岳彦

インタビュー前編はこちら!

ロマンがあって、「ちょっとウソが入っている」くらいが目標

──今回の配信決定のリリースを拝見し、“サカつくらしさ”というのを大事にされている印象を受けました。山田さんは、『サカつく』はどんなゲームでないとならないと思っていますか?
“小難しくないサッカーゲーム”……ですかね。シミュレーションゲームって、普通は数字がたくさん出てきて、パラメーターを上げていったりしますよね。リアルなものになればなるほど、そういう部分を大事にしていると思います。でも、『サカつく』にはそういうものが全然なくて、選手の能力は棒グラフ、チーム力は六角形のグラフみたいなものと、チームのコメントくらいでしか類推できない。でも、チームを育てていくと勝手に連係が良くなって、何だか勝てるようになる。スカウトからリストアップされた選手に謎の固有コメントが付いていて、なぜかその選手は強くて役に立つ、みたいな。サッカーが分からない人なりに選手やチームが育っていって楽しい。サッカーを難しく捉えないで、選手やチームだけが育っていくわけでもなく、全部をひっくるめて「サッカークラブ全体を育てていく」楽しさ。そして、その過程で生まれる「ロマン」みたいなものです。それがないと“サカつくらしい”とは言えないのかなと思います。

──久保選手やクライフのバルサと同じように、『サカつく』にもロマンが必要である、と。
例えば過去の『サカつく』には、選手が年俸に対して不満を言う、というイベントがあるんです。赤い「不満マーク」が付いて、それを解消するために選手と会話していくという面倒くさい作業です。ドライにゲームシステムとして見ると、はっきり言って邪魔なんですよね。でも、あれがないとちょっと寂しいんです。それが選手の人間らしさが出る要素だから。選手がチームに加入するというのは、能力的なことだけじゃなくて、一人のキャラクターが加わるということですよね。すると、不協和音が生まれたり、逆に特定の選手と仲良くなったりもする。そういう“生きた選手”という要素がロマンなのかなと思います。それは他のゲームと違うところだと思いますね。

──ウェットな人間らしさ、ドラマ性を大事にしている。
そうです。他にもイケメンの選手が加わると集客が上がるとか。能力のパラメーターが高い選手だけが正義ではなく、周辺環境も含めた面白さは大事にしています。

──ピッチの中だけのことを考えたらイケメンであるかは重要ではありませんが、プロサッカークラブを運営する、という意味では無視できない要素ですからね。
そういうリアルにあることを盛り込みつつ、「ちょっとウソが入っている」くらいが目標地点です。ちょっと大げさなくらいが良くて、現実のラインを飛び越えているところも『サカつく』の面白さだと思います。

──これまで『サカつく』はコンシューマー版としてリリースされていましたが、そうしたコンシューマー版から引き継いだ要素がある一方、アプリならではの要素もあると思います。
試合をこなし、その合間に練習をして能力を伸ばすという基本は変わりません。選手の獲得に関しても、毎月スカウトが候補をリストアップしてきて、クラブが大きくなるといい選手が取れるようになるという部分も変わらない。獲得した選手によって発生するイベントをこなしながら育てる、というのも同じです。遊びやすいけど、サッカーに詳しい人に刺さる部分も用意されている、という『サカつく』の基本は変わりません。でも、今回はプラットフォームがスマホなので、入口の部分はもう少し柔らかくしようという考えはあります。サッカーを知らない人でも入りやすいんだけど、奥に行くとディープな部分があるという設計は意識しています。

──ディープな部分というのは、具体的にはどういうことでしょうか?
大きく二つあります。一つは、過去のシリーズで最も選手育成が奥深いものになるということ。時間をかければどんどん強くなるし、いろんなカスタマイズもできる。二つ目はスマホならではの要素です。スマホは定常的にネットワークにつながっていますから、対戦という要素も盛り込んでいます。対戦自体は過去にもあったんですけど、あまり前面に押し出すものはなかった。

──他に今作ならでは、という要素はありますか?
今回は自分が育てたチームで、世界各国のリーグに挑戦することができます。例えば日本のどこかを本拠地にクラブを作ったとして、日本のリーグを勝ち抜いていくと、そのクラブで世界のいろんなリーグに臨むことができる。『サカつく7』の時は、自分が全権監督という立場でいろんなクラブを渡り歩いていくという形だったんですけど、今作は自分のクラブで各国のリーグに挑戦して、世界の頂点を目指すという形です。国が違えばリーグの特徴や流行りの戦術も変わるので、選手の構成も考え直さないといけない。

──配信決定のリリースにあった「JAPANから世界へ」というコピーや、タイトルの「ロード・トゥ・ワールド」が意味するところですね。
そうです。あとは代表監督になれるという要素も盛り込んでいます。日本代表だけではなく、プレイヤーのランクが上がるにつれて他の国から代表監督のオファーが届きます。いろんな国の監督を歴任していってもいいし、日本代表監督にこだわってもいい。日本代表で成果を上げると、日本サッカーのレベルが上がって世界に勝てるようになったりもしますよ。

──やはり、これもロマンですね。
現実よりもちょっと上のロマン、です。

自分なりの日本代表を選び、育て、戦術を考えて世界と戦う

[写真]=野口岳彦

──サッカーファンにとってはライセンス面も気になるところですが、その辺りはいかがですか?
「FIFPro」(国際プロフットボール選手協会)のライセンスを取っているので、海外の選手が実名で登場します。もともと『サカつく』が『J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!』というタイトル名だったこともあり、意外と知られてないのですが、過去のほとんどのシリーズで「FIFPro」のライセンスは取っているんですよ。あとは先ほどお話ししたとおり、日本代表のライセンスもあります。単純に日本代表の選手が登場する、というだけだと「よくある」で終わっちゃうと思うんですが、そこに「育てる」という要素が加わるのは『サカつく』ならではなんじゃないかと思います。それも、「この試合の、この時期の」という区切り方ではなく、日本代表に選ばれたことがある選手をなるべく出そう、という姿勢で臨んでいます。なので、今の日本代表に納得がいかないのであれば、自分なりの日本代表を選び、育て、システムや戦術を考えて世界と戦う、という楽しみができるかなと。最後に、『サカつく』では外せないJリーグのライセンスについては……現在交渉中です。リリースのタイミングでは間に合わないかもしれませんが、引き続き努力していきたいと思っています。

──日本代表で言うと、数試合だけ呼ばれて、以降ぱったりと呼ばれない選手っていますよね。そういう選手に対して、「オレならこう育てる」とか「代表でこう使う」という見方をしているサッカーファンは多いと思います。
僕もやっぱり浅野(拓磨)を鍛えたいですもん(笑)。浅野は今も代表に呼ばれてますけど、僕だったらセンターフォワードで使う、とか。そういう思いを叶えられるゲームでありたいなと思います。

──では最後に、改めて今回の『サカつく』をどんな方に届けたいか、どんな方にとって魅力的なゲームかを聞かせてください。
『サカつく』は、いきなり(リオネル)メッシが取れるゲームではありません。「自分だけのドリームチームをつくる」というよりは、「こういう育て方をしたい」とか「思い入れのあるこの選手を育ててチームの中心に据えたい」とか、そういう“こだわり”がある方に楽しんでいただけるゲームなんじゃないかと思います。サッカーファンは、自分なりのこだわりを持つ方が多いと思うので、ぜひ遊んでほしいですね。

プロサッカークラブをつくろう! ロード・トゥ・ワールド

対応機種:iOS/Android
価格:無料(アプリ内課金あり)
ジャンル:シミュレーション/スポーツ
メーカー:セガゲームス
公式サイト:http://sakatsuku-rtw.sega.com
配信日:2018年春


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