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【サッカーに生きる人たち】“YouTuber那須大亮”の活動の裏にある思い|那須大亮

2022.05.10

 本インタビューは、JAPANサッカーカレッジとサッカーキングの共同企画によって行われました。サッカー界の最前線で活躍されている方々に取材し、それぞれの仕事に対する思いやビジョンをお聞きする全3回の連載企画です。第3回となる今回は、現役を引退後、YouTubeをはじめ様々な分野で活躍する那須大亮さんにインタビューを実施しました。
※本インタビューは2021年12月16日に行われたものです

インタビュー・文=坂上柊太、山本隼輔(JAPANサッカーカレッジ|サッカービジネス科2年)

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『育成年代』にフォーカスを当てた活動

 現在、那須さんのYouTubeチャンネルで人気のコンテンツとなっているのが、全国高校サッカー選手権に出場するような強豪校のサッカー部や、JリーグクラブのUー18チームへの『体験入部』だ。その活動の裏には、どんな意図があるのだろうか。

「一番の意図は、その世代の選手同士がスキルや熱量の部分で刺激し合ってほしいということですね。高校世代は今後の日本サッカー界を担う世代ですから。特に印象に残っているのは、青森山田高校です。Bチームの選手であっても人を動かすことができたり、周りを巻き込みながら自発的に行動できる選手が多く、強い理由がわかりました。また、鹿島アントラーズユースに行った時は、フィジカルメニューがめちゃくちゃキツかったですね(笑)。球際に対するコーチ陣の熱量を含め、デュエルの部分はトップからユースにまで落とし込んでいるんです。それがすごく印象に残って、鹿島の強さの一部を垣間見ることができた気がしました。あとはコロナ禍ということもあり、社会全体が疲弊しているように感じます。高校生たちもサッカーができない時期が続きました。それでもサッカーができる環境が徐々に戻ってきて、そこには本気で頑張っている高校生の姿、覚悟を決めてやっている子たちの姿があります。そういった姿が心に刺さる人はたくさんいると思うので、それを伝えられたらと思って活動をしています」

選手が発信することの意味がわかっていなかった

 那須さんは今でこそ人気YouTuberとなったが、初めはSNSでの発信に消極的だったという。YouTubeでの活動を始めるきっかけは、現役時代にサポーターたちからかけられた言葉だった。

「現役時代の僕は、SNS否定派に近い人間でした。選手が外に発信することの意味もわかっていなかったですし、試合後も発信することに対して何となく嫌悪感がありました。ただ、浦和レッズ在籍時にサポーターのみんなが『一緒に闘う』という声かけをしてくれて。それを聞いた時に、選手の本質ってなんだろうと考えさせられたんです。サポーターがいて、クラブスポンサーがいて、裏方の人がいて、たくさんの人に支えられて選手は表現できているということが、自分の中ですごく腑に落ちました。それと同時に、周りに還元したいと思いました。サッカーの素晴らしさをたくさんの人に知ってほしい、サッカーの価値を向上させたい、と。そして、ちょうどヴィッセル神戸に移籍したタイミングで、『YouTubeをやりませんか?』というお話をいただきました。エンタメなどを絡めて、サッカーの素晴らしさを日本中に広めるきっかけになると思い、YouTubeを始めることにしました」

 活動を始めた頃の周りの反応や世間の言葉は厳しかった。しかし、彼の中では絶対的にブレないある思いがあった。

「あの頃の反応と言えば『那須、どうした?』でしたから(笑)。当時はYouTubeをやっている人が周りにいなかったこともあって、エンタメを意識した動画を出そうものなら『サッカーやれよ』っていう声が上がって。やっぱりSNSの世界なので、誹謗中傷などネガティブなワードが飛んできたりしますよね。でも僕はその言葉を拾いにいくことはやめようって思っていて。僕がやりたいことは彼らの言葉を拾いにいくことではく、『サッカーの価値を向上させること』なので。そう考えると、自分の行動や言動で彼らの言葉はいくらでも変えられる。飛んでくる言葉を拾うのではなく、その言葉の裏にあるいろいろな気持ちを取りにいくことを意識しています。自分の熱量や活動は最初の頃と大きく変わらないし、周りの反応によって自分の気持ちが変わることはありません。ただ、徐々に認知、人気を得る手段としてYouTubeが広がってきたこともあり、応援してくれる人が多くなって、かけられる言葉の質が変わってきたのは感じています。それは素直にうれしいですね」

お互いにリスペクトを

 そして今や、チャンネル登録者数37万人(2022年2月現在)を誇る人気YouTuberとなった。昨年12月26日には、日産スタジアムで『JAPAN ALL STAR 2021』を開催。現役選手にOB選手、インフルエンサーなど、出演陣の豪華さが大きな話題を呼んだ。サッカーの魅力を伝えるため、競技性とエンタメとの融合を軸にさまざまな企画を届けている那須さんは、「日本サッカーの発展」のために何が必要だと考えているのだろうか。

「これから日本サッカーが発展していく中で、時代の変化に応じて様々なことを許容しなければいけないフェーズに入ってきます。そんな時、みなさんに『日本サッカーの発展』という本質を理解した上でアクションしてもらいたいなと思っています。一クラブのサポーターとしての誇りや、軸となる熱い思いはそれぞれが持っていていいと思います。でも、一歩外に出ればサッカーを愛し合う仲間であり、良い方向に進むために刺激し合える仲間です。日本サッカーの発展のために、時にはいろいろなことを許容しつつ、お互いがリスペクトし合えていることが僕にとっての理想ですね。そういう形がすぐにできるとは一概には言えないので難しいですが、お互いにリスペクトし合うことは、これからの日本サッカーの発展を考えれば絶対に必要になると思っています。一人でも多くの方に『日本サッカーの発展』という本質を理解してもらうために、みなさんにそのことを伝え続けていきたいと思っています」

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