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【サッカーに生きる人たち】すべては北海道のために|野々村芳和(株式会社コンサドーレ 代表取締役会長)

[写真]=J.LEAGUE

 本インタビューは、JAPANサッカーカレッジとサッカーキングの共同企画によって行われました。サッカー界の最前線で活躍されている方々に取材し、それぞれの仕事に対する思いやビジョンをお聞きする全3回の連載企画です。第2回となる今回は、株式会社コンサドーレの代表取締役会長を務める野々村芳和さんにインタビューを実施しました。
※本インタビューは2021年10月20日に行われたものです

インタビュー=松山佳奈、小村勇聖、服部泰征(JAPANサッカーカレッジ|サッカービジネス科1年)
文=松山佳奈(JAPANサッカーカレッジ|サッカービジネス科1年)

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 J2に降格した2013年シーズン、北海道コンサドーレ札幌は厳しい経営を強いられることになった。野々村芳和氏が社長に就任したのは、まさにその時だった。野々村社長に導かれたクラブはその後、J1に定着させるまでに成長を遂げた。就任からの9年間、野々村社長はどんな狙いをもって、どんな改革を起こしてきたのか。そして、クラブの今後についても話を聞いた。

■アジア進出、そして海外へ

――まず、選手から経営者へ転身するきっかけが何だったのかを教えていただけますか?
野々村 僕は29歳の時にサッカーを引退しました。そこからはテレビの仕事や解説をしながら、サッカースクールやイベントをする小さな会社を立ち上げ、10年ぐらいを過ごしていました。2013年当時、北海道コンサドーレ札幌はJ2に降格し、会社として厳しい状況にありました。そこで、「白い恋人」で有名な石屋製菓の名誉会長である石水勲さんに「会社を立て直してください」とお願いしにいったんです。一度は承諾をしてくれましたが、1週間後に石水さんに「お前がやれ」と言われて(笑)。その時、初めてクラブの仕事に携わる感覚を持ちました。選手からクラブの社長になるルートを見せてくれた人は今までいなかったわけで、サッカー界に新たな道を切り開いていく人になれたらと思い、9年前にクラブの社長になりました。

――社長に就任されて間もなく、タイとベトナムのクラブと提携を結んでいますが、どのような狙いがあったのでしょうか?
野々村 どうしたら自分たちが北海道の人たちに貢献できるかを考えました。当時の売上を見ると、Jリーグの中で下位に入るほどしかなく、使える強化費が3億円しかありませんでした。だから、選手の補強を考えた時には日本だけでなく、アジアに目を向ける必要がありました。もちろん、Jリーグのレベルに合うかどうかを見極めることは大切ですが、限られた強化費の中でチームの力になってくれる選手を獲得し、その選手が活躍すれば、北海道にも相手国にも影響を与えます。北海道コンサドーレ札幌というクラブがあることで、北海道にもメリットがあるということを示せるわけです。同時に、クラブをどこまで大きくしていきたいかを考えました。欧州5大リーグと同じレベルに並びたい。そのためにはまず日本の上位に入らないといけません。国内で売上を伸ばすだけではきっと足りない。だから他のクラブよりも先にアジアに目を向ける必要があったんです。クラブを大きくする必要がある。試合に勝たないといけない。北海道の人たちのためになる。そうした将来を見据えた時に、早めに手を打っていかなければならないという観点からアジアの選手を取りにいったようなイメージです。

©2017 CONSADOLE

――今注目しているアジアの国はありますか?
野々村 タイの選手はレベルも上がり、J1でプレーしている選手もいるので、引き続き注目をしています。ベトナムもレベルが上がってきているので、J1でもできる選手が近い将来出てくる可能性があると思っています。難しいのは、「その選手が果たしてJリーグのどのカテゴリーで通用するのか」を見極めることです。選手を獲得しても、試合に出られないようでは影響力は生まれない。選手のレベルを見極めて試合に出られる環境を作ってあげれば、その選手の国の人たちに、効果的にJリーグのことを知ってもらうことができると思っています。

すべては北海道のために


――北海道コンサドーレ札幌は、サッカーだけではなくカーリングやバトミントンのチームを創設していますが、どんな狙いがあるのでしょうか?
野々村 僕自身は、サッカーだけでいいとは思っていません。Jリーグクラブの基本理念には、「サッカー」ではなく「スポーツ」という言葉が使われています。さまざまなスポーツが北海道コンサドーレ札幌の中にあるという形にしていきたい。北海道のスポーツでトップを目指している人は、皆が北海道コンサドーレ札幌への入団を目指す、という世界を作れることが一つの理想かなと思っています。マイナーなスポーツをプレーしている人たちは、どうやって資金を調達するかにかなり苦労しているのが現状です。もし北海道コンサドーレ札幌で選手がプロとしての価値を見出せたなら、同じ競技をしている方たちに希望を与えますし、地域で応援し、育ててきた選手が活躍することで北海道に利益をもたらすことができると思います。それを分かりやすく表現するためにも、さまざまなスポーツがクラブの中にあればいいと思っています。

――昨年9月にはSDGsプロジェクト「PASS」の発足を発表されました。発足を決めたきっかけを教えていただけますか?
野々村 どのクラブも同じような活動に取り組んでいます。決して、「世の中でSDGsが騒がれているから始めなければいけない」と考えているようなクラブは全くないと思います。世の中の流れに合わせて発表することで、今までやってきたことを改めて知っていただくきっかけになればという感覚ですね。「この先も皆で一緒にやっていきましょう」というメッセージを伝えたかったんです。

©2021 CONSADOLE

――今後、北海道コンサドーレ札幌をどんなクラブにしていきたいと考えていますか?
野々村 普通に勝ちたいと思います。しかし一方で、お金がないとJ1で優勝はできないとも思っています。4位になったシーズンもありますが、それを継続できるかというと、そう簡単な世界ではない。カップ戦であれば、うまく戦えば優勝できる可能性はあるぐらいまで力をつけてきているので、タイトルを取ってくれたらいいと思います。クラブは地域のためにどのような存在でいれるかは譲れないところだと僕自身思っています。これから世界に進出していくクラブも選手も北海道のためにやり続けることは無くなってほしくないと思います。

――最後に、今後サッカー界で活躍することを目指す私たち学生に向けて、アドバイスをいただけますか?
野々村 選手やサポーターの気持ちを本当の意味で分かっている人は、絶対にいた方がいい。選手やスタッフはギリギリのところで勝ち点3を取ろうと必死にやっています。クラブに入ればそれを肌で感じられると思いますが、同じ感覚を持って仕事に臨めるかどうかが大事。サポーターも、近くにいる人ほど同じような感覚でいるはずなので、そういう人たちの思いも分かった方がいい。しかし、上層部には全くサッカー畑ではない人の感覚がある人もいた方がいいと思います。それは考えが偏ってしまうから。違った視点で考えられる人も必要だと思います。でも、みんなはそっちじゃないと思う。だから、君たちにとっては選手、スタッフ、サポーターの気持ちが分かるかということが大切だと思います。


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