2018.07.18

「税金」「貯蓄」「運用」「保険」「サポート体制」「スキル」「セカンドキャリア」…成功するプロ選手は“チーム体制”を整えている

サッカー総合情報サイト

 サッカーをさまざまな角度から深く楽しみたい――。そんな皆さんにぴったりの連載が、この『あなたのJリーグライフがもっと充実! 5分でわかるサッカービジネス講座』です。ビジネスやクラブ経営など、オフザピッチでサッカーを支える取り組みにフォーカスを当ててきました。

 今回は「プロサッカー選手とお金」を題材に取り上げました。備えあれば憂いなし、というのはサッカー選手も同じ。貯蓄を含めた安定した状況が精神面に落ち着きをもたらし、好パフォーマンスにつながります。

 税理士法人猪股会計の代表を務め、公認会計士や税理士といった立場から、プロスポーツチームのコンサルティングや、50人を超えるアスリートの財務サポートを行っている猪股宏之(いのまた・ひろゆき)さんによれば、“できるサッカー選手”は、お金について頭を悩ます時間をできるだけ減らしています。「税金」「貯蓄」「運用」「保険」といったお金が絡むプロセスは信頼できる仲間に支援してもらい、自身はプレーに専念できる環境を整えることが成功の秘訣のようです。

構成=菅野浩二
写真=瀬藤尚美
協力=公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル、税理士法人猪股会計

サッカー選手が経費として計上できるものとは?

 昭和の雰囲気を感じさせる純喫茶。私の目の前に座っているのは蹴球王太郎選手です。将来を嘱望される高卒1年目のゴールハンターで、J1の名門クラブで開幕から活躍しています。もっとも、蹴球選手は「プロサッカー選手とお金」というテーマを扱うにあたって生み出した架空の選手です。

 税理士法人猪股会計の代表として、私はプロサッカー選手とお金のホントのところ…賢明なプロ選手は年収の30%を貯蓄に回すと題した回で年俸の支払われ方や貯蓄の目安についてお話しました。

 思わぬ早期引退を強いられ、経済的に苦しんでいる元アスリートがメディアに取り上げられることもありますが、実際はきちんと貯蓄を続けて立派にセカンドキャリアを歩んでいる人間も多い。そう伝えると、蹴球選手の顔はきりりと引き締まりました。実際、サッカー界では引退後に大手広告代理店に勤務している方がいますし、野球界では公認会計士として活躍している方もいます。

 蹴球選手が再び口を開きます。

「今日はそもそも確定申告についていろいろおうかがいしたかったんです。サッカー選手が経費として計上できるものはどんなものなんですか?」

「スポーツ選手特有の項目というと、『用具ウェア費』というものが挙げられますね。メーカーから支給される物に加えて、プロ生活に必要なものとして自分で購入したトレーニングウェアやスポーツ用品は経費にできます」

「なるほど。では、たとえば『DAZN』の視聴料はどうですか? そのほかCSやBSで海外サッカーの試合を観ることも多いのですが」

「それも経費にできますね。確定申告に関しては、経費を事業分と私生活分でわける『按分』という考え方があります。視聴料についてはサッカーとそれ以外の視聴の割合でわけて事業分にするのがいいかもしれません。通信費と考えられる携帯代も同じ考えですね」

「わかりました。では、たとえばチームメートとのミーティングでの飲食代はどうですか?」

「それは基本的に会議費や交際費として計上できますね」

 私はそう答え、それ以外に「家賃」や「水道光熱費」がプロ生活にかかわる割合があるのなら事業按分できること、そして「旅費交通費」の存在を話したうえ、飲食代以外の手土産や冠婚葬祭時の支払いが事業に関連するなら「交際費」として計上できることなどを伝えました。

 蹴球選手は頭をかきながらひとり言のようにつぶやきます。

「いろいろ難しそうだ……やっぱり税理士の方にお願いしたほうがいいのかな」

 そこで、私は一流のアスリートに共通する7つのサポート体制についてお話しました。「プロサッカー選手とお金」にも大きく絡みますが、スポーツに打ち込み、しっかりと結果を出している選手たちは、「税金」だけではなく「貯蓄」「運用」「保険」「サポート体制」「スキル」「セカンドキャリア」という7つの要素を、プロや家族に支援してもらい、できるだけ自分はプレーに専念できるような環境をつくっています。

「貯蓄」であれば奥さんや両親、「税金」であれば税理士、「サポート体制」であればマネジメント会社や日本サッカー協会登録の仲介人。いわば信頼に足る“チーム体制”で結果を出す基盤を固めることが重要であると伝えると、蹴球選手は深くうなずきました。実際、領収書をまとめて確定申告用の書類を作成するのは一定の時間と労力が必要となります。選手にとってはプレーに直接関係ない負担といってもいいでしょう。

 ちなみに、私は自分自身が野球をプレーしていたこともあり、プロの世界までたどり着いた皆さんを尊敬していますし、引退後も含め活躍してほしいと願っています。そのため、アスリートの方たちとは、領収書と年に数回だけ連絡を取るような関係ではなく、さまざまな角度からプロスポーツ選手の不安を取り除く存在でありたいと考えています。引退後も充実した人生を歩んでもらえるように、税理士法人猪股会計では「税金」「貯蓄」「運用」「保険」のアドバイスを行いながら、私たちがサポートする選手たちに2カ月に一度ビジネス本を送ることで一般社会でも通用する「スキル」を高め、「セカンドキャリア」もサポートするような体制を整えています。

引退後の不安やキャリアアップの夢を巧みにつく人間は要注意

アスリートの財務サポートを行っている税理士法人猪股会計の猪股宏之さん


「すみません、基本的なことを聞いてもいいですか?」

 蹴球選手が少し恥ずかしそうに口にしたのは「なぜ経費をきちんと計上しなければならないのか?」といった疑問でした。

 私の答えは「正確な金額の税金を納めるためです」というものでした。手元のノートに絵を書きながら、所得税の対象となるのは「収入」ではなく「所得」であること、「所得」とは「収入」から「経費」と「控除」を引いたものであることを説明しました。「所得」に税率を掛けて税金の金額が決まるため、管理がずさんで「経費」が実際より少なくなっていたら、「所得」が多くなり、納税額も増えてしまう。結果として、自分が損してしまいます。

「なるほど、そういうことなんですね。話は少し戻りますが、さっき猪股さんは7つの要素のなかで『運用』とおっしゃっていました。でも、僕の場合はまだそこまで考えなくていいんですよね?」

 この質問に私は基本的な考え方をあらためて伝えました。王道は「貯蓄」であり、目安は年収の30%。貯蓄用の口座を別に開設するのが賢明。「運用」は興味があるうえ、“チーム体制”のなかで信頼できる人間がいるのが絶対条件。「税金」「貯蓄」「運用」「保険」に関しては、お呼びでない提案や営業、売り込みにはくれぐれも注意すること――。

 私は日本代表入りも期待されている蹴球選手の将来を思い、次のように話しました。

「プロスポーツ選手の周りには、引退後の不安、あるいはキャリアアップという夢を巧みについてくる人間がいますので、本当に気をつけてください。いずれマネジメント会社に所属したり、仲介人に支援してもらったりすることもあるでしょう。その際はそれぞれがプレーに専念できる“チーム体制づくり”のなかで信頼できる人間なのかどうかを見極めてください」

 聞けば、蹴球選手はいくつかのマネジメント会社や複数の仲介人から声がかかっており、お世話になる先を迷っているとのことでした。私は続けます。

「蹴球選手は『海外リーグでもプレーしたい』とおっしゃっていましたが、しかるべきタイミングでしかるべき移籍先とつなげてくれるマネジメント会社や仲介人が理想です。もっといえば、ピッチ上での活躍はもちろん、海外でのプレーを考えているなら、若いうちからエージェントとコミュニケーションととり、良い関係を築いておくことが大事になるでしょう」

「なるほど。精神的な安定を図り、コンスタントに結果を出すうえでも貯蓄が必要になるわけですね」

 さすが前途を期待されるだけあって、蹴球選手は頭の回転の早い若者でした。その後、あらためて連絡があり私たちが正式に蹴球選手の財務サポートを行うことになります。


\教えてくれた人/
猪股宏之(いのまた・ひろゆき)さん
監査法人トーマツ国際部を退社後、税理士法人猪股会計を立ち上げる。現在は東京都と埼玉県にオフィスを持ち、公認会計士、税理士、ファイナンシャルプランナーとして、さまざまなプロスポーツチームのコンサルティングや、50人を超えるアスリートの会計・税務・資産形成などのサポートを行う。

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