2017.10.11

魅力あるスタジアムへ…アントラーズ担当者が語るスマートスタジアム事業/第1回

海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファーとマルチに活動を展開中。

鹿島アントラーズの本拠地である県立カシマサッカースタジアムは、今年7月にスマートスタジアム化がスタートした。スタジアム内に高密度Wi-Fi網が整備され、多くのファン・サポーターがデジタルコンテンツを楽しめるようになった。また、試合当日に魅力ある環境を提供するだけでなく、イベントを開催したり、フィットネススタジオやクリニックを併設したりと、試合日以外でも多くの人々が集まり、賑わいを見せる場所となっている。

今回10月にサッカーキング・アカデミーで【鹿島アントラーズ×ソニー 特別セミナー】を開催することとなった。テーマは「観衆を魅了するスタジアムソリューションとは」。そこで登壇するアントラーズの事業部マーケティンググループ所属の土倉幸司氏にインタビューを行った。土倉氏はスマートスタジアム事業や様々なプロモーションの企画、実施を行っている。アントラーズは、カシマサッカースタジアムに整備されたデジタルインフラをどのように活用し、ファン・サポーターに何を提供しようとしているのだろうか。

* * * * *

――土倉さんはソニーに勤務されていたそうですが、入社当初はどのような業務を担当していたのでしょうか。
土倉幸司 大きく分けて3つの仕事をしていました。最初は人事部で4年ぐらい働き、その後にヘッドフォンやハンディカムといったコンスーマープロダクツの商品企画をしておりました。最後はグローバルマーケティングで、シンガポールとドイツに赴任し、ハンディカムなどのイメージングプロダクツのマーケティング戦略を立て、現地の量販店やEコマース企業などに販売する業務を行っていました。

――その後デロイト トーマツ コンサルティング合同会社へと転職したそうですが、その経緯や業務内容を教えてください。
土倉幸司 ソニーでは企画や営業、人事など部門ごとに業務をやってきたのですが、もう少し経営的な視点で考えていけるようになりたい、そして将来的には経営者にという希望がありました。ソニーでももちろん時間をかければ可能だと思いますが、30代、40代のうちから経営者として力を発揮していきたいという思いがあり、経営コンサルティングサービスを担っているデロイト トーマツ コンサルティングへの転職を決めました。そこでは主に製造業のクライアント企業と共に、M&Aや新規事業戦略のプロジェクトに取り組んできました。

――転職当初は戸惑いもあったとのですか?
土倉幸司 結論に至るプロセスやメソッドが全然違うな、と思いました。例えば、ソニーの時も競合調査やユーザー調査を何度もやってきたのですが、コンサルティングファームでは、一つの結論やストラテジーを導き出す上で事実確認のインタビューや調査を文字通り徹底的に行いますし、その対象も業界の枠を超えてインサイトを捉えていきます。そのこだわり方がコンサルティングファームの凄さというか、外から見ていたらなかなか分からないところでした。そして、様々な業界の出身者が一つのチームに集まっているので、物事の見方でも日々新たな気づきがありました。

――そこから2016年にJリーグに移り、法人改革特命担当として勤務することになった経緯を教えてください。
土倉幸司 Jリーグは村井満さんがチェアマンに就任してから経営改革を進め、リーグやクラブやの経営を強くするということを発信していました。その一方で人材の観点では、「経営的な観点や他の業界を経験してきたビジネスパーソンの数が少ない」という課題を持たれていました。私がこれまでに取り組んできたマーケティングや経営コンサルティングのノウハウを、スポーツ業界で生かしていく価値は大きいのではないかと思いまして、Jリーグで新たなチャレンジすることに決めました。

――一般企業で勤めていた立場から見て、組織としてのJリーグはどのように評価されていますか?
土倉幸司 経営者の立場にある村井さんや原博実さん(Jリーグ副理事長)ら、役員の方々と仕事をする機会が多かったのですが、非常にビジョナリ―な経営者で、「社会に対してどう貢献していくか」という高い視点を持たれていました。経営者としてもビジネスパーソンとしても尊敬していますし、学ばせていただくことがたくさんあります。ソニーでも、コンサルタントとしても、組織を牽引されている様々なグローバル企業の経営者と一緒に仕事をしたり、話をする機会がありましたが、Jリーグのトップからも、経営者としてのパワーを感じます。組織全体を見ると、ビジネスをさらに伸ばしていくためには、まだまだ足りない部分はたくさんあると思いますが、トップマネジメントが確固たるビジョンを持って組織をリードしていることが成長のためには大切だと思います。そういう意味では、まだまだJリーグは伸びていく可能性があると思っています。

――今年から鹿島アントラーズで勤務されていますが、その経緯を教えてください。

土倉幸司 元々、アントラーズにはデジタル領域を強化していきたい、新たな時代に向けて経営体制を動かしていきたいというニーズがあり、Jリーグとしてもちょうどデジタル元年と位置付ける2017年は、デジタルマーケティング領域を強化していこうというところでした。さらにJリーグとしては、パイロットクラブを作って様々なトライアルを行い、その実績を各クラブに展開して全体的なマーケティングのレベルを引き上げていきたい、という考えがありました。私自身はデジタルに限定した専門家ではありませんが、広い意味でマーケティングや経営面で貢献できると思いました。クラブのニーズとJリーグが実行したいことがちょうどマッチングしたということですね。それに、私は元々アントラーズのフレンドリータウンの一つで育ったので、アントラーズのことはずっと応援してきましたし、自分の実家も近く、地理的な条件も非常に良く分かっていますので、やりやすい部分はありますね。

――では、子どもの頃は鹿島アントラーズの試合をよく見に行っていたのですか?
土倉幸司 Jリーグが開幕した時、中学1年だったのですが当時は特によく見ていましたね。中学生、高校生の頃はゴール裏でサポーターとしてずっと応援していましたし、初めてクラブハウスに来た時に、サントス選手にサインをもらって感激したことをよく覚えています(笑)。当時は、まさか自分がアントラーズで仕事をすることになるとは思っていませんでしたけどね(笑)。

――現在はどのような業務を担当しているのでしょうか?
土倉幸司 役割としては事業戦略やマーケティングです。ウェイトを置いているのはデジタル化ですので、スマートスタジアムのサービス設計をして、実際にプロジェクトをマネージして、サービスローンチまで導くというのが業務的には半分を占めています。あとはマーケティングの基盤となるCRM(顧客関係管理)やソーシャルメディアの活用推進などデジタルマーケティングの戦略、プロモーション面の企画から実行までをやっているのがもう半分になります。

――クラブ内にそういった業務を担当する部署があるのでしょうか。
土倉幸司 マーケティンググループというセクションが今年からできました。今までは広報のセクションと営業のセクションがあり、営業の中にチケット担当やグッズ、スポンサーシップなど、それぞれの事業単位で担当者がいましたが、どうやったらビジネスを最大化できるのか考えた際、全体的な観点に立って戦略を立て、マーケティングを実行していく役割が必要だということでマーケティンググループができました。数名で構成されていて、そのマーケティンググループの下にメディアチームという長年にわたってアントラーズを支えてきたユニークなチームがあります。ここにはSNSや公式メディア、中継制作など、それぞれのメディアや役割に応じたエキスパートがいます。アントラーズが求めているデジタル戦略はどういうものなのかを定義し、実際に具現化していく時にはメディアチームと一緒に仕事をしています。

インタビュー・文=池田敏明
写真=兼子愼一郎

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株式会社鹿島アントラーズFC
事業部・マーケティンググループ
土倉 幸司
2003年ソニー株式会社入社。コンスーマーエレクトロニクス事業において組織人事、商品企画、アジアパシフィック・欧州各拠点でのプロダクトマーケティングを担当。2014年よりデロイトトーマツコンサルティング合同会社において、経営戦略・M&A、新規事業戦略を中心とする経営コンサルティングに携わる。2016年Jリーグ(公益社団法人日本プロサッカーリーグ)に入社。法人改革特命担当として、Jリーグの組織・ガバナンス改革、成長戦略立案等を推進。2017年より鹿島アントラーズの事業戦略・マーケティングを担当し、スマートスタジアム化のプロジェクトをリードしている。

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