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鹿島の躍進を支える…ソニー担当者が語るスタジアムソリューション/第2回

2017.10.06

プレー風景を撮影するカメラや放送機器、スタジアムでスロー映像などを映し出す大型映像表示システムなど、ソニーはサッカーを始めとするスポーツの分野において不可欠な存在と言える。近年は最新のテクノロジーを駆使したビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR))やラインジャッジが導入され、またスタジアムエンタテインメントの分野でも様々なコンテンツを提供している。

山本太郎氏は、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社でスポーツを軸としたビジネスデベロップメントを担当している。ソニーグループが展開するスタジアムソリューションには、どのようなものがあるのか。それらは、世界中でどのように評価されているのだろうか。

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――ソニーグループの技術は、日本国内ではどのような施設に導入されているのでしょうか。
山本太郎 国内ではカシマサッカースタジアムを始め、横浜スタジアム、日産スタジアム、ナゴヤドーム、福岡ヤフオク!ドームなどに納めさせていただいております。その中でも横浜スタジアムさんにはいろいろな設備を提供させていただいています。例えば、ボックスシートのようなところでは、タブレット端末で見逃してしまったシーンやベンチの映像などのプレミアム映像をセカンドスクリーンとして見ながら試合を観戦する設備など、オンデマンド的な用途に応えられるシステムを提供しています。また、福岡ヤフオク!ドームには、天井からの吊り下げを可能にした超軽量ビジョンをはじめ、内外野に多くのビジョンを導入しており、コンテンツ送出を含め、そのほとんどをソニービジネスソリューション株式会社が担っています。

――近年は試合を見るだけでなく、スタジアムの楽しみ方もいろいろ変わっていますよね。
山本太郎 基本的にスタジアムに来る方は、その場で盛り上がりたい、最高のプレーを見て楽しみたいという方が多いのですが、スマートフォンなどに慣れている世代の方々は、楽しみ方も多様化していると思います。その場にいるんだけど違うことを体験したい、という要望にも対応できるようなことを、ソリューションとして提供していきたいと思っています。

――山本さんはゴールライン・テクノロジー(以下GLT)やビデオ・アシスタント・レフェリー(以下VAR)のシステムをアジアに展開する事業に従事されているそうですが、日本国内では活用されているのでしょうか。
山本太郎  国内ではBリーグにご活用いただいています。FIFAでは4つの事象でしかVARを使ってはいけないという規則がありますが、バスケットボールでも同じようなルールがありまして、例えばブザービーターのチェック、3ポイントラインを踏んでいるかどうかのチェックなどでホークアイを活用していただいています。また、テニスの楽天ジャパンオープンや東レ パン・パシフィック・オープンといったテニスの大会やバレーボールの国際大会でもホークアイの技術を入れさせていただいています。

――Jリーグで導入される予定はないのでしょうか。
山本太郎 7月22日に明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ2017の鹿島アントラーズ対セビージャの試合がありましたが、そこでVARの体験会を実施しました。ピッチ上とVAR室を音声でつなぐインカムだけはやらなかったのですが、それ以外はすべて本番と同じように判定の補助として使用して頂くワークフローを体験していただきました。Jリーグの村井満チェアマンやJFAの小川佳実審判委員長をはじめ、数名のプロレフェリーの方々にも体験していただきました。実際に採用して頂くにはFIFAの定めるトレーニングを含めたいろいろなプロコトルがあるので、JFAとJリーグでの検討がされていると思いますが、我々もサポートさせて頂きたいと思っています。

――県立カシマサッカースタジアムにソニーの機材が導入されることになった経緯を教えてください。
山本太郎 2010年頃からテクニカルサプライヤーをやらせていただき、いろいろな課題に対してソリューションの提供が続いてきた中で、2016年にスタジアムのオーナーであります茨城県がスタジアムをもっと魅力的にするというプロジェクトを立ち上げました。最終的には入札の末に我々が担当させていただくことになったのですが、我々としてはこれまでの関係を通じて、茨城県や鹿島アントラーズさんのご要望を理解した上で、現実的かつ魅力的なご提案ができたと思っています。

――どのような機材を納入しているのでしょうか。
山本太郎 2017年からの活用という意味では、「デュアルビジョン」という大きなビジョンを、ホーム側とアウェイ側同サイズで設置し、それをコントロールするシステム、そしてスタッフと、4Kやスーパースローに対応するカメラを提供させていただいています。それ以前にもスタジアムのコンテンツ配信システムやセキュリティカメラのシステム、天然芝の生成を促進させるLEDシステムなどを納入しています。ベストな環境を提供して選手の皆さんに素晴らしいプレーをしていただきたい、ご来場頂いている観客、視聴されている方々に魅力的なコンテンツをお届けしたいという鹿島アントラーズさんと我々の思いが一致して、こういったソリューションを提供させていただくことになりました。

――海外のスタジアムソリューションと比較して、日本の現状はいかがでしょうか。
山本太郎 技術の面では日本が劣っているとは感じないですが、取り組みの面での違いはありますね。例えばトリノのユベントススタジアムにはショッピングセンターがあり、試合日以外でも人が集まって、スタジアムを中心に地域が活性化しています。チェルシーの本拠地であるスタンフォード・ブリッジなども、付近に病院や学校などがあり、ホテルや映画館やショッピングモールも複合的に作ってスタジアムを核に地域を活性化させようという流れがあります。そうした取り組みに関しては、ヨーロッパのほうが進んでいると感じます。スタジアムでサッカーの試合があるのは、多く見積もっても年間で30日ぐらいですよね。残りの300日以上をどう活用するのか、という部分で鹿島アントラーズさんは様々なアイデアを出して実践しているので、ベクトルについてはヨーロッパに近いと思います。横浜スタジアムさんなども一帯を盛り上げていこうという動きがありますね。

――セミナー当日どのようなお話が聞けるのでしょうか。
山本太郎 カシマサッカースタジアムの事例の紹介や、その他の国内の事例を紹介したいですし、選手やプレーの魅力・価値を最大化する部分で我々が提供できるものは何かについてお話させていただきたいと思っています。その具体例として、放送技術やホークアイのサービスについてお話させていただこうと思っています。ソニーのミッションは、ユーザーの皆様に感動を与えて、好奇心を刺激する会社であり続けるということなので、我々がスポーツのセグメントでどう貢献できるかをお話ししていきたいですね。

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スタジアムの活用法を模索し、様々なチャレンジを続ける鹿島アントラーズ。それを支えるソニーグループの技術。この“強力タッグ”は、将来的にどのようなものを提供してくれるか。今回のセミナーでは、その一端を知ることができるかもしれない。

インタビュー・文=池田敏明
写真=兼子愼一郎

 

世界に誇るソニーの技術…ソニー担当者が語るスタジアムソリューション/第1回

ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社
プロフェッショナル・ソリューション&サービス本部
スポーツセグメント部
山本 太郎シンガポール、アメリカ、イギリス、インドの販売会社・地域拠点に通算約18年間駐在し、セールスマーケティング関連業務及び新規事業立ち上げ業務に従事。担当したカテゴリーは多岐にわたる(放送・業務用機器、スポーツビジネス、民生オーディオ関連機器、スマートフォン等)。シンガポールでは、大型映像装置の案件を通じスタジアムエンターテインメントに関わり、さらに各国での判定補助サービス、スポーツ関連スポンサー業務などを通じて多くのスタジアムを訪れる。直近では、2013年よりインドにおけるスマートフォン事業を統括し、2016年4月に帰国。現在は審判支援技術やそのサービスを提供するホークアイ事業のグローバル展開を主に担当。スポーツ全般をこよなく愛し、アメフト、ラグビー、野球の競技歴あり。

By サッカーキング編集部

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