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Jクラブ経営を支える“3本柱” サポーターも知っておくべき収益構造の基礎知識

2017.09.11

 連載『あなたのJリーグライフがもっと充実! 5分でわかるサッカービジネス講座』は“読んで学ぶ講座“です。普段、Jリーグや日本代表の試合を追っているだけでは見えにくい、クラブ経営や商業的観点にフォーカスを当てていきます。

 今回は、Jクラブがいかにして利益を得ていくかを学びます。講師として解説してくれるのは、株式会社Jリーグマーケティング専務執行役員の山下修作(やました・しゅうさく)さん。山下さんはJリーグアジア戦略室室長や国際部部長を経験しており、日本サッカーにおけるビジネス的な知識は豊富で、サッカーをより楽しむ視点を提供してくれます。

構成=菅野浩二
協力=一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル

Q.Jクラブはどのようにして収益を上げているのですか?
A.広告料、入場料、物販という“3本柱”を高める収益構造が基本です。

◆“3本柱”が バランスよく増えていくのが理想的

 Jリーグはクラブ経営の“見える化”を図るべく、2005年度分からクラブごとの経営情報を発表しています。クラブを運営する際にどれくらいの収益があり、どれくらいの費用がかかったのかがわかる一覧表を確認することができます。

 皆さんも、平成28年度のクラブ経営情報開示一覧にぜひ一度目を通してみてください。クラブごとに詳細の会計項目は異なりますが、一覧化できるように開示項目としては営業収益の内訳は、「広告料収入」「入場料収入」「Jリーグ配分金」「アカデミー関連収入」「物販収入」「その他収入」の6つとなっています。このなかでクラブ経営を支える軸となるのが、「広告料収入」「入場料収入」「物販収入」の“3本柱”です。

Jリーグの2016年度項目別収入ベスト5

「広告料収入」はクラブを支援する企業や法人から支払われる収入のことです。クラブによって「スポンサー」や「パートナー」と呼び方は変わりますが、「広告料」を受ける対価として、各クラブは企業や法人の知名度や認知度を高めるお手伝いをします。ユニフォームやトレーニングウェア、ホームゲームのピッチサイドなどに企業のロゴを入れ、スポンサーやパートナーの存在を広く知ってもらう形です。広告料の値段は露出度の高さによって異なりますが、一般的にはユニフォームの胸部分が最も高額となっています。

「入場料収入」とは、チケット代による売上を指します。“3本柱”のなかでは、いちばん上限が決まってしまう項目かもしれません。ホームゲームの数もスタジアムの収容人員も決まっているからです。

 ただ、どのクラブも満員をめざして様々な施策を展開していますし、入場料はクラブが決めてよいため、何かプレミアムな体験ができる一枚3万円のようなチケットで売上増を狙ってもいいわけです。キャパシティが決まっているなかでいかに入場料収入を高めるかがクラブビジネスの醍醐味であり、戦略の見せどころともいえるでしょう。

「物販収入」はユニフォームや関連グッズの売上のことです。クラブのファン・サポーターの多くがホームやアウェイのレプリカユニフォームやタオルマフラーを購入しますが、それ以外にもチームを応援する方々に満足していただけるグッズを販売すれば、当然収益は増えます。記念ユニフォームやコラボグッズ、オフィシャルマガジンやマッチデープログラムなど、各クラブとも様々なアイデアで物販収入の向上を図っています。

Jクラブの経営を支える3本柱「広告料収入」「入場料収入」「物販収入」

「広告料収入」「入場料収入」「物販収入」の“3本柱”の割合は、現状ほとんどのクラブにおいて「広告料収入」が最も多くなっていますが、 “3本柱”がバランスよく増えることが、クラブ、選手、クラブスタッフ、ファン・サポーター、各業務にかかわる方々、地域の方々などのさらなる幸せにつながるはずです。

◆2017年度の決算からは「Jリーグ配分金」が増加

“3本柱”はクラブの営業努力によって高められますが、一方、収益のうち「Jリーグ配分金」はJリーグ自体の取り組みも重要になります。

 リーグ配分金は、動画を配信する権利を販売して得られる公衆送信権料、リーグのスポンサーから支払われる協賛金料、グッズなどの商品化権料といったリーグの収入を、あらかじめ決められた比率によって、J1、J2、J3のすべてのクラブに支払う金額のことをいいます。配分金の主要なものとして「均等配分金」「理念強化配分金」「降格救済金」「賞金」の4つが挙げられます。

 2017年度からは、各クラブの収益においても「Jリーグ配分金」が増えることが見込まれます。英国のパフォーム社が手がける動画配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」と2017年から10年間、約2100億円の放映権契約を交わしたためです。例えば、2017年に全54クラブに支払われる「均等配分金」の原資は約100億円で、J1クラブが受け取る配分金額はこれまでのほぼ倍となります。

2017シーズンよりJリーグはパフォーム社と10年契約を締結

 リーグ4位までに支払われる「理念強化配分金」も新設し、3位までに支払われる「賞金」も増額します。リーグ配分金が増えることで、クラブへの配分が増え、クラブはそれらを選手補強やスタジアムの改修、選手や指導者の育成、あるいはバラエティに富んだグッズ販売などへ投資することによって、クラブ収益の土台を増やし、投資型のクラブ経営が促されることを期待しています。

\教えてくれた人/
山下修作(やました・しゅうさく)さん
株式会社Jリーグマーケティング専務執行役員。北海道大学大学院修了後、株式会社リクルートで営業、編集、企画、WEBメディアのリニューアル、プロモーション、マーケティングなどに携わる。2005年からJリーグ公認サイト『J’s GOAL』の運営やJリーグのWebプロモーション事業などにかかわった。Jリーグアジア戦略室室長や国際部部長を経て、2017年4月より現職。

By サッカーキング編集部

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