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【インタビュー】“祭典”への手応え(ワールドサッカーキング 2010年1月21日号掲載)

2016.09.13

写真=Kenzo KOBA

 初めて日の丸を背負ってピッチに立ったのは、2006年2月のことだ。それから10年半――。今年9月1日に行われた「2018FIFAワールドカップロシア アジア最終予選」のUAE戦、タイ戦に出場し、長谷部誠の日本代表キャップ数は100を超えた。
 『サッカーキング』では、長谷部誠の日本代表100キャップ達成を祝うべく、そのキャリアを振り返る特集を展開する。ここでは、『ワールドサッカーキング』が2010年1月に行ったインタビューを紹介しよう。

長谷部誠はその時】焦がれた舞台、南アフリカ・ワールドカップを前に

 加入2年目の08-09シーズン、長谷部誠は主力選手としてチームのブンデスリーガ初制覇に貢献した。
 ドイツ王者として迎えた翌09-10シーズンは、開幕数試合を欠場したものの、9月に復帰してからはピッチに立ち続けている。また、日本人選手5人目となるチャンピオンズリーグ出場を果たし、欧州最高峰の舞台も経験した。
 年末には南アフリカ・ワールドカップの組み合わせ抽選会が行われ、日本はカメルーン、オランダ、デンマークと同組に振り分けられた。対戦国の印象を尋ねられた後、グループリーグ突破の可能性を問われると、「自信はあります」。長谷部は堂々と答えた。ドイツで積み重ねた経験が、そう言わせたのだろう。待ち焦がれた大舞台への出場を目前に控えた26歳の青年は、その時、何を語ったのか。彼の言葉を振り返ろう。

[写真]=Getty Images

<インタビュー・アーカイブ>

インタビュー・文=岩本義弘
[ワールドサッカーキング 2010年1月21日号掲載]

得点やアシストにもっと絡んでいきたい

――今シーズンはフェリックス・マガトに代わり、アルミン・フェー監督がヴォルフスブルクの指揮を執っています。監督交代によってチームにどのような変化がありましたか?

長谷部 マガト監督は練習中も普段の生活に対しても本当に厳しい方でしたが、フェー監督はプロとして自由を与えてくれるタイプ。もちろん、自由の中にも責任はあるんですが、「厳格」と「自由」という点では真逆の監督なので、当然、チームには大きな変化がありましたね。

――今シーズン、序盤はリーグ戦で3連敗を喫した時期もありました。その後、徐々に順位を上げてきていますが、長谷部選手は最近のチーム状態をどう見ていますか?

長谷部 確かに上位と勝ち点差は縮まってきましたけれど、まだまだ勝ち切れない印象がありますね。試合内容は良くなっていますが、終盤に失点して追い付かれたり、勝ち越されてしまったり。そういう試合が今シーズンは多いような気がします。

――逆に言うと、昨シーズンは接戦をすべてモノにした感がありますからね。

長谷部 そうなんですよ。昨シーズンはそういった勝負強さがあったと思うんです。今シーズンはその部分が薄れてきているというか。

――選手の視点でその原因を分析すると?

長谷部 うーん……分からないというのが正直なところです。ただ、運というか、勝利を引き寄せる力は、ただ待っているだけで身に着けられるものではないですからね。昨シーズンはかなり厳しい練習をこなして、精神力が高まる中で勝負強さが備わったのかなとも思います。その点、今シーズンは全体的にリラックス出来ている半面、少し甘さが出てしまっているのかもしれません。

――自分を追い込んだり、集中力を高める部分は、選手それぞれが意識してやっていかなければならないということですね。長谷部選手自身はいかがですか?

長谷部 僕の場合はレギュラー争いが激しいですからね。今シーズンは僕と同じポジションに多くの選手がいますし、どの試合も全く気が抜けませんから。そういった環境を含めて、僕自身はすごく集中してプレー出来ています。ただ、フェー監督はマガト監督のように頻繁にメンバーを入れ替えるタイプではないので、レギュラーの選手たちは気が付かないうちに危機感が薄れてしまっている部分があるかもしれませんね。

――ヴォルフスブルクは、ブンデスリーガの中でもチームとして非常にまとまっている印象があります。実際、今シーズンのチームはどうなんでしょう?

長谷部 すごく良くまとまっていますよ。チーム全体がリラックスしていて、雰囲気も良いですから。

――特に気が合うチームメートは?

長谷部 みんなと仲良くやってますよ。その中であえて挙げるとすれば、(エディン)ジェコと(ズヴェズダン)ミシモヴィッチのボスニアコンビや、(マルセル)シェーファー、(クリスティアン)ゲントナー、(ディエゴ)ベナーリオ。彼らとは食事に行ったり、一緒にいる機会が多いですね。

――今シーズン、長谷部選手自身のコンディションはいかがですか? チームの調子に左右されることなく、良い状態をキープ出来ているように見えます。

長谷部 そうですね。僕自身、体調的にもメンタル的にも良い感じでプレー出来ていると思っています。それがプレーにも反映されているのかもしれませんね。

――監督からの信頼も随分厚いように感じられます。

長谷部 今シーズンは先発で使ってもらえることが多いので、僕自身もそう感じるところはありますね。ただ、フル出場した試合は決して多くないですし、攻撃面ではまだまだ評価されていないのかなと思う時もありますよ。

――今後は「攻撃面でも俺は行けるぞ」というところを見せていくと?

長谷部 やっぱり、その部分をアピールしていかないといけない。そのためには得点やアシストにもっともっと絡んでいきたいと思っています。

――結果という部分への意識が高まっているということですね。

長谷部 そうです。こちらではそういった部分がすごく求められるし、逆に結果を出せば認めてもらえるというところがありますから。そこは強く意識していますね。

――シーズン後半戦のヴォルフスブルクの展望を聞かせてください。

長谷部 もちろん優勝を狙うという意識は強く持っています。勝ち点差はそれほど離れているわけではないし、今のブンデスリーガは実力的に拮抗しているので、どのチームにもチャンスはあると思うんですよね。ここ2年、僕らは後半戦で強さを発揮してきましたから、今シーズンもそれを再現して、昨シーズン記録した10連勝に負けないくらいの勢いを見せたいですね。

アンセムを聞いた時は体が震えるような感じ

[写真]=Getty Images

――続いてチャンピオンズリーグについて聞かせてください。今シーズンは第1節のCSKAモスクワ戦で初めてその舞台に立ちました。

長谷部 初出場した試合はピッチに立っていた時間も短かったし、ボールにも触っていないですから何とも言えないんですけど、やっぱり、あのチャンピオンズリーグ独特の雰囲気を感じ取れた時はうれしかったですね。

――リーグ戦と比べると会場の装飾も違うし、独特の雰囲気がありますよね。

長谷部 特にアウェーでの試合はドイツと全然違いました。ロシアとかトルコとか文化が違うところで試合をしたり、マンチェスターではオールド・トラッフォードでプレー出来た。日常では味わえない経験が出来たこともすごく良かったです。

――オールド・トラッフォードのピッチ上でチャンピオンズリーグ・アンセムを聞いた瞬間は?

長谷部 僕としてはあの試合が本当の意味でのチャンピオンズリーグデビューだったし、満員のスタジアムでアンセムを聞いた時は体が震えるような感じでしたね。

――しかも、そのマンチェスター・U戦では初アシストをマークしています。

長谷部 自分としても良いアシストが出来たと思っています。それに、個人的には手応えを感じることも出来た試合でした。ただ、それだけに不運な負け方をしてしまったのが本当に残念ですね。

――以前インタビューをさせてもらった時には、自分の力を試すためにもマンチェスター・Uやバルセロナと真剣勝負がしたいと言っていましたよね。実際に対戦してみて感じた手応えは?

長谷部 マンチェスター・Uとは浦和時代に親善試合で対戦しましたが、真剣勝負のチャンピオンズリーグで戦うマンチェスター・Uは全然違いましたね。とはいえ、以前の対戦では「ちょっとかなわないな」という思いが本音だったんですけど、僕もドイツで成長している中で、本気のマンチェスター・Uと戦っても「十分に出来る」という感覚を得ましたね。

――2007年のクラブ・ワールドカップでミランと対戦した時の心境と比べてどうですか? ミランとの試合後は、相手との差を痛感したと言っていたのが印象的でしたが。

長谷部 本当にそうでした。あの時感じたのは絶望感というか失望感というか、「こんなにレベルが違うのか?」と思ってしまって。ただ今回、そういった気持ちには全然ならなかったですね。むしろ、「十分にやれるな」と思いましたから。

オランダはやりやすい相手だと思っていた

[写真]=Getty Images

――さて、今年はいよいよ、ワールドカップ・イヤーです。今回の南アフリカ大会が19回目の開催になりますが、長谷部選手が初めて見たW杯は何年の大会ですか?

長谷部 リアルタイムで初めて見たのは94年のアメリカ大会ですね。最後に(ロベルト)バッジョがPKを外したシーンが印象に残っています。ただ、父がビデオに録画していたこともあって、メキシコ大会(86年)での(ディエゴ)マラドーナの5人抜きとかは何度も見ましたね。

――お父さんはサッカーを見るのが好きだったんですね。

長谷部 そうですね。家にはW杯のビデオがずらりとありました。ただ、父はサッカー経験がほとんどないので、なぜたくさんのビデオを録っていたのかは分からないんですけど(笑)。

――その他に印象に残っている大会はありますか?

長谷部 やっぱり、生で見た02年大会は印象に残っていますね。日本対ロシア、サウジアラビア対カメルーンの2試合を見ることが出来たんです。

――日本戦の盛り上がりは本当にすごかったですよね。

長谷部 ロシア戦はゴール裏で見ていたんですが、僕も(小野)伸二さんの「ONO 18」っていうユニホームを着て完全にサポーターの一人になって応援してましたね(笑)。

――これまでの大会で印象に残っている試合を一つ挙げると?

長谷部 98年のフランス大会決勝。(ジネディーヌ)ジダンのゴールシーンが印象深いです。2点ともジダンにしては珍しい、ヘディングでのゴールでしたし。ブラジルが優勝すると思っていたんですけど、あの時のフランスは本当に強かった。

――南アフリカ大会、日本はオランダ、カメルーン、デンマークと同じグループEに振り分けられました。それぞれのチームの印象を聞かせてください。

長谷部 まずオランダは、個人的に、第1ポットの中では1番目か2番目にやりやすい相手だと思っていたんです。ドイツでのプレー経験がある選手も多いので、実際に対戦したことがある選手も多いですが、日本人でも対等に戦える相手だと思うし、昨年9月に親善試合をやっているので、そこで得た手応えもありますから。僕としては良い相手とやることになったな、と思っています。

――それは頼もしい。では、初戦で対戦するカメルーンについては?

長谷部 僕自身はこれまでにカメルーンと試合をしたことはないんですが、完全にアフリカらしいチームというか、身体能力が高いチームという印象があります。それに、フランス人監督が指揮を執っているということで、フィジカル面だけでなく、戦術面も成長していると思います。アフリカのチームはディフェンスラインの裏を突かれると守備が崩れるイメージがありましたが、そういう部分も修正されている感じですよね。

――ポール・ル・グアン監督は、7連覇を達成したリヨンの基盤を築いた人物ですからね。

長谷部 手強い相手ですよね。ただ、トーゴやガーナとの試合を経験したことで、僕らもアフリカ勢の球際の強さは体感出来ているので、今振り返ってみるとアフリカ勢との親善試合はすごく意味があったと思います。それに、いくらフランス人監督が指揮を執っていると言っても、アフリカのチームによく見られる、集中力が欠ける瞬間は間違いなくあると思うので、そこも狙っていきたいですね。

――3戦目はデンマークが相手です。

長谷部 現時点ではデンマークについて詳しく知らないんですが、失点は少ないし、前線には(ニクラス)ベントナーがいる。それに、予選ではポルトガルやスウェーデンと同じグループを1位で突破していますから注意が必要ですよね。

――話を聞いていると、グループリーグ突破に向けてかなり自信を持っているようですね。

長谷部 自信はあります。僕らが目指しているところはグループリーグ突破ではないですし、僕は行けると思っていますけどね。

――では最後に、日本が本大会でベスト4以上の成績を残すために今後すべきことを聞かせてください。

長谷部 この先の6カ月で劇的に何かが変わるということはないと思うんです。だから、とにかくW杯に照準を合わせてコンディションをベストの状態に持っていくこと。けがをしないことはもちろん、メンタル、体、すべてのコンディションを最高レベルに持っていく。今年の6月を迎えるに当たって、それが何よりも重要だと思っています。

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