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「ザックのサッカー狂時代」前編

2010年09月03日 14:39

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[インタビュー|CALCIO2002 1999.9月号(No.10)掲載]

ザックのサッカー狂時代
「今、私が望むもの、それはスクデット2連覇です」

(アルベルト・ザッケローニ/ミラン)
(アルベルト・ザッケローニ/ミラン)
 

チェゼナティコ――。アドリア海に面するこのひなびた海辺の町こそ、昨シーズンのスクデット監督、アルベルト・ザッケローニの休息の地である。厳しいプレッシャーから解放され、生まれ故郷で初心にかえるザック。しかし根っからのサッカー狂にヴァカンスなど必要ない。チェゼナティコの太陽のもと、ザックの頭のなかにはすでにミランを連覇に導くための新たな戦略が描かれている。

文=マッテオ・マラーニ

 チェゼナティコのプルチーニでサッカーを教え始めてから15年間。彼は誰に対しても常に親切に接してきた。そして、スクデットを獲得した現在でもその態度に変化は見られない。多くのスクデット監督が陥る“高慢”な罠には決してハマらない男なのである。そんな男、サックが語る。

「シンプルであること、これはトラパットーニ(フィオレンティーナ監督)から学ぶべきことです。勝利者ヅラはしないほうがマシです。遅かれ早かれ負けるときは来るのですから。その時は誰も同情してくれません。スクデット監督の記事は新聞の一面を飾ります。ただし、それは監督が素晴らしいからではなく、スクデットが重要だからなのです」

“シンプルさ”と“控えめさ”こそ、ザックがスクデットを勝ち取るための最大の武器であったのかもしれない。

「近年のミランは4-4-2のシステムでスクデットを勝ち取ってきたチームです。ところが私は選手に3トップでプレーするよう要求しました。3-4-3は私がウディネーゼで実験したシステムです。プロヴィンチャ(地方の小都市)で成功してもビッグクラブで成功するとは限らないのです。選手たちが私のシステムに不満を持ったのは当然のことでしょう。選手たちは文句こそ言いませんでしたが、当初はなかなかこのシステムに順応できなかったのです。プロヴィンチャ出身の監督がビッグクラブの監督に就任すると、選手たちにある種の偏見が生ずるのも当たり前のことです。『こいつ、オレたちに何を教えるつもりなんだ』とかね」

 チェゼナティコの港には暑い夏の太陽が降り注いでいる。戦争で濁ったアドリア海にも平穏さが戻り、観光客が戻ってきた。

「チェゼナティコは私の大地です。私にとっては“救いの場”なのです。シーズン中でも月曜日はここで過ごすようにしています。充電の場なのです。あそこにレストランがあるでしょう? あの場所でザッケローニ家族のチェゼナティコでの生活が始まったのです。私たち家族はバールの2階に住みました。そして、その後、改造してホテルとレストランになったのです。ホテルは父がインテルの熱狂的ファンだったことから“AMBROSIANA”(アンブロジャーナ、ミラノの同意語)という名前で呼ばれたのです」

「口数は少ないけど行動でチームに模範を示してくれた
ベテラン選手抜きにはスクデットは語れないでしょう」


インテルからの誘いがあったでしょう? インテリスタの家族の一員としてはうれしかったのでは?

ザッケローニ(以下Z)――そういう話はしたくないですね。インテルの会長に失礼だし、それに私の“代わり”に監督になった人もきっといい気はしないでしょう。

ロナウドみたいな“怪物”がいるチームの監督をやってみたいと思いませんでしたか?

Z――ロナウドにしてもマラドーナにしても、あんな選手を持った監督はラッキーだと思いますよ。私のサッカーは“戦術”中心だとよく言われます。でも、実際は個人の能力を重要視してきたつもりです。3トップも“個人技”の発想から生まれたものなのです。ロナウドは世界最高の選手です。とくにインテルに加入した97-98シーズンのロナウドは本当にすごかったですからね。

ミランはあなたにどのように接近してきたのですか?

Z――ガッリアーニ(ミラン副会長)がいきなり電話してきたのです。びっくりしましたよ。最初は冗談かと思いました。ミランの監督に就任するなんでことはまったく予期していませんでしたからね。カペッロがミランの指揮を執るものと確信していましたし。事務所にボーナスを取りにいったときに電話があったのです。「よかったらうちに来ないか?」と誘われました。

それまでのミランの2年間の成績から見て嫌な予感はしませんでしたか?

Z――ミラン内部にそれまで何が起こっていたのか、監督に就任した日から考えないように努めました。余計なことを考えず、ありのままのミランを見つめた方がいいと思ったからです。人は“新旧交代の1年”とか“準備のための1年”と言っていましたが、中小クラブならともかく、ミランのような超ビッグクラブに“準備の1年”なんて存在するわけがありません。ミランは勝利を義務づけられたチームですからね。

そのとおりになりましたね。

Z――ベテラン選手の行動には頭が下がる思いです。口数は少ないけど行動でチームに模範を示してくれたベテラン選手抜きにはスクデットは語れないでしょう。ロッシ、アルベルティーニ、マルディーニ、コスタクルタなどは練習場に真っ先に到着し、一番最後に去るんですよ。若い選手の手本になってくれました。ベテランと若手がうまくかみあったシーズンでした。ベテランは新たなモチベーションを持ち、若手は将来への野望が高かったシーズンと言っていいでしょう。

あなたのサッカーの理想とは何ですか?

Z――理想のサッカーは3つあります。まずプラティニがプレーしていたころのフランス代表のひし形の中、それにサッキ時代のミランのディフェンス、そしてゼーマンの攻撃です。サッキの防御とゼーマンの攻撃を研究した結果たどり着いたのが“私の”3-4-3なのです。

でも今では、「私の3-4-1-2」でしょう?

Z――おっしゃる通りです(笑)。シーズン土壇場(シーズン終了前の6試合)で3-4-1-2のシステムに変えましたからね。

ベルルスコーニ(ミラン会長)が「システムを変えろ」と指示したという話は本当?

Z――戦術に関する決断はすべて私です。

スクデットを決めた日の夜、ベルルスコーニは『プレッシング』(TVの人気サッカーニュース番組)に出演して選手を讃えましたが、あなたのことにはふれなかったのはなぜでしょうか?

Z――残念ながら(その番組を)見ていませんので……。

もっとも、あなたもTVでベルルスコーニの名前を出しませんでしたよね。サッキにしてもカペッロにしても真っ先にベルルスコーニに礼を言っていましたけど。

Z――たった30秒しかなかったんです。まずは選手たちのことを話すべきでしょう。実際にプレーした選手たちが主役ですから。

 

 【後編へ続く】

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