プレミアム特集 インタビュー&フォーカス記事
「28歳のリスタート」 ジョー・コール
2010年08月25日 23:25
[インタビュー|ワールドサッカーキング 10.09.02(No.155)掲載]
28歳のリスタートジョー・コール(リヴァプール/イングランド代表)
チェルシー退団を機に慣れ親しんだロンドンを離れ、ジョー・コールはリヴァプールでの挑戦を決意した。彼の口からは新天地への大きな期待だけでなく、代表への愛情ゆえの厳しい言葉も飛び出した。
インタビュー・文=ロジャー・ジョンソン
写真=FOTOSPORTS

昨シーズンの成績不振を受けてラファエル・ベニーテス監督を解任。多額の負債を抱え、オーナーの交代も決定的。そんな改革の真っただ中にあるリヴァプールに、頼れる男が加入した。若くして天才ともてはやされながら十分な出場機会を得られず、契約満了を機にチェルシーを退団していたジョー・コールだ。資金難にあえぐリヴァプールにしてみれば、この才能溢れるアタッカーを移籍金ゼロで獲得出来たのは願ってもないことだった。
コールにとって、2010-11シーズンは特別な意味を持っている。新天地での再スタートという点はもちろんだが、南アフリカ・ワールドカップで惨敗を喫し、改革に踏み切るべき時期に来ているイングランド代表の一員としても一層の奮起が求められている。コールは代表チームの戦いぶりを「最低だった」と自ら一刀両断し、辛しん辣らつな発言を並べている。だが、これもすべては代表チームへの愛情ゆえの発言だろう。彼は低迷する代表チームに改革をもたらす資質を備えている。もちろん、そのためには新天地リヴァプールで誰もが納得するだけのパフォーマンスを見せる必要がある。
トーレスの良きアシスト役になりたい
チェルシー退団が決まってすぐ、君の元にはトッテナムやアーセナル、マンチェスター・ユナイテッドなどから誘いがあった。その中から、あえて昨シーズン不調だったリヴァプールを選んだ理由は?
コール──新監督のロイ・ホジソンとじっくり話し合い、監督がどんなチーム作りを目指しているかを聞いてその考えに共感したんだ。リヴァプールの監督は何年もの間、スペイン人やフランス人だったから、英国人監督によってチームに新風が吹き込まれるんじゃないか、とも思った。確かに昨シーズンは7位だったけど、迷いはなかったよ。
南アフリカW杯の期間中、スティーヴン・ジェラードやジェイミー・キャラガーとリヴァプールについて話すことはあった?
コール──大会期間中は試合に集中していたから、あまり聞き出す時間がなかったんだ。もちろんW杯が終わってから、ゆっくり話を聞かせてもらったけどね。話を聞いてリヴァプールのスケールの大きさに圧倒されたし、僕もそんなビッグクラブの一員になりたい、そこで何か特別なことを成し遂げたい、という気持ちが強くなっていった。もちろんジェラードたちがいることも、リヴァプールを選んだ大きな理由の一つだ。
チェルシーではたくさんのビッグネームとプレーしてきたけど、リヴァプールでは誰とのプレーを一番楽しみにしている?
コール──(ぺぺ)レイナ、(グレン)ジョンソン、キャラガー、ジェラード、(ディルク)カイト、そして(フェルナンド)トーレスにかくすごい選手ばかりだ。リヴァプールに決めた理由の一つは、彼らと一緒にプレーしたいという思いからなんだ。中でもトーレスは別格だ。彼がリヴァプールに加入した時からずっとプレーを見てきたけど、間違いなく世界一のストライカーだね。僕の役割はチャンスメークだから、彼の良きアシスト役になれるよう頑張るよ。チェルシー時代は(エルナン)クレスポと仲が良くて、プレーの呼吸も合っていた。トーレスとも同じような関係を築きたいね。
クラブを変えたことで生活環境も大きく変わった。ロンドンっ子の君がリヴァプールで暮らすのは大変なんじゃない?
コール──そうなんだよ。娘が生まれたばかりだし、引っ越しも大変だった。でも、家族は理解してくれているから問題ないよ。入団が決まった直後の周囲の反応はものすごくポジティブだったし、ファンも温かく迎えてくれたから、特に心配はしていない。移籍したらどんなことにでも積極的に参加する。それが新しいチームや土地でやっていくための秘訣なんだ。
リヴァプールには、ずいぶんと好印象を持っているようだね。
コール──リヴァプールのファンは選手をとても大事にしてくれるから、彼らのため、そしてクラブのためにタイトル獲得に貢献したいという気持ちが強まっているよ。今までロンドンから出たことがなかった僕にとっては引っ越し自体が大きなチャレンジだったけど、人生にはチャレンジが必要だ。ましてリヴァプールから「うちに来てくれないか」なんて言われたら、どんな選手でも絶対に「イエス」と答えるよ。

左:コールは新監督のホジソン、同じく新加入のウィルソン(左)、ヨヴァノヴィッチとともに入団会見に臨んだ
右:ジェラードとトーレスの存在がリヴァプールへの移籍を決断する大きな要因に
敗戦の理由はチームの出来が悪かったから
それにしても、W杯は本当に残念だった。決勝トーナメント1回戦でドイツに1-4と敗れてしまったけど、グループリーグでも苦戦を強いられたよね。何が原因だったのだろうか。
コール──ここでは詳しく話せないんだけど、南アフリカではいろいろな問題が浮上していてね。僕たちは、これからそういう問題を解決していかなければならない。敗戦の理由は、はっきり言ってしまえばチームの出来が悪かったから。W杯直前に親善試合が6試合あったけど、どの試合も満足なプレーは出来ていなかった。
ドイツ戦では、フランク・ランパードの"幻のゴール”が話題になった。
コール──忘れちゃいけないのは、負けた人間が文句なんて言っちゃいけない、ということ。僕たちのプレーは最低だったんだ。W杯で他の強豪国を見ていて、イングランドのレベルがいかに低いかを改めて実感したぐらいさ。
いわゆる“黄金世代”が何も達成出来ないまま終わってしまいそうだ。プレミアリーグに大勢の外国人選手が流入してイングランド人選手の出場機会を奪い、それが代表チームの衰退につながったという意見もあるけど、君はどう思っている?
コール──逆に聞くけど、将来有望なイングランド人プレーヤーは育っていると思う? 正直言って、僕にはそうは思えない。僕がウェストハムでプロデビューした頃のプレミアリーグは、世界で5番目ぐらいのリーグだった。でも、今やプレミアは世界一のリーグだ。君が言ったとおり、外国籍のスター選手が次々に加入し、若手はデビューすらままならない状況だ。プレミアは本当にタフで競争が厳しいから、外国人選手を加えなきゃ戦えない。どのクラブも若い選手を育成している余裕なんてないんだ。こう考えると、世界一のリーグになった代償を払わされているのかもしれないね。U-17代表チームがヨーロッパ選手権で優勝したぐらいだから優秀な選手もいるんだろうけど、それでもプレミアのトップクラブで若手がファーストチームに入れる可能性はほとんどないんだ。
今後、イングランド代表はどのように変わるべきだろう。
コール──僕自身は代表の一員であることを誇りに思っているし、代表チームは僕にとって大事な存在だ。でも、悲しいけど今のイングランドはふがいないチームに成り下がってしまった。これからどうすればいいのか、というのは僕が口出しすることじゃないけど、プレースタイルを根本から変えなければ、これからも低調なチームのままだと思う。僕がこれまでプレーしてきたチームは、代表も含めてどこも同じ。試合になるとまず相手FWを封じることを考える。それじゃあ世界では通用しない。世界王者になりたかったら、ボールコントロールやパスといった技術を磨くことが必要なんだ。
君自身は高いテクニックの持ち主だよね。
コール──僕はそれらの要素が大事だと教えられてきたし、他の選手も同じように指導されてきたはずなんだけど。育成に力を入れるのであれば、そういう指導方法も改良していく必要があるよね。

左:今年3月に娘のタチアが生まれたばかりで「引っ越しが大変だった」
右:育成の名門ウェストハムで成長し、98-99シーズンにデビューを飾ったコールは、当時からテクニカルな選手として注目を集めていた
赤いユニホームを着ると何だかくすぐったい
君はまだ28歳だけど、選手としてのキャリアは長い。10代だった1990年代半ばと今を比べて、イングランドサッカーはどんな部分が変わった?
コール──イングランドサッカー界はこの10年間で大きく様変わりした。シーズンを重ねるごとにサッカー関連で動く金の額が大きくなり、それに伴って選手たちのプロ意識も高まってきた。もちろん、ライフスタイルも変わった。ウェストハム時代は80年代からプレーしている先輩が大勢いたけど、みんなこれでもかってぐらいの大酒飲みだったよ(笑)。プロ意識がないとは言わないけど、今と比べたら雲泥の差だ。今の若手と話していると、ナイトクラブで遊ぶ選手なんていないみたいだし、みんな体調管理に気を使っている。僕たちの時代はそんなこと考えもしなかったし、あの頃の僕は“節制”という言葉すら知らなかったぐらいだからね(笑)。こういった点では今の方がずっと進歩していると思うよ。
リヴァプールの話題に戻ろう。新たな本拠地、アンフィールドについての印象は?
コール──05年のチャンピオンズリーグ準決勝でアンフィールドのピッチに立った時には、背筋がゾクゾクするほど興奮したのを覚えている。あんな雰囲気の中で毎週プレー出来るんなら、選手として本望だよ。
君がリヴァプール入団を決めた直後に、ジェラードも残留を表明したよね。
コール──僕の加入が残留を決断した理由の一つだったらうれしいけどね(笑)。彼のようなトッププレーヤーになると毎年ビッグクラブからの誘いがあるけど、リヴァプールの将来を考えての決断だったんだと思う。
ジェラードとの共演も楽しみなんじゃない?
コール──彼とは代表で10年ほど一緒にプレーしているから、お互いにどんなプレーをするか、どんな才能を持っているかは十分に理解している。一緒にプレーするのが楽しみだよ。どのポジションでもいいけど、出来れば彼と一緒に中央でプレーして、どちらかが攻撃参加したらもう一方は後方をフォローする、という関係が築けたらと思っているよ。
サイドMFとしてプレーする可能性もあるよね?
コール──ここで戦術の詳細をしゃべってしまうわけにはいかないけど、僕は左右どちらでもオーケーさ。監督もそれは分かっているはずだし、最終的には監督の判断に任せるしかないよね。
最後にホジソン新監督について聞かせてほしい。監督の印象はどうかな?
コール──話し合った時にポジションやシステムについても聞いたけど、僕としてはチームの一員として構想に入れてもらえさえすれば何も文句はない。監督はチームをうまくまとめてくれるだろうから、その先は選手の仕事だ。全員が一丸となって戦い、チームスピリットを築き上げていくことが大事だね。選手のクオリティーを考えれば、リヴァプールが優勝する可能性だって十分にある。そうやってタイトルを争うような戦いを続けていけば、もっともっと成長出来ると思っているよ。
背番号は10番だ。この番号は君にとってどんな意味がある?
コール──リヴァプールのユニホームなら何番でも構わなかったけど、とにかく10番をもらえて光栄に思っているよ。僕はリヴァプールの全盛期を見て育った世代だから、このクラブの10番の持つ意味は分かっているつもりだ。赤いユニホームを着るのはまだ何だかくすぐったいような気もするけど、じきに慣れるさ。早くシーズンの開幕を迎えて、このユニホームでプレーしたいね。
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