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ベッカム「今でも99年、バイエルン戦の逆転劇を思い出すと鳥肌が立つ」

2013.02.11

ワールドサッカーキング』2009年0122号(No.106)より一部再掲
インタビュー・ライブラリー」では、過去にワールドサッカーキングやカルチョ2002などで掲載した選手や監督のインタビューを改めて紹介。懐かしい写真とともに、お楽しみ下さい。
ベッカム

今回のインタビューでは、君のキャリアについてじっくり聞きたいと思う。11歳で『ボビー・チャールトン・サッカースクール』に入学し、その後マンチェスター・ユナイテッドに練習生として入団。19歳でプレミアリーグにデビューして以降、今日まで成功の人生を送ってきたよね?

ベッカム スタートから悪いんだけど、僕は過去を振り返るのが苦手でね。常に“今”を見ているし、選手として更に上達することにしか興味がないんだ。これまで、僕は本当にいろんな経験を積んで、目標を達成してきた。ユナイテッドとマドリーでプレーし、イングランド代表のキャプテンマークも巻くことも出来た。だけど、そんな自分の過去にあまり興味がわかないのさ。

前向きな姿勢は確かに素晴らしいけど、それは思い出したくない記憶があるからでは? 例えばフランス・ワールドカップでの退場劇とか……。

ベッカム いいかい、物事は視点を変えると違って見えることがあるんだ。つまり、単なる失敗と思われていた出来事が、後で成功のきっかけだったとわかったりするわけさ。例えばあの試合だけど、終了後にキャプテンのトニー・アダムスがやって来て、「君と一緒に代表でプレー出来ることを誇りに思う」と言ってくれた。アダムスは苦い経験が選手を成長させるということを知っていて、勇気付けてくれたんだ。彼の大人の対応は、その後の僕にとって大きな力になったよ。

アダムスの言葉が励みになった?

ベッカム そう、彼のおかげで「もう一度、この舞台に戻ってくるぞ」と奮起してプレーを続けることが出来たんだ。

しつこいようだけど、アルゼンチン戦の退場劇は心の痛みとして残った?

ベッカム まあ……少しはね(苦笑)。でもユナイテッド・サポーターのおかげで立ち直りは早かったよ。オールド・トラッフォードでは、CKを蹴りに行く度、サポーターが立ち上がって僕の名を呼んで、大声援を送ってくれた。それが2年も続いたんだから、どれだけ勇気づけられたことか……。すべてはクラブとサポーターの応援のおかげさ。

1998年W杯から1年後、“トレブル”(3冠)を達成した君は、それまでの批判をはね退けた。中でも印象深かったのは“バルセロナの夜”だろう。ロスタイムに大逆転劇を演じて、伝説を刻んだね。

ベッカム 普通、シーズン中には良い日も悪い日もあるものだけれど、あの年の僕らは一度も緊張感が緩まなかった。充実感に満ち溢れ、次々とタイトルを手にして……本当に信じられなかったよ。中でも最高だったのが、君の言うとおりチャンピオンズリーグの決勝だった。バイエルン相手に負けていた試合を、最後の3分間でひっくり返したんだからね。

さっき、君は「過去は振り返らない」と言ったけど、この試合は別みたいだね。

ベッカム まあね(笑)。正直言って今でもあの試合を思い出すと鳥肌が立つんだ。僕らは全身全霊を傾けてチームに尽くしてきた。一緒に生活し、成長し、共通の目的を持った集団だったんだ。他のどのチームよりもタイトルを取りたいという気持ちが強かった。それが結実したのが、あの“バルセロナの夜”なのさ。


ベッカム

そして迎えた2002年W杯。誰もが君を大会の主役と予想していた。ところが、因縁のアルゼンチン戦には君のPKで勝利したものの、ブラジル相手に敗退。やはり大会前に負った足の怪我が相当響いたのかな?

ベッカム 足の具合は理想的とは言えない状態だったけど、何が原因で負けたのかは分からないというのが、今でも正直な気持ちなんだ。ブラジル相手に僕らは果敢に攻めた。だけど最後は微妙な差で勝利を逃してしまった……。

一流のタレントを擁しながら、大舞台でのイングランドはファンに失望を与え続けているね。

ベッカム 全くだ。僕もすごくガッカリしているんだよ。イングランドには素晴らしい選手がそろっている。一流のチームなんだもの、勝てる試合は確実に勝ち抜かなきゃ。敗退が決まった時は、打ちひしがれた気分になってひどく落ち込んだよ。

03年、誰もが驚いたR・マドリーへの移籍。アレックス・ファーガソン監督との確執が原因だと言われているけど、移籍を後悔はしなかった?

ベッカム 監督の行動は全く理解できなかったよ(編集部注:敗戦に怒ったファーガソンが控え室でスパイクを蹴り上げたところ、ベッカムの顔に命中してしまった)。あんなことになるなんてね。だって彼は僕の父親みたいな存在だったんだ。僕のキャリアを気付いてくれた恩人で、ずっと尊敬できると思っていたのに……だけど、これもサッカーの世界じゃよくあることさ。若い頃は他の選手同様、心の底から尊敬していたし、恐れてもいた。それが監督の指導力というものなんだろうな。目標を達成するため、選手の潜在能力をギリギリまで発揮させる。それには一種の怖さなり威厳がないと、誰もついてこないものね。

R・マドリーでは世界のトッププレイヤーと一緒だった。ジネディーヌ・ジダンやルイス・フィーゴ、ロナウドといったメンバーがいながら、タイトル獲得は在籍最後のシーズンだけだったね。

ベッカム 無冠のままスペインを離れるなんて、惨め過ぎるし、仮にそうなってたらキャリアに大きな穴が開いていただろうね。リーグ優勝を果たした夜、マドリッドで体験したこともすべてが走馬灯のように脳裏を駆け巡ったんだ。中でも、ファンの声援はやはり大きな財産だった。マドリーのファンは当初、ジダンのようなスーパープレーを僕に期待していた。でも、同じことをやれと言われても無理だ。それでもファンが僕を支持してくれたのは、常に全力で戦う姿勢を崩さず、懸命に練習に打ち込んでいたからだろうな。

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