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『青の革命』―なぜチェルシーは変わらなければならないのか?

2012.12.06

ワールドサッカーキング 1220号 掲載]

 

クラブを初の欧州王座に導いた指揮官の《解任劇》。
新たに迎えられた元ライバルクラブの指揮官。
だが、決断の末に待っていたのは困難の日々だった。
指揮官交代後、リーグ戦では3戦未勝利。
チャンピオンズリーグでは史上初となる前年王者のグループリーグ敗退が決定した。
アブラモヴィッチ・オーナーの描く《理想像》に向け、
断行された《青の革命》は成功に至るのだろうか。

写真=フォトスポーツ

問われる《哲学》 チェルシーに求められるもの

「RAFA OUT!  RAFA OUT! 」

 

 ラファエル・ベニテス体制の初陣となった11月25日のマンチェスター・シティー戦。スタンフォード・ブリッジには、新監督への辛辣なメッセージを掲げるサポーターの姿があった。

 

「私がリヴァプールにいた頃のこととライバル関係は理解している。たが、ファンはチームとともに存在するもの。うまくいけば、彼らはこれからの試合で私とともにいてくれるだろう。私はプロとしての仕事を全うするし、勝とうとトライする。ファンの何人かは、それが自分のチームをサポートするやり方ではないと理解するだろう。私がしっかりと仕事をして、我々が勝利を手にするなら、彼らが支えてくれると私は信じている」

 

  スコアレスドローとなった試合後、指揮官は、この日、自らを迎え入れたサポーターの反応についてそう表現した。

 

 クラブを史上初の欧州王者へと導いたロベルト・ディ・マッテオの電撃解任。「心の側にあるクラブの監督を務めたことは、とても名誉なことだった。チェルシーにとって初のビッグイヤーを掲げたことは、クラブの歴史における最高の記録であり、選手としても監督としても、これまでのキャリアで最高の瞬間だった。この思い出を私は一生大事にする」。

 

 去り際にチェルシーへの愛情をそう表現したディ・マッテオは、チェルシーサポーターに向け、次のようなメッセージを残している。

 

「スタンフォード・ブリッジで私がチームを率いていた間、無条件に最高のサポートをしてくれたチェルシーのファンに心から感謝したい。残りのシーズン、そして来シーズン以降も、彼らが多くの成功を手にできるよう心から願っている」

 

 300日に満たない在任期間。11月6日にマンチェスター・ユナイテッドの監督就任26周年を迎えたアレックス・ファーガソンは、ディ・マッテオからベニテスへの監督交代を受け、「ベニテスはラッキーだ。チームの成長に何の貢献もしていないのに、数週間後にはその経歴に『2度のクラブ・ワールドカップ制覇』と記せるようになるかもしれないんだからね」と皮肉を述べた。

 

 クラウディオ・ラニエリ、ジョゼ・モウリーニョ、アヴラム・グラント、ルイス・フェリペ・スコラーリ、フース・ヒディンク、カルロ・アンチェロッティ、アンドレ・ヴィラス・ボアス、そしてディ・マッテオにベニテスと、2003年にロマン・アブラモヴィッチがオーナーに就任して以降、チェルシーは9人目の指揮官を迎えたわけだが、ベニテスは今シーズン終了までの短期契約。その背景には、ジョゼップ・グアルディオラの就任を熱望するオーナーのもくろみが見え隠れする。ベニテスという新監督の選択には、グアルディオラの招へい失敗というリスクを鑑みた上での《保険》という意味合いも含まれているのだろう。

 

 だが、カンテラ出身で選手時代の長くをバルセロナで過ごしたグアルディオラは、《バルサの哲学》を知る監督として成功を収めたことを忘れてはならない。少なくとも、前述した9人の指揮官の中で、選手時代をチェルシーで過ごした人物はディ・マッテオただ一人だ。

 

 欧州制覇という確かな《実績》を残したこともあってだろう。ディ・マッテオは新加入のエデン・アザールとオスカル、そして2年目のフアン・マタを軸に、《既存のチェルシー》にエンターテインメント性を加えつつあった。ベニテスがオーナーの夢をかなえ得る人物か否かはさておくとしても、ペップ時代のバルサのように「エンターテインメント性を伴った勝利」を実現するには、少なくともまず、《チェルシーの哲学》を明確にする必要があるはずだ。

ーーー

 

苦戦の続くチェルシーは2013年にどのような補強をするのか? 気になるプレーヤーたちの去就は?

 

必見の特集とインタビューは、最新号【ワールドサッカーキング 1220号 】にて!

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