[ワールドサッカーキング 1101号 掲載]
「バルサには独自のスタイルとアイデンティティーが存在する。それは、監督が代わったからといって変わるものではない」シャビの言葉どおりバルセロナは今シーズンも変わらず勝ち星を重ねている。バルササッカーの体現者は“ティト・バルサ”をどのように分析しているのだろうか。
インタビュー・文=ホセ・フェリックス・フェルナンデス 翻訳・構成=高山 港 写真=ムツ カワモリ
誰が監督になってもバルサのコンセプトは不動なんだ
今シーズンはリーガ・エスパニョーラでもチャンピオンズリーグでも好スタートを切った。監督がティト・ビラノバに代わったことを懸念する声は全く聞こえなくなったね。
シャビ この結果は当然のことだと思っている。ティトは今シーズン、バルサにやって来たわけじゃない。ペップ(ジョゼップ・グアルディオラの愛称)と一緒に今のチームを作り上げて監督になったんだからね。
グアルディオラの後任にビラノバを指名したクラブの判断について、どのように評価している?
シャビ ペップが監督を辞任した時は驚いたよ。ただ、それ以上に驚いたのは、クラブがペップのアシスタントだったティトを監督にしたことだ。外部から有名な監督を連れてくるのではなく、バルサのカンテラから一貫してバルサのサッカーを教えてきた人物に信頼を寄せたことを俺は素晴らしい決断だと思っている。
ビラノバ監督のベンチからの指示で何か大きく変わったことはある?
シャビ ベンチからの指示は今までとほとんど変わっていない。俺たちのサッカーの基本にあるのは常にボールだ。ペップもティトもボールポゼッションの重要性を説いている。ボールをキープして攻撃的にプレーする。誰が監督になってもバルサのコンセプトは不動なんだ。
バルセロナのサッカーはあくまでボールポゼッションだという考え方に変わりはないということだね?
シャビ ボールポゼッションを高めてゲームをコントロールしていれば、遅かれ早かれ、ゴールは生まれるものさ。それがバルサのアイデンティティーだ。(ヨハン)クライフのおかげで、バルサにはフィジカルよりテクニックを優先すべきだという考え方が根づいている。このアイデンティティーが変わることはない。
じゃあ、ビラノバ体制になって変わったことはある?
シャビ さっきも言ったように戦術の基本的なコンセプトは何も変わっていない。
今シーズンは4─3─3システムを多く採用しているけど、これについてはどう思う?
シャビ 今のメンバーが4─3─3にふさわしいとティトが判断しただけのことさ。たとえ、今ペップが指揮を執っていたとしてもも同じ選択をしたと思う。
グアルディオラとビラノバの性格的な違いは?
シャビ ティトのほうが真面目かな。ペップに比べて口数は少ない。でも、ひとたび口を開けば、かなり直接的な言い方をする。確信を持った話し方をするんだ。自分のやり方に自信を持っている証拠だと思うよ。
ビラノバ体制のバルセロナが目立った変化がないということは、意地悪な見方をすると、進化が止まってしまったということにはならない?
シャビ ちょっと待ってくれ。俺たちは進化しているからこそ勝ち続けているんだ。今までと同じやり方で結果を残せるほどリーガやチャンピオンズリーグは甘くない。ティトはもちろんだけど、俺たち選手ももっと良いサッカーをするためにどうすればいいかを常に考えている。つまりディテールの変化は毎試合起こっているんだ。