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【静岡ダービー直前企画】澤登正朗(元清水)×名波浩(元磐田)「絶対に負けられない試合がそこにはある」

2012.10.03

Jリーグサッカーキング11月号掲載】

 

 

オレンジのユニフォームを身にまとい、“王国・清水”を牽引した澤登正朗。サックスブルーのクラブに“黄金時代”をもたらした名波浩。Jリーグ草創期からチームを代表する司令塔として君臨し続けた両者が語る静岡ダービーの歴史、そして知られざるエピソードとは。実際に戦った者にしか持ち得ない記憶を紐解き、ライバル対決の歴史を振り返る。

 

インタビュー・文=青山知雄(本誌編集長)

 

写真=兼子愼一郎

 

個人的には本当に相性のいい相手だと思っていました(名波)

 

当時、どんな思いで静岡ダービーに臨まれていたのでしょうか。

 

澤登 調子が良くても悪くても、ダービーになると変わるというか、モチベーション的に全然違う試合でしたね。本当はすべての試合が同じでなければいけないんですけど、どうしても違った位置付けの戦いにはなりますね。もともと静岡にはヤマハ発動機と本田技研という実業団クラブがあって、その2つを差し置いて清水エスパルスがJリーグに参戦したので、地域的にも盛り上がるんです。県西部はヤマハを母体にするジュビロ、中部地区は清水を応援している。名波も清水商高出身だから分かると思うけど、《サッカー王国》静岡の頂点を決める試合のような感じでした。

 

名波 確かにクラブを立ち上げた時のライバル関係が、そのまま1994年以降の試合にバックボーンとして存在していた感じですね。自分はジュビロのJリーグ参入から1年遅れて入ったんですが、94年以前から在籍していた人たちは、相当強い思いを持っていたようでした。実はプロ入りする時にエスパルスからも誘っていただいたんですが、静岡ダービーについて同様の説明を受けながら、ジュビロのほうが熱は強かったです。僕は清水商高出身だったんで、立ち位置が難しい感じはありました。

 

澤登 俺も高校(東海第一高/現東海大翔洋高)時代、ヤマハにはすごくお世話になってたんだよ。練習や練習試合に参加させてもらって。まだJリーグがなかった時代で、自分としてはヤマハに入るものだと思ってた。それだけ思い入れもあったから、複雑な気持ちはあったね。

 

清水にとって、磐田の存在はどう感じていたのでしょうか。

 

澤登 もちろん最大のライバルだったんですが、なかなか勝てなかったんですよね。苦手意識はなかったんですけど、結果的に最後はやられてしまう。何とかねじ伏せたい相手ではありました。

 

リーグ戦の初対決を制しましたが、そこからずっと磐田が勝ち続けています。

 

澤登 おそらく俺たちの「勝ちたい」という気持ち以上に、ジュビロの思いが上回っていたんだと思うんです。

 

名波 僕が95年にデビューしてから、しばらく負けていないんですよ。エスパルスの存在は常に意識していましたけど、個人的には本当に相性のいい相手だと思っていましたし、自分たちが主導権を握れていない時でも、何となく「エスパルスには勝てるんじゃないかな」という雰囲気はありました。延長になれば勝てるかなって。最初の頃ってVゴール勝ちが多いですよね。

 

澤登 こっちも毎回勝ちたいという強い気持ちで臨んでいたんだけどね。ダービーに負けると、本当にメンタルがドーンと落ちるから、気持ちを元に戻すには本当に大変だった。それだけその後のチーム状態に影響を与える試合だよね。

 

名波 基本的に内容は拮抗していて、差があるわけじゃないし、ポテンシャル的にもそんなに違いはなかったですよね。

 

澤登 うん、そうだね。

 

名波 だから1点差ゲームやVゴールが多いだろうし、やってて楽しい相手ではあったなという感じで。

 

澤登 トドメを刺すストライカーの違いはあったかも。

 

名波 それは確かにあったかもしれないですね。ゴンちゃん(中山雅史)、スキラッチ……あとは(藤田)俊哉も結構Vゴールを決めていたから。

 

澤登 エスパルスにもいいFWはいたけど、トニーニョにしても(長谷川)健太さんにしても、生粋のストライカーというタイプじゃなくて、チャンスメーカー的な存在だった。今から考えると、そういった部分があったのかもしれないね。

 

この盛り上がり方こそ本当のダービーだと思う(澤登)

 

チームの雰囲気はダービーに向けて盛り上がっていくものなのでしょうか。

 

澤登 選手もそう思っているし、サポーターもどんどん盛り上げてくれるんですよ。「絶対に負けるな」ってプレッシャーは感じていたんですけど、なかなか勝てなくて逆に申し訳ない気持ちでした。試合前日は横断幕が練習場を囲むように張られたりしますからね。

 

名波 僕たちもサポーターからのプレッシャーはありましたね。「エスパルスだけには負けるな」って。順位が1位でも残留争いをしていても、同じように横断幕が出てました。

 

澤登 この盛り上がり方がないとね。これこそが本当のダービーだと思うんですよ。県内で地域を分断して盛り上がるのは、静岡だけだと思いますから。

 

名波 静岡ダービーには、リーグ戦1試合以上の価値がありますよね。地域性が非常に強くて、Jリーグの理念である地域密着という点が非常に色濃く出るゲームだと思います。今は選手が入れ替わって少し変わってきた部分があるかもしれないけど、初期は県内出身者が両チームに多くて、その色は出てましたよね。

 

澤登 名波なんか「裏切り者」って言われたんじゃない?

 

名波 僕は藤枝で生まれたから、それほどでもなかったんですけど、俊哉とかマコ(田中誠)とかは清水で生まれ育ってジュビロに来てるから、結構キツイことを言われてましたね。

 

激闘 静岡ダービー Jリーグサッカーキング2012年11月号

Jリーグサッカーキング最新号

 9月24日発売のJリーグサッカーキング11月号は、伝統の静岡ダービーを大特集! 10月6日(土)に開催される大一番を前に、ジュビロ磐田、清水エスパルスの両クラブの思いを徹底的にクローズアップしました! 巻頭二大インタビューでは両チームのエースが登場。山田大記(磐田)と大前元紀(清水)の両選手がそれぞれダービーやライバルに対する意識を語ってくれています。また、チームへの思いが人一倍強いユース出身選手の言葉もピックアップ。山本康裕選手、エスパルスの山本海人選手のインタビューでは、生え抜きの2人ならではの熱い思いが満載。両チームの全選手に取材を敢行したダービーへのコメント集も要チェックです。

 また、今回はクラブとともに叩き続けてきたサポーターの方々にもフィーチャーしました。アンケートを実施した両クラブのサポーターが選ぶ静岡ダービー名勝負ベスト5の結果、そして直撃取材で聞いたダービーに懸ける思いを掲載しています。その他、両チームをよく知る豪華な面々も登場。澤登正朗さんと名波浩さんのレジェンド特別対談や、両チームでプレー経験を持つ山西尊裕さんインタビュー、山本昌邦さんと長谷川健太さんの元指揮官対談では、ダービーの歴史や知られざるエピソードが満載です。ぜひ、ご一読ください。

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