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【インタビュー】チアゴ・シウヴァ(パリSG)「僕にとってミランは我が家のようなものだった」

2012.09.28

ワールドサッカーキング 1004号掲載]
今夏、チアゴ・シウヴァは電撃的にパリ・サンジェルマンへの移籍を果たした。かつてミランに忠誠を誓った27歳のブラジル人は、どんな理由で移籍を決断するに至ったのか。渦中の男が、移籍の真相について正直に語った。
チアゴ・シウヴァ
インタビュー・文=ミシェル・デスラック 翻訳=石橋佳奈

 ほんの2カ月前まで、チアゴ・シウヴァはミランの覇権奪回に向けて意欲を燃やしていた。パオロ・マルディーニに「自らの後継者であり、世界最高のDF」とまで言わしめた27歳のブラジル人は、今夏まで確かにミランへの忠誠を誓っていたのだ。ところが、パリ・サンジェルマンの情熱的な誘いと莫大な移籍金によって状況は一変する。移籍のうわさは数度打ち消されながらも、ミランは最終的にこの守備の要を放出する決断を下した。そして今、T・シウヴァはパリSGのユニフォームを身にまとい、戦闘態勢を整えた。

 T・シウヴァはなぜ、パリへと旅立つことになったのか。主力の大量放出を続けるミランへの失望、フロントとの確執、あるいは多額の移籍金による誘惑。様々な臆測が流れる中、ようやく本人が電撃移籍の真相について口を開いた。

僕にとってミランは我が家のようなものだったからね

君のパリSGへの電撃移籍は、この夏のビッグサプライズだった。どんな経緯でパリへ行くことになったんだい?

チアゴ・シウヴァ 交渉は非常に複雑だった。パリSGから最初にコンタクトがあったのは6月。パリSGのレオナルドSDとミランの(アドリアーノ)ガッリアーニ副会長が話し合い、一旦は移籍交渉がまとまったも同然の状態だった。だけど、交渉の最終局面で(シルヴィオ)ベルルスコーニ会長が僕の売却を拒否したんだ。突然のことにかなり戸惑ったけど、その後はミランと2016年までの新契約を交わし、とても幸せな気持ちだったよ。ロンドン・オリンピックにも穏やかな気持ちで出発できたしね。僕はこれから先も続くミランでの挑戦に意欲を燃やしていたんだ。

そんな君がなぜパリSGへ?

チアゴ・シウヴァ オリンピックの準備に追われていた時にレオナルドから電話をもらい、「交渉を再スタートさせた。やはりパリへ来てほしい。今、君を獲得するために全精力を傾けている」と言われた。かなり動揺したよ。それからすぐミランの経営陣に呼ばれ、彼らが思うところをあれこれ伝えられた。すぐにミランに残ることが難しいと悟ったよ。クラブが財政面で問題を抱えていること、断れないほどの巨額なオファーがパリSGから届いていたことを説明されたからね。

ミランの態度が急変して、失望はしなかったの?

チアゴ・シウヴァ いや、状況は理解できた。サッカーはビジネスだしね。プレーヤーの立場としては、何が起きてもおかしくないと覚悟は決めているものだ。ミランは僕とともにズラタン(イブラヒモヴィッチ)も放出した。クラブがエースの売却に踏み切るということは、それほど事態が深刻だということ。ミランは僕やズラタンを売却して大きな利益を得た。ビジネスと考えれば利にかなっていると思うよ。

君自身はミラノを去りたかったのか、それとも残りたかったのか、正直な気持ちを教えてくれないかな?

チアゴ・シウヴァ 「契約が切れるまで残留したい」。それが自分の気持ちだと公言していた。僕にとってミランは我が家のようなものだったからね。3年間、とても幸せな時間を過ごしたよ。家族もミラノでの生活に満足していたし、クラブを変える理由はなかった。そもそも僕は報酬にひかれて所属クラブを転々とするような人間じゃない。ある場所で居心地の良さを感じていれば、クラブを変えようとは思わない。どちらかというと、移籍に慎重なタイプだと思っているよ。

僕がパリSGに移籍する上で、レオナルドの存在は絶大だった

君は今回の移籍で、破格の契約を結んだ。月給は78万ユーロ(約7800万円)と言われているけど、これは年俸に換算すると1000万ユーロ(約10億円)。世界で最も高額なサラリーを受け取るDFになったことについてどう思う?

チアゴ・シウヴァ 細かい数字は分からないけど、ミランよりもパリSGのサラリーのほうが好条件なのは確かだ。ただ、イタリアでの環境とサラリーにはとても満足していたんだ。僕はこれまで、お金でキャリアを選択したことは一度もないと断言できるよ。

では、移籍の決め手は何だったの?

チアゴ・シウヴァ 新しい冒険を始めることで、充実した日々を送れるかもしれないと思ったからさ。パリSGは野心に満ちていて、最近急激に力をつけているクラブだ。これから数年でヨーロッパの強豪の仲間入りを果たせるだけのポテンシャルを秘めている。軌道に乗るまではそれなりに時間が必要だろうけど、クラブの将来は明るいと言えるよ。

パリSGの最大の目標はチャンピオンズリーグ優勝だよね。これは可能だと思っている?

チアゴ・シウヴァ 当然だよ。そうでなければパリSGには来なかった。クラブが掲げるプロジェクトについては、レオナルドから明確に説明されている。だけど、すぐに結果を出せとは言われていない。僕たちは僕たちなりのペースで歴史を築いていくつもりだよ。

レオナルドやカルロ・アンチェロッティ監督との関係は良好なの?

チアゴ・シウヴァ もちろん。2人ともミラン時代に知り合って、どちらも自分が尊敬している人物さ。僕が09年にブラジルからやって来た時、彼らはまだミランにいた。アンチェロッティは指導者としての手腕はもちろん、選手にとって親しみやすい性格の持ち主だ。彼はいつもオープンで、ユーモアに富んでいる好人物だよ。レオナルドとは1年間だけだけど、ミラン時代に監督と選手の関係だった。彼は僕がミランに来るために尽力し、僕を全面的に信頼してくれているんだ。自分のヨーロッパでの成功は、彼のおかげだと言っても過言じゃない。僕がパリSGに移籍する上で、レオナルドの存在は絶大だったよ。

パリSG移籍から1カ月が過ぎたけど、クラブの印象はどうかな?

チアゴ・シウヴァ みんなパリに来たことを歓迎してくれたよ。ポルトガル語やイタリア語を話せる選手はとりわけ好意的に接してくれた。あと、ズラタンやレオナルド、アンチェロッティだっているから、何だかミランに戻ったような感覚に浸っているよ。今のパリSGはイタリアとブラジルがミックスしたようなチームなんだ。ミラン時代のように、ここでも活躍できるよう願っている。

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