インテルの長友佑都とヘルタ・ベルリンの原口元気。欧州のトップリーグで活躍する2人が昨年末、10代の選手向けのセレクションイベントに特別審査員として参加した。世界への挑戦を夢見る若いプレーヤーたちを間近で見た2人が、彼らに送ったメッセージとは?
全3回でお送りする連載第一弾のテーマは『スピード』。世界の厳しさを知る長友と原口に、スピードの重要性や走力を伸ばすためのトレーニングについて話を聞いた。
長友は明治大学在籍時にその走力を買われ、ボランチからサイドバックへコンバートされ、頭角を現した。そして2007年のプロデビューからセリエAの名門インテル入団まではわずか4年。彼のキャリアアップの裏には、世界で戦う上で絶対的なアドバンテージとなるスピードがあった。
セリエAでもトップクラスのスピードと持久力。ピッチで圧倒的な存在感を放つプレーの裏側で、一体どのようなトレーニングを積んできたのか? その答えは至ってシンプルだった。「10代の頃は、確かにラダーだったりダッシュ系のトレーニングをひたすらこなしていました。ただ、大事なのは『どんなトレーニングをするか』ではなく、『自分自身をどこまで追い込めるか』だと思います」
「とにかく人よりも多くやること。これが成長への近道」。そう彼が口にするように、スピードを上げるための簡単なノウハウや方法など存在しない。継続した日々の積み重ねが、世界で通用する走力を生むのだ。
「絶対にプロになる」という強い意志。小学生の頃から抱いていた夢は、中学進学と同時に浦和レッズのジュニアユースに加入したことで、より一層現実味を増した。当時から絶対的な自信を持っていたドリブルは、ドイツでプレーする今も彼の最大のストロングポイントだ。「ゲームでは常に持ったら仕掛ける」という原口のスタイルは、当時から変わっていない。
「10代の頃、チームの全体練習が終わった後に、よくDFの選手に声をかけて一対一の練習につき合ってもらっていました。一対一で勝つには一瞬の爆発力が求められる。瞬時にスピードに乗れるよう、ドリブルの練習はトップチームに上がってからもやっていました」
しかし、FWとしてスピードの重要性を本気で意識し始めたのは、プロの世界に足を踏み入れてからだという。「実は当時、それほどスピードについては意識していなかったんです。むしろ技術を磨くことを一番に考えていました」
浦和レッズのトップチームに昇格し、プロの厳しさを肌で味わった。そしてドイツに渡ると、スピードに対する意識はさらに強くなったと話す。「世界に出れば自分よりうまい選手や速い選手がたくさんいる。そこで勝負するためには絶対にスピードが必要なんです。『自分は技術で勝負するタイプだから必要ない』という考え方ではダメだと気づきました。だからこそ今は、当時以上に走りこんだり、瞬発力を高めるようなトレーニングに力を入れています」
10代の頃から走力を鍛え続けた長友と、世界に出てその必要性を再確認した原口。世界で戦い抜くために、彼らはそのスピードに磨きをかけ続ける。