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南野拓実、20歳の肖像「やはり結果。結果がすべて」

2015.07.01

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写真=兼子愼一郎

 まだ20歳なのか。もう20歳なのか。

 南野拓実は今年1月、セレッソ大阪からオーストリアのザルツブルクに活躍の場を移した。初めて挑んだ欧州の地では、半年間でリーグ戦14試合に出場し、3ゴール3アシストを記録。シーズン途中の加入ながら、チームのリーグ戦とカップ戦の2冠獲得にしっかりと貢献した。成人を迎えたばかりだと考えれば、十分過ぎる成績である。

 ところが、本人の口からはどこか焦燥感を思わせる言葉がついて出る。20歳を迎えた青年は、満足することなく視線を遙か高みに向けている。

大事な時に得点できる選手は信用される

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――ザルツブルクに移籍してから半年間が経ちました。現在の気持ちとしては、満足感が大きいのか、それとももっとできたという思いでしょうか?
南野  サッカー選手としてタイトルは非常に大事なので、結果的に2つのタイトルを取れたことはいい経験になりました。ただ、より活躍して大事な試合で自分のゴールによって勝つことができていたら最高だったと思います。来シーズンは、大事な場面でゴールを決められる選手になりたいと強く思いましたし、それで優勝を決めたいですね。

――リーグ優勝を決めた試合(ヴォルフスベルガー戦)でアシストを記録していましたが、やはり得点への思いは強い?

南野  得点は毎試合意識していますし、やはり目に見える結果は大事だと思います。

――優勝を決める2試合前(アルタッハ戦)で、勝てば優勝が決まるという中、終了間際に2-2の状況でGKと一対一を迎えた場面もありました。

南野  得点できませんでしたが、ああいう場面などでゴールを決めていきたいと思いました。やはり、大事な時に得点できる選手は、味方にも信用されます。僕はまだ言葉でしっかりとコミュニケーションを取れていないので、そういうところで示していかないと信用は勝ち取っていけません。だからこそ、結果にこだわっていきたい。

――初めての海外移籍でしたが、一番苦労した点はどういう部分でしたか?

南野  やはり言葉ですかね。通訳の方もいましたが、実際にピッチでプレーするのは自分自身。自分の伝えたいことがうまく伝わらず、相手の言いたいこともしっかりと受け止められませんでした。サッカーをやっていれば何となく相手の意図はわかりますが、細かいところでのズレはありますから言葉の重要性を感じました。言葉の勉強もしていますが、すぐに話せるというわけにはいきません。だからこそ、結果で示していくことが大事になります。結果を出すことでチームの信頼を得られると思っていますから、まずは結果にしっかりとこだわるという考えです。

――リーグでの移籍4試合目に2ゴールを挙げましたが、結果を残したことでチームメートから認められてきたという印象はありましたか?

南野  それは毎日の練習や試合を重ねるごとに感じていきました。「この試合がきっかけ」ということではなく、地道に積みあげていったという感覚です。試合をこなしていけば周囲も僕のことをわかってきてくれて、僕自身もチームメートを理解していけました。

――移籍してみて日本との違いを感じたところはありましたか?

南野  単純な体の大きさや強さはオーストリアの方が上回っていると思います。あと、球際の激しさは全然違うと感じました。そういう状況でプレーしていると、特に守備での激しさ、寄せて体をぶつけてボールを取るということは求められます。「もう一歩寄せろ」とは、よく言われました。

――シーズン終盤に相手にガツガツ体を当てていくシーンを見ると、守備の意識が相当強くなっている印象がありました。

南野  実際に守備での激しさは求められましたが、自分では守備をしっかりやった上で、攻撃のところで貢献していきたいと思っています。前を向いたときの仕掛けやコンビネーションでの崩しは多いですが、自分も絡んでいく回数が増えればゴールはより近くなると思います。そういう場面でもっと自分を出していくこと、前を向いて仕掛けていく回数も増やしていきたい。あとは、やはり結果ですね。結果を出すことが一番求められていますし、みんなが結果にこだわる。結果を出せばパスも出てきますから、そこがすべてかなと思います。

最大の目標は、ビッグクラブで中心選手としてプレーすること

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――以前から海外でのプレーを希望していましたが、実際に20歳ながら海外でプレーしています。自身が想像した通りの道を歩んでいるのでしょうか?

南野  海外で若い時からプレーするという意味での希望は叶っています。ただ、海外に行くだけではなく、結果を残すことでどんどん次のステップに進んでいきたいと思っていますから、まだまだですね。

――ザルツブルクからドルトムントに移籍したケヴィン・カンプルという選手もいます。南野選手も次なるステップを、具体的にイメージしていますか?

南野  選手の獲得を目的に試合を見ている方々もいると思います。自分自身、そういうチームでプレーしていることで、毎試合で結果を出していけばチャンスはあると感じています。

――選手の中では、プロになったことで満足してしまう場合もあると聞きます。向上心を持ち続けている要因を、自身ではどう考えますか?

南野  将来、世界のビッグクラブでプレーしたいという気持ちがありますので。ビッククラブへ移籍することも叶っていませんし、A代表に選ばれてプレーしたいという気持ちもサッカー選手である以上持っています。そういう意味でもまだまだ。常に目標を持つことは大切だと思っていますし、これからも持ち続けていきたいです。

――自身の中では、最大の野望はあったりしますか?

南野  最大の目標はビッグクラブで、中心選手としてプレーすることですね。

――それはバルセロナやレアル・マドリードになるのでしょうか。

南野  具体的なクラブはあまりありませんが、そういったレベルです。

――3月にはU-22代表としてリオデジャネイロ・オリンピックのアジア一次予選を突破しました。手倉森ジャパンとして初の公式戦出場はいかがでしたか?

南野  オリンピックへの気持ちは自分の中で非常に強いですし、今まで一緒に代表でやってきた同世代の仲間たちと、もう一度世界を目指して戦えることはすごく楽しみですね。

――2試合限定と難しい条件でしたが、「しっかり仕事ができた」、「結果を残せた」という思いはありましたか?

南野  チームに適応できず、試合でもうまく自分のプレーは出せませんでした。初めてだったのでいい経験にはなりましたが、そういう部分でもしっかりやらなければいけません。A代表の選手では当たり前のことだと思いますから、そういうことにもしっかり慣れていくべきだなと。

――自分の中でチームに適応できなかったという感覚があったと?

南野  はい。全然でした。単純にパスや自分のボールコントロールのズレなどがありました。

――冬のオーストリアから灼熱のマレーシアに移動した影響も大きかった?

南野  環境が変化する中でも、自分のプレーがブレてしまってはいけません。暑いところから寒いところに行ったとしても、普段のプレーができないといけない。そういう意味で、いつものプレーはできていませんでした。

――来年の一月には最終予選が行われます。オリンピックに懸ける思いはありますか?

南野  前回のロンドン・オリンピックで、セレッソからタカ君(扇原貴宏)や(山口)蛍君、(杉本)健勇君が出場している姿を見た時、やはり憧れました。4年後は、自分があの舞台に立ってプレーしたいと強く感じました。U-19代表でU-20ワールドカップの出場権を逃したこともあり、だからこそ絶対に出ないといけないという気持ちはあります。

C大阪の先輩方の背中を追いかけてきた

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――育成組織からトップチームに昇格し、年代別代表にも選ばれてきました。エリートコースを歩んでいると見ることができますが、ご自身ではどのように考えていますか?

南野  (エリートだと)考えたことはないですし、自分はまだまだと思っています。世界を見渡したらすごい選手はいっぱいいますから、さらに上を目指してがんばっていかないといけない。

――上のレベルに行きたいという思いは、プロ以前から持っていましたか?

南野  もちろん。

――そうすると、育成年代当時から他の選手と意識や練習量に違いはあったのでしょうか?

南野  全体練習後に、プラスアルファで自主トレをやったりしていました。でも、周りもそういう意識を持った選手ばかりでしたから。そういう選手たちの中でやることによって、自分自身が伸びていったということはあると思います。

――ちなみに、憧れの選手とかはいましたか?

南野  セレッソの育成組織にいた当時、香川(真司)選手がドルトムントで大活躍して、移籍したマンチェスター・Uでも優勝するところを見ていました。セレッソのトップチームから世界に出て活躍している選手がいることを身近に感じられ、がんばれば実際にそういうチャンスがあると思うことができました。そういう意味で、香川選手への憧れについてはセレッソ出身の選手たちはみんな感じていると思います。

――セレッソはトップレベルの選手を次々に生み出しています。環境の素晴らしさもあったと思いますが、実際にセレッソで育った南野選手は指導をどのように感じていましたか?

南野  U-18の時に3年間お世話になった大熊(裕司)監督からは、「上のレベルを目指して練習しろ」と常に言われていました。実際に練習も厳しかったですが、そういうことを言ってくれる方々がいらっしゃいました。それに、僕の前には様々な先輩方がいて、僕はその背中を追いかけてがんばろうという気持ちがあったからこそ今があると、すごく感じています。そういう方々の影響は大きいと思います。

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 プレー面はもちろんのこと、丁寧で礼儀正しい取材対応を実際に受けると、「まだ20歳なのか」と驚いてしまう。

 とはいえ、抱いている目標を考えれば、一日一日が勝負になってくることも間違いない。「志は高く、態度は謙虚に」という言葉を地で行くような南野は、短いオフを挟んで再び欧州での戦いに挑む。

南野選手も着用。“絶対的支配”、“ゲームを支配する、プレーメーカー”がテーマの「ACE 15.1」

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――今回、新たに発表された「ACE」の感触はいかがですか?

南野  まずデザインが斬新。蹴った時のインパクトも今までのスパイクと全然違うこともあり、すごく良くなりました。コントロールウェブがあるスパイクの表面に関しても、ボールタッチがしやすくなりましたね。

――43本のスタッドで構成される「トータルコントロールスタッド」も特徴的です。

南野  スタッドも増えたことで最初はどういう感触なのかと思いましたが、実際履いてみたら芝生を噛んでくれて、全然滑らない。ターンの動きも多いですが、その時もしっかりとプレーできています。

――スパイクというモノに対するこだわりはありますか?

南野  それはあります。他の人には履かせませんし、常にキレイに保つことも意識しています。そういう意味では、僕の“相棒”と言えるかもしれませんね。スパイクを履く時は常に、「ヨッシャ、今から行くぞ」、「一緒に戦うぞ」という気持ちになります。
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