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茨田陽生「五輪で良いプレーをして14年のW杯出場を目指す」

2012.06.22
4兄弟の末っ子としてサッカーを始め、常に高いレベルを意識してきた茨田陽生。U-12からは柏レイソル一筋でプレーし、昨シーズンはJリーグ王者の一員として確かな軌跡を残した。ロンドン五輪出場を目指し、さらなる飛躍を誓う彼はいかにして現在のスタイルを手にしてきたのか。若き司令塔の過去、現在、そして未来に迫る。
インタビュー=浅野祐介
 

[写真]==佐山順丸

ファーストタッチを常に意識している
 
まずはサッカーを始めたきっかけを教えてください。
 
茨田 父親もサッカーをしていたのですが、自分は4兄弟の末っ子で、兄たちもサッカーをしていたので、その影響で始めました。
 
幼少時代はどんな少年でしたか?
 
茨田 兄が怒られる姿を見ていたので、「こうすれば怒られないな」と行動をする、ちょっとずる賢い子供だったのかなと思います(笑)。
 
サッカーを始めた頃のポジションやプレースタイルは?
 
茨田 今はパス主体ですが、サッカーを始めた当時はドリブルが多かったです。
 
より攻撃的な選手だったんですね。
 
茨田 そうですね。トップ下でプレーしたり、そこからエリア内までドリブルで勝負したりしていました。
 
現在のプレースタイルに変化したきっかけはあったのでしょうか?
 
茨田 中学1年の時に、上級生と一緒に練習をする中でパスサッカーの魅力を感じて、それから少しずつ変わってきたと思います。
 
最初に所属したのはFC浦安ブルーウイングスというチームですよね。
 
茨田 そうです。兄が所属し、父親がコーチをしていたこともあり、僕も幼稚園の頃からボールを蹴っていました。
 
ジェフユナイテッド市原(現千葉)やFC東京のサッカースクールにも通っていたと伺いました。
 
茨田 浦安での練習が週1回だったので、物足りなく感じてJクラブのスクールに行くようになったんです。
 
そして小学4年の時に柏レイソルU-12に加入しました。
 
茨田 親が知人から教えてもらって、「せっかくだから、入団テストを受けてみようか」という感じで受けたのがきっかけでしたね。
 
兄弟の影響もあり、幼少期から高いレベルでプレーすることへの思いが強かったのでしょうか?
 
茨田 そうですね。高いレベルでプレーしたいという思いと、あと負けず嫌いだったんです。2歳年上の兄と練習をしても、一対一では絶対に負けたくないと思っていましたから。
 
そこから茨田選手は柏一筋でプレーしてきました。柏のアカデミーとはどんなところなのでしょうか?
 
茨田 トップチームの練習グラウンドの隣で練習ができるので本当に刺激になります。中高生になってよりプロを意識する年代になると、そういった環境で練習できることはすごく良いと思いますね。
 
そのアカデミー時代は、どんな意識でトレーニングしていたのですか?
 
茨田 当時は吉田(達磨)監督の指導の下、パスサッカーをする上でポゼッション力を高めることや、ボールをつなぐという部分でのポジショニング、パスの質、ファーストタッチなどの一つひとつのプレーの質を意識しながらトレーニングしていました。
 
アカデミーで学び、今でも意識していることはありますか?
 
茨田 ファーストタッチでボールを置く場所ですね。トレーニングから常にそこを求められ、何度も注意される中で身に付けてきたプレーですから。
 
次のプレーにつながるファーストタッチが大切
 
09年に第2種登録選手として5月30日のヤマザキナビスコカップ清水エスパルス戦でデビューしました。18歳の誕生日だったんですよね?
 
茨田 そうですね。でも正直、自分のプレー内容については、ただがむしゃらにという感じだった印象しか残っていないんですよ(笑)。
 
プロのピッチに立ち、トップレベルとの差など感じたことはありますか?
 
茨田 自分が得意ではない守備面での差はすごく感じました。
 
逆に、自分が高める必要がある部分も実感できました?
 
茨田 そうですね。自分の長所である流れや展開を変える縦パスも出せたので、そういう長所を伸ばしてチームに貢献していきたいなとも思いました。
 
パスは茨田選手の大きな武器だと思いますが、どんなトレーニングでレベルアップしてきたのですか?
 
茨田 戦術だったり味方の動きがある中でのパスや、相手守備がいる中で、その逆を突くパスは本当にそこでしかできないことなので、その短いトレーニングに集中して100パーセントの力でやっています。
 
試合だとどうしても視野が狭くなりがちですが、どうしたら試合中に視野を広く保てるのでしょうか?
 
茨田 前を見ることだと思います。自分はボランチなので、ボールを受けた時に顔を上げて前を見て、前線の選手たちをしっかりと視野に入れることを意識しています。そうすれば、その選手たちの数だけパスコースが作れ、選択肢が生まれるので、やはり前を向くことが一番必要なことだと思います。
 
現代サッカーはよりスピーディーになり、ピッチ上の判断、ファーストタッチ、ボールタッチの正確さが重要になっています。ファーストタッチで、茨田選手が大事にしていることは何でしょうか?
 
茨田 次のプレーにつなげることですね。まずファーストタッチでボールを収めないとスムーズにパスを出せないですし、2タッチ、3タッチしてしまうと流れが止まってしまう。前を向くことで周りの味方も動き出しやすくなりますし、自分が流れを作るためにも、次のプレーへとつながっていくファーストタッチを意識しています。
 
リーグ戦デビューはトップ昇格した10年のJ2開幕戦でした。チームが結果を出す中で前半戦はスタメンに定着し切れない時期もありましたが、その間もどかしさはなかったのでしょうか?
 
茨田 その時は、試合に出られることが本当にありがたくて、うれしかった。だから先発出場できないもどかしさは、そこまで感じていませんでしたね。
 
第13節徳島ヴォルティス戦でプロ初ゴールを決めました。
 
茨田 本当に《ごっつぁんゴール》だったのですが、決めた瞬間のサポーターの歓声に鳥肌が立ちました。それを初めて感じられたことが良かったですね。J1初挑戦となった昨シーズンは快進撃を見せました。
 
J1初年度に得たもので一番大きかったのは何でしょうか?
 
茨田 コンスタントに試合に出させてもらい、本当にチーム全体の調子が良くて負ける雰囲気が感じられませんでした。相手どうこうではなく、自分たちのモチベーションを常に高く保ち、一試合一試合しっかり勝っていくという気持ちで臨めたことが良かったと実感していますし、それをチームの一員として経験できたことが何より大きかったと思います。
 
J1初優勝を率直に振り返るといかがですか?
 
茨田 本当に夢のようですね。今は苦しい時期が続いていますが、もっと前向きに考えて、昨年の喜びをもう一度味わいたいという気持ちをもっとプレーに出していきたいです。優勝が決まった瞬間は本当にうれしかったですし、人生でなかなかできない経験をプロ2年目で体験できたので、このクラブで優勝の感動をもっともっと味わいたいと思っています。
 
昨シーズンはFIFAクラブワールドカップにも出場しました。
 
茨田 Jリーグで良い成績を残せましたが、クラブW杯で世界を相手に戦ったことでさらに自信が付きましたし、チームの意識や目標が一つになる瞬間を感じることもできました。
 
世界のクラブの印象はいかがでしたか?
 
茨田 本当に自分が想像する以上のプレーを平然とやってくるし、それが楽しくもあり、この舞台でもっとプレーしたいという気持ちを持ちました。
 
特に印象に残っている選手は?
 
茨田 やはりサントスのネイマールですね。足技、左足のシュートなど本当にすごかった。自分はベンチにいたのですが、それをピッチレベルで見られたのは幸運だったと思います。
 
今シーズンのJリーグでは、追われる立場の難しさもあるかと思います。ここまでを振り返りどんなことを感じますか?
 
茨田 やはり、どの選手どのチームも、すごく気持ちを出して戦ってくるという印象ですね。追われる立場の戦いは厳しいですし、自分たちの特長も研究されていると感じますが、その中でも負けたくはないし、勝ち続けたいです。


左:ロンドン五輪の予備登録メンバー35名に選出されている [写真]=足立雅史
右:昨季はJ1優勝、クラブW杯出場を経験した [写真]=兼子愼一郎

 
五輪で良いプレーをして14年のW杯出場を目指す
 
ここからは世界というテーマで話を進めていきます。今までも数々の国際経験をお持ちですが、世界と戦うという意識を持ったのはいつ頃からですか?
 
茨田 中学3年のフランス遠征時に、日本人にはない能力、技術を目の当たりにしてからですね
 
ロンドン五輪が控えていますが、本大会の代表メンバーは18人と狭き門です。そこに名を連ねるためにどういう点を意識していますか?
 
茨田 まずは代表に招集された際に、自分の特長であるパスをアピールしていかないといけないですし、練習からがむしゃらにプレーすることはすごく意識しています。チームに戻った時は、まず試合に出ないことには始まらないので、スタメンを勝ち取り、なおかつ試合の中でアピールすることを意識しています。
 
世界の舞台で日本が勝ち抜くには、何が必要でしょうか?
 
茨田 日本人特有のチームワークはどの国にも負けていないと思うので、それをあらゆる局面で出していけば、世界とも十分に戦えると思います。
 
メンバーに入り、世界の舞台でどんなプレーを見せたいですか?
 
茨田 中学生の頃からバルセロナの試合を見てきて、シャビの決定的なパスは本当に勉強になっているので、世界の舞台でそんなパスを披露したいですね。
 
南アフリカW杯決勝でのイニエスタのような決勝ゴールも決めたいのでは?
 
茨田 そうですね。それができたらもう、言うことなしですよ!(笑)
 
そして14年には、ブラジルW杯が開催されます。
 
茨田 柏では小学校を訪問する機会があるのですが、そこで子供たちに目標を持つことが大切ということを伝えているんです。それは自分自身にも当てはまり、14年のW杯出場は自分の目標で、そこに向けて強い気持ちを持っています。
 
なるほど。では、なおさらまずはロンドン五輪が大事ですね。
 
茨田 そうなんです。出場したいですし、そこでいいプレーができればブラジルW杯にもつながると思っています。
 
茨田選手と同年代の選手たちが海外を舞台に戦っていますが、海外挑戦への意識はお持ちですか?
 
茨田 挑戦したい気持ちはあるのですが、まだまだJリーグで自分のプレーや結果を出し切れていないので、まずは1シーズン自分のプレーをしっかり出すことですね。それができないと海外でも通用しないと考えているので、スタメンを勝ち取ってコンスタントにいいプレーができるような選手になりたいです。
 
若い選手の活躍は、中高生にとっても身近な目標として刺激になると思います。そういった選手の一人として、茨田選手はどんな目標を抱いていますか?
 
茨田 これは夢ですが、バルセロナに入ってあのパスサッカーをプレーしたいですね。たとえバルセロナではなくても、周りの選手の良さを引き出すプレーをしていきたいと思っています。ボランチなので、自分が中心となってチームの流れやリズム、スタイルを導いていけるような選手になりたいです。
 
それでは最後に、中高生のプレーヤーに向けてメッセージをお願いします。
 
茨田 自分の経験なのですが、長所を伸ばしていくことで、モチベーションは高まっていきます。自信を持てる武器を作り、「誰にも負けない」という気持ちとともに技術が向上していくので、ぜひ自分の長所をどんどん伸ばしていってほしいと思います。
 
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