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前を向く「コントロール・オリエンタード」で言えば、香川真司も優れた選手

2012.06.04

この記事はサッカージャーナリスト養成講座が主催した短期セミナー『サッカー戦術眼向上セミナー』の「日本代表の戦術的長所と課題を読み解く」を『サッカーキング』掲載用に再構成したものです。
遠藤
協力:『小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」』 [写真]=足立雅史

サッカージャーナリストの小澤一郎氏は「今の日本代表の長所はスピードを維持したまま流動性のあるパス回しができること」だと言う。事実、“人もボールも動くサッカー”というコンセプトが即座に浸透したように、パスで崩す戦いを多くの日本人が好んでいる。では、ボールをつないで勝利を追求する今の日本代表において重要な役割を担っている選手は誰なのか? そして、その理由とは――。



「今の日本代表では遠藤保仁の代役が見つからない」と言われています。確かにそのとおりかもしれません。遠藤が良いボランチだと言われる理由の一つはディフェンスラインからボールを受けた時に角度がなくても前を向ける点でしょう。その技術をスペインでは「コントロール・オリエンタード」(スペイン語で「導く、方向づけるコントロール」の意)と言いますが、彼はその能力に長けていると思います。

 例えば2011年8月に行われた韓国戦の前半10分。相手との距離が1.5から2メートルでも遠藤は恐れることなく「コントロール・オリエンタード」、つまり方向付けをしたボールコントロールでパスを受けた瞬間に前を向いています。そうすると相手に対してボールを見せることになるので、相手をが食いつき、次のパスが生きてきます。

 遠藤は守備のセンスも高いです。2012年2月に行われたウズベキスタン戦の前半19分が印象的でした。アタッキングプレス、つまり前線の選手が自分の判断に従って相手に対してプレスを掛けて、DFやGKなど後ろの選手もその動きに対応していく守備戦術のことですが、遠藤はその時の読みが良い。相手のボールホルダーがパスを出すとなった時にプレッシングを掛けて食い止めたり、そこで取れなくても次の選手、ここでは長谷部誠が連動してプレスを掛けてボールを奪っています。

 前を向く「コントロール・オリエンタード」で言えば、香川真司も優れた選手の一人です。バイタルエリア、つまりセンターバックとディフェンシブハーフの間のスペースでボールを受けてから前に行くスピードが抜群に速い。ヨーロッパのリーグで活躍できているのはパスを受けてから前に行くのではなくて、ボールを受けながら前に行くことができる、初動のスピードがあるからだと思います。

 バイタルエリアにマイボールをいかに有効に運ぶかという点では、実はボランチと同じくらいセンターバックも重要な役割を担っています。

 現在の日本代表は吉田麻也がビルドアップの面でキーマンだと思います。彼は運ぶドリブルからの縦パスも出せるセンターバックです。例えばウズベキスタン戦の前半21分。吉田がドリブルをしながら相手陣内に入ることによって相手が食いついてきます。このプレーによって中盤のスペースが空いたため香川に縦パスが入りました。センターバックから香川へバイタルエリアにボールが入る、つまり手数を掛けずにバイタルエリアにパスが通ったわけです。複数のパス交換による組み立てなしに効果的な攻撃が仕掛けられれば戦い方が楽になるのは言うまでもありません。

 ちなみに、スペインではドリブルに2種類の単語があります。「コンドゥクシオン」は“運ぶドリブル”。「レガテ」は“抜きにかかるドリブル”。単語が2つあるので全く違う概念です。現代サッカーにおけるセンターバックは、バルセロナのジェラール・ピケに代表されるように、相手を引き出す“運ぶドリブル”が求められています。吉田は今のサッカーにうまく適用できていますし、“運ぶドリブル”で攻撃に貢献できるセンターバックです。

構成協力:田中秀明(サッカージャーナリスト養成講座

6月7日(木)配信の『小澤一郎の「メルマガでしか書けないサッカーの話」』に「日本代表にとっては、能動的な守備、攻撃的なアタッキングプレスの熟成が必要」(仮)を掲載予定です。

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