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ペップからビラノバに引き継がれる“革命”。バルサを進化させる『最後のピース』とは

2012.05.02

ワールドサッカーキング 2012.05.17(No.214)掲載]
 チームとして既に完成形に達している印象の強いバルセロナだが、昨夏のセスク・ファブレガス加入によってさらなる進化を遂げたように、まだ改良の余地は残されている。ペップ・グアルディオラからティト・ビラノバへと引き継がれるバルサの“革命”。チームに戦術的な進化をもたらす“第2のセスク”とは果たして誰なのか?

文協力=フットメディア

■ネイマールの獲得は数年先に見送られる

 昨シーズンのチャンピオンズリーグ決勝で、リベンジに燃えるマンチェスター・ユナイテッドを完膚なきまでにたたきのめした時点で、バルセロナはチームとして完成形に達した感があった。しかし、ジョゼップ・グアルディオラ監督は今シーズン、待望のセスク・ファブレガス獲得を機に、3ー4ー3の実用化に踏み切り、この新システムによってリオネル・メッシを軸としたチームの縦へのダイナミズムは、大きな進化を遂げた。

 内容と結果を高次元で両立させたグアルディオラはクラブを去るが、後任は“ペップの右腕”であるティト・ビラノバ。来シーズンへ向け、引き続き伸びしろがある3ー4ー3の進化・完成を目指した補強を行う可能性は高い。

 これまで、現地メディアは“左サイドMF”をキーワードに掲げ、王国ブラジルの至宝ネイマールの名前を大きく取り上げてきた。ダビド・ビージャの離脱やペドロ・ロドリゲスのコンディション不良も、彼の獲得を大きく報じた理由だろう。しかし、年明け以降、イザック・クエンカやクリスティアン・テージョらカンテラ組の台頭があり、今ではその優先順位はかなり下がった。ネイマールがメッシと競演すれば、常識を覆すような攻撃戦術を確立する可能性は十分にあるだろうが、それ今すぐでなくてもいい。彼の獲得は数年先まで見送られるだろう。

 むしろ、今夏の補強ポイントはより後方、エリック・アビダルが肝臓移植手術を受けて離脱した守備陣へと移行している。

 まず、チームがリストアップしているとされているのが、ミランのチアーゴ・シウヴァだ。対人プレーで絶対的な強さを発揮し、足元の技術を備え、セットプレー時の得点源としても機能。3ー4ー3を採用した場合に生まれる、サイド後方のスペースをカバーするスピードも十分に持ち合わせている。また、アスレティック・ビルバオのハビ・マルティネスにも熱視線を送っている。マルセロ・ビエルサ監督によってセンターバックにコンバートされた今シーズン、飛躍的な成長を遂げた23歳のマルティネスは、現バルサの戦術の肝でもあるセルヒオ・ブスケの代役、攻撃の起点としても不足はない。

 さらに、バルサのプレースタイルへの適応を第一に考えるのであれば、バレンシアのジョルディ・アルバは極めて現実的な選択肢となる。DFとMFをこなせる万能性はもちろんのこと、バルサのカンテラ育ちという点は獲得に動く上で重要なポイントになる。

■バルサが求める条件を完璧に満たすベイル

 とはいえ、この3人はどちらかと言えば戦力の“補填”の意味合いが強く、バルサを“進化”に導くものではない。その意味で興味深い獲得候補が、トッテナムのギャレス・ベイルだ。3ー4ー3で最大のカギとなるのは中盤の両翼。実質的に広大なサイドのスペースを1人でカバーすることになるこのポジションには、攻守にわたって複数の役割が求められる。

 攻撃面では常に一対一の勝負を制する突破力、守備面では前後のスペースをカバーする走力、もちろん攻守両面でスピードも欠かせない。実は、ベイルこそこの条件に当てはまるパーフェクトな選手なのである。

 現状、左サイドはアンドレス・イニエスタが高いインテリジェンスでこのポジションをこなしている。だが、サイドを本職とし、プレミアリーグが誇るダイナミズムを体現するベイルの加入は、同じくイングランドで学んだセスクの例が証明するように、チームにポジティブな化学反応を起こすはずだ。また、今シーズンはトッテナムで中央に流れてのプレーを習得するなど新たな戦術への学習意欲も高く、バルサの流動的なサッカーとの相性も決して悪くはない。

 ベイルの獲得は、ビラノバにとっても新たなチャレンジになるかもしれない。前述のようにベイルがサイド・中央を問わず駆け回ることになれば、サイドプレーヤーという概念がより希薄化するからだ。トータル・フットボールの先鋭化を続けてきたグアルディオラは、メッシの「偽の9番」しかり、3ー4ー3しかり、現代の常識を覆す試みを次々と成功させてきた。ベイルを左に置いた3ー4ー3が完成すれば、メッシからジェラール・ピケを貫く中央の流動性が、サイドにまで発展することになるのだ。

 ベイル本人も、「バルサからのオファーなら断れない」と認めているようだが、トッテナムが求める移籍金を満額で支払いさえすれば、獲得は不可能ではない。ベイルこそ、グアルディオラからビラノバへと引き継がれる“革命”の『最後のピース』になり得る存在なのだ。

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By サッカーキング編集部

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