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ファン・ペルシー(アーセナル)「“アーティスト”の原点」

2012.03.20

ワールドサッカーキング 2012.04.05(No.210)掲載]
アーセナルのキャプテンになったロビン・ファン・ペルシーは、ケガの悩みから解放され、目下、絶好調をキープしている。しかし、彼は現状に満足しない。芸術家の家系で生まれ育ったストライカーは、チームを勝利に導く“最高傑作”を生み出すために走り続ける。
ファン・ペルシー

インタビュー・文=スティーヴ・アングルシー 翻訳=町田敦夫

  アレックス・ソングが後方から高く蹴り上げたボールが、フィル・ジャギエルカの頭上を越えて飛んで来る。ゆっくり考えている余裕はない。彼は瞬時に体の向 きを変え、ヒラリと宙を舞ったかと思うと、左足で豪快なシュートをたたき込んだ。GKのティム・ハワードは反応できず、ボールがゴール左隅に吸い込まれる のを見送るだけ。得点者はアーセナル・サポーターでいっぱいのスタンドを見上げる。これが、ロビン・ファン・ペルシーが生み出す芸術だ。

  ファン・ペルシーの父親は芸術家として知られる。「父の作品がエミレーツ・スタジアムにある。雑誌や新聞を球状に丸めて頭に見立て、三角形の胴体にくっ付 けて紙人形を作っていくんだ。観客席やスタジアムからインスピレーションを得るらしい。そうしてできた何百、何千という紙人形が壁に貼り付けてある。時間 が掛かって骨の折れる作業だよ」と彼はうなずいた。

 しかし、息子は違ったやり方、もっとダイレクトなやり方でスタジアムを彩る。まるで芸術のような美しいプレーでピッチを装飾するのだ。

  ファン・ペルシーの人生は、実は想定外のものだった。母親のジョゼ・ラスも父親と同じ芸術家。「母も姉も妹もとてもクリエイティブで、子供の頃、家族は当 然のように僕に絵筆を握らせようとした。だけど僕の場合、手には芸術的なセンスがなくてね。でも、足には少しだけセンスがあった」 芸術家がそろう一家に あって、一人ボールを追い続けたファン・ペルシーはこう言って笑う。

 「両親は僕がまだハイハイしていた頃にそれに気づいたようだ。とにかく僕はいろんなものを蹴るのに忙しかった。最初は風船、次はピンポン玉、それがテニスボールになり、4号球、そして5号球のサッカーボールになった。家族にしてみれば僕は期待外れだね」

最後まで努力してみないと、自分の本当の限界は分からないんだ。

  2011年、ファン・ペルシーはアーセナルとオランダ代表の計56試合で48ゴールを挙げた。プレミアリーグで年間30 ゴール以上を決めたのは彼を含めて5人しかいない。アラン・シアラーの36ゴールにはわずかに1点及ばなかったが、ティエリ・アンリの34ゴールを抜い た。更に、1月から5月に掛けてはアウェーで9試合連続得点を達成。同胞のルート・ファン・ニステルローイが保持していた連続アウェーゴール記録を塗り替 えた。

 しかし、彼は決して満足しない。「例えば、僕はもっとヘディングに磨きを掛けられると思う。この数年で確かに上達はした。今シー ズンは2回か3回、良いヘディングシュートを決めている。でも、いつになったら満足できるか。『3ゴールしたから満足だ』と言う人もいるかもしれないけれ ど、僕はそうは思えない。5ゴールならどうか? 6ゴール? 15ゴールなら? 最後まで努力してみないと、自分の本当の限界は分からないんだ」

ファン・ペルシー
プレミアリーグ第15節のエヴァートン戦で披露した芸術的なボレーシュートは、「シーズンベストゴール」の呼び声が高い

  これだけファンや評論家から敬意を表され、他チームの監督から切望される中で、彼はどうやって自らの成長の限界を知るのだろうか。「ハッピーじゃないと自 分に言い聞かせるんだ。もちろん、僕にだってハッピーな時はあるけど、そう簡単に満足しちゃいけない。3点より、10点のほうがいいだろ? 以前は1年間 で48ゴールもできるなんて想像してなかった。だけど、それを成し遂げた今は48ゴール以上を決められると信じている」

 今でこそ、ファ ン・ペルシーは強烈な野心を抱いているが、故郷のフェイエノールトに在籍していた頃の彼は今とは対照的だった。「もしクラブから10年契約を提示されてい たらサインしていたよ。僕はロッテルダムで生まれ育ったから、それこそが僕の夢だったんだ。僕はロッテルダム郊外のクラリンゲンという、とてもいい場所で 育った。サッカーをする場所がたくさんあってコーチも大勢いるから、選手の成長には最適だ。文化的にも多様で、モロッコやスリナムやトルコから来た子供た ちと遊んだりしていた。世界を垣間見ることができるのは、あの年頃の子供にはありがたいものだ」

<続きは ワールドサッカーキング 2012.04.05(No.210)でお楽しみください>
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