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リーガ制覇に向け首位を独走するレアル。モウリーニョはバルサに雪辱を果たせるか?

2012.02.27
ワールドサッカーキング 2012.03.01(No.208)掲載]
 第24節を終了して、2位バルセロナとの勝ち点差は10。2年目のジョゼ・モウリーニョに率いられ、レアル・マドリードは優勝に向け、力強く歩を進めている。今シーズンの順調な歩みの一方、クラシコでは1勝しか挙げていないモウリーニョ。優勝請負人は「打倒バルサ」を実現することができるのか。
 
Text by Alberto Gimenez, Translation by Taku KUDO

■直接対決で負け続けるモウリーニョ

 一昨シーズンのチャンピオンズリーグ(以下CL)準決勝セカンドレグ、バルセロナ対インテル戦。試合終了のホイッスルが鳴ると同時にベンチを飛び出し、右手の人差し指を突きあげながらカンプ・ノウのピッチを疾走したジョゼ・モウリーニョの姿に、多くのマドリディスタは長らく失っていた覇権奪回への希望を見いだした。

 しかし、彼が監督に就任してから1年半が経過した今も、依然としてレアル・マドリードはバルサを「最強」の座から引きずり下ろすことができずにいる。それは昨シーズン17年ぶりにコパ・デル・レイを制しても、今シーズンのリーガで勝ち点7差の首位を保っていても変わらない。なぜなら、バルサとの直接対決で自分たちの優越性を示すことができていないからだ。

 これまでモウリーニョはあらゆる方法で打倒バルサを目指してきた。攻撃的布陣で真っ向勝負を挑んだこともあれば、敵陣内から精力的にプレスを掛けて相手のパスサッカーを壊しにかかったこともある。ボール支配を放棄してカウンター戦術に徹したこともあった。しかし、結果は1勝4分け5敗。唯一勝った昨シーズンのコパ・デル・レイ決勝も延長戦で挙げた1点を守り切ったものであり、90分間での勝利はまだ一度もない。CLやコパ・デル・レイといったホーム&アウェーの勝負では、ホームのファーストレグで決定的な敗戦を喫している。

 ただ、個々の試合を振り返ってみると、レフェリーの判定や決定力の差など、ディティールが勝敗を分けた紙一重の接戦も少なくない。昨シーズン終盤の4連戦の初戦では、ラウール・アルビオルの一発退場とPK献上で試合の均衡状態が破れる1分前にクリスチアーノ・ロナウドの直接FKがポストをたたく不運があった。3試合目のCL準決勝ファーストレグもまた、厳しい判定だったペペの一発退場が試合の流れを決定付けている。続くセカンドレグでは0ー0の状態でゴンサロ・イグアインが先制点を決めるも、その直前にジェラール・ピケに接触して転倒したC・ロナウドが不可解なファウルを取られてゴールは取り消しになる。このゴールが認められていればあと1点で逆転できただけに、やはりこの判定も勝敗に直接影響を与えるものだった。

 2ー2の打ち合いとなった今シーズンのスーペル・コパのファーストレグでは枠内シュート9対2と内容的に上回りながら、ダビド・ビージャ、リオネル・メッシの決定力に屈して勝利を逃した。逆にセカンドレグでは劣勢の展開の中セットプレーで2点を奪い、残り2分で決勝点を喫するまで逆転の望みをつないでいる。驚異の追い上げを見せた今年1月のコパ・デル・レイのセカンドレグも、前半にイグアインが決め損ねた2度の決定機をものにしていれば十分に勝機があったはずだ。

■バルサを超えるために必要なこととは?

 カンプ・ノウでのマニータ(5ー0)など完敗に終わった試合もあったとはいえ、少なくともモウリーニョは大半のクラシコをスコア上の接戦に持ち込んできた。もう少し運や判定に恵まれていれば、戦績は五分五分に近いものになっていたかもしれない。

 しかし、それでは足りない。レアル・マドリードの監督はバルサより強いチームを作らなければならないからだ。これまでモウリーニョは常にバルサの優位性を認めた上で、いかにバルサの攻撃を止めるかという発想からシステムと人選を定め、ロースコアの接戦に持ち込み勝率を5割近くまで上げることに執心してきた。チェルシーやインテルではそれで良かった。他に勝つ方法がなかったからだ。

 だが、世界最高の年間予算を誇り、C・ロナウドら最高レベルのアタッカーを擁するレアル・マドリードには、バルサを超えられるだけのポテンシャルがある。カウンターの破壊力は間違いなく世界一。コンパクトでソリッドな守備ブロック、フィジカルの強さを生かしたハイプレスがバルサ相手にも通用することは、過去の対戦で証明されている。

 課題はボールを奪った後の攻撃が速攻一辺倒になっていることだ。プレスと速攻の繰り返しでいたずらに体力を消耗し続け、ガス欠が生じた後に好き放題ボールを回された末、とどめを刺される。そんな負けパターンを繰り返さないためには、もっとボールキープの時間を増やして守備に費やす負担を減らさなければならない。更に相手が守備陣形を整えた後でも遅攻でゴールを脅かすことができれば、逆にバルサの選手達を守備で消耗させることができる。ボール奪取後の選択肢に、ポゼッションからの遅攻というアイデアを加えられるかどうか。本当の意味でバルサと肩を並べるためのカギはそこにある。

 先月のコパ・デル・レイのセカンド・レグでは、クラシコでは初の併用となったメズート・エジルとカカーの高いキープ力を生かし、60パーセント超が常であるバルサのポゼッション率を55パーセントまで落とすことに成功した。とはいえ、終始リードを保っていたバルサにはリスクを冒して攻めに出る必要がなかった。同じく4ー2ー3ー1の攻撃的布陣で挑んだ他の試合は完敗しているだけに、それは理詰めで物事を考えるモウリーニョにとってはリスクの高い戦い方なのかもしれない。

 だが、「バルサからボールを奪う」のではなく、「バルサにボールを持たせない」ことを目指さない限り、いつまでたってもバルサを超えることはできない。そしてそれができる可能性があるのは、レアル・マドリードを置いて他にないと思うのだ。

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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING @SoccerKingJP』の編集長に就任。
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