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新戦力の発掘が騒がれたアイスランド戦は3人のベテランの健在ぶりを際立たせる結果に

2012.02.25

日本代表

[写真]=足立雅史、山口剛生

 試合後の両チームの監督のコメントが、2月24日に行なわれたゲームの意味を表わしていた。

 日本代表のザッケローニ監督は、「私が与えた宿題を選手がどう理解しているのか、はかり知ることができた」と話した。アイスランドを率いるラーゲルベック監督は、「たくさんのことを学ぶことができた。とても良い経験になった」と満足げに語った。どちらのチームにとっても、結果より内容が重視された一戦だったわけである。

 スウェーデンやナイジェリアの監督としてワールドカップを経験したラーゲルベック率いるアイスランドは、直近のFIFAランキングが104位である。激戦のヨーロッパ地区で公式戦を消化しているため、ランクアップにつながるポイントを稼ぎにくいのは事実だ。それにしても、強豪とは言えない。ましてやホームゲームであれば、日本の勝利には保証書がついているようなものだ。このタイミングで対戦するには、ピッタリの相手だった。

 言うまでもなく、日本はシーズン前である。選手たちはフィジカルコンディションを高めている段階で、代表合宿前には二部練習をこなしていた選手もいる。さらに加えて、実戦感覚を取り戻している過程だ。観衆が喜ぶような歯ごたえのある相手を迎えても、率直に言って対抗できない。無理をしてケガをしてしまう恐れがある。ラーゲルベック監督の初陣であり、経験の少ない若い選手が含まれていたアイスランドは、その意味で格好のパートナーだっただろう。

 ザックにとっての収穫は、6人の控えを含めた17人を起用できたことにある。コンディションを考えれば、代表定着や定位置奪取へのアピールなど、ザックは求めていなかった。「フィジカルコンディションがトップでないのは分かっていた」と話している。それだけに、練習でインプットしたことを実戦でどれぐらい表現できるのかを、見極めたかったはずだ。

 ウズベキスタン戦後はW杯最終予選に突入するため、国内組に経験を積ませるチャンスは限定的にならざるを得ない。この試合でのアピールが物足りなかったとしても、増田誓志、近藤直也、田中順也らが国際Aマッチデビューを飾ったのは、将来的に意味を持ってくる。実績豊かな大久保嘉人と石川直宏についても、まったく同じことが言える。彼らにとっても価値ある未来への助走だ。

 アイスランド戦で存在感を見せつけた選手をあげれば、まずは遠藤保仁になる。彼がボールに絡む回数が増えれば、日本はゲームをコントロールすることができる。ビルドアップの局面で最終ラインまで下がることにより、槙野智章の攻撃参加がスムーズになっていたのも見逃せない。存在感の大きさはいまさら指摘するまでもないが、この日のように経験の少ない選手が起用されると、背番号7の大きさが改めて浮き彫りになる。

 後半からトップ下で出場した中村憲剛も、さすがのプレーを披露した。2アシストもさることながら、試合の流れを読んだボールさばきとポジショニングは、同じポジションでプレーした柏木陽介との違いを見せつけた。彼の登場で攻撃のリズムが変わり、スイッチが入り、得点が生まれた。順調な仕上がりを見せる31歳は、ウズベキスタン戦でも出番があるだろう。

 26日に発表されるウズベキスタン戦のメンバーには、多数の海外組が含まれているはずだ。チームの中心は海外組が担っているが、彼らが存分に個性を発揮できるのは、遠藤、中村、今野泰幸らの経験豊富な国内組がいるからである。新戦力の発掘が騒がれたアイスランド戦は、3人のベテランの健在ぶりを際立たせるものだった。

【戸塚啓 @kei166】 1968年生まれ。サッカー専門誌を経て、フランス・ワールドカップ後の98年秋からフリーに。ワールドカップは4大会連続で取材。日本代表の国際Aマッ チは91年から取材を続けている。2002年より大宮アルディージャ公式ライターとしても活動。著書には 『マリーシア(駆け引き)が日本のサッカーを強くする(光文社新書)』、『世界に一つだけの日本サッカー──日本サッカー改造論』(出版芸術社)、『新・ サッカー戦術論』(成美堂出版)、『覚醒せよ、日本人ストライカーたち』(朝日新聞出版)、『世界基準サッカーの戦術と技術』(新星出版社)などがある。2011年12月に最新著書『不動の絆』~ベガルタ仙台と手倉森監督の思い(角川書店)が発売。『戸塚啓のトツカ系サッカー』ライブドアより月500円で配信中!

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