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世界最強クラブとして迎える2012年、王者バルセロナの補強戦略を読み解く

2011.12.19

サントスに4−0で勝利し、名実ともに世界一のクラブとなったバルセロナ [写真]=足立雅史

■クライフ時代から続く揺るぎなき信念

 南米王者サントスを圧倒し、2度目のクラブ世界一に輝いたバルセロナ。司令塔シャビが「歴史的な勝利」と表現した新たな栄冠も、振り返れば、このクラブの栄光は、クライフが監督に就任した1998年からずっと一貫してきたポリシーを起源とする。

 それまで、長年レアル・マドリードに後れを取ってきたクラブにとって、クライフが示した指針はここ20年以上にわたる強化策の根幹をなしているからだ。それは、“美しく勝利する”ことと“カンテラ重視”の2つである。

 ボールポゼッションを高め、試合を支配しながら勝利を目指すスタイルを、クラブの下部組織で育った選手たちが先頭を切って指揮するチーム。メッシ、チャビ、イニエスタ、プジョルに加え、若手のチアーゴ、そしてバルサに“復帰”したピケとセスクに至るまで、“ブラウグラナ”の伝統を知る選手たちが中心を担う現在のチームはクラブの理想を体現している。

 そのため、外部からチームに迎え入れられる選手は、生え抜きにはないスパイスの持ち主が多い。既に成熟期を迎えていた2006ー07シーズンにはテュラムやグジョンセンといったベテランを、翌シーズンにはアンリ、ヤヤ・トゥレ、アビダルなどフィジカルに優れたアスリート型の選手を獲得している。

 だが一方で、“バルサイズム”とでも言うべき独自の主義とは相いれない補強選手も過去には存在した。09年夏に加入したイブラヒモヴィッチがその最たる例で、彼は選手・監督・クラブと遺恨を残したまま、わずか1シーズンで退団。また、彼ほどではなくとも、フレブ(この冬、バルサに復帰)やチグリンスキも目立った活躍がないままクラブを去った。

 こうした背景には、クラブOBであり、バルサイズムの体現者でもあるグアルディオラ監督の人柄の影響が少なからず関係しているのかもしれない。現地では、彼の師であるクライフがラウドルップやストイチコフら当時のビッグネームと衝突した歴史の再現という向きもある。そのため、昨シーズンからバルサはより適性重視の補強戦略へと舵を切った。ここ2年の補強選手は、セスクを筆頭に、ビジャ、アレクシス・サンチェスなど高いテクニックを持つ“バルサ型”の選手が大半を占めている。

■世界戦略の失敗で育成路線を再認識

 チームの強化策にはクラブが掲げる“世界戦略”も密接に関わっていることも忘れてはいけない。ラポルタ前会長が掲げたこの戦略が、“非欧州”選手の積極的な獲得、またクラブ史上初の胸スポンサー契約締結といったクラブの歴史にメスを入れるような英断を導いた。ただ、ラポルタの任期満了後に発覚した多額の負債によって、現体制は財布のひもを硬く締める傾向があり、ある意味で、意図せずして“カンテラ重視”の方針が強まっている。とはいえ、揺るぎない信念に世界の潮流をミックスさせた経営はこの先も続きそうだ。

 では、世界一のクラブとして迎える2012年、バルサはいかなる強化プランを描いているのだろうか。既に成熟期を迎えているバルサにおいて、性急な選手の入れ替えは必要ない。ビジャの離脱は確かに痛手だが、サントスとのクラブW決勝でも実証したとおり、今のバルサはFW不在でも相手ゴールを陥れることができる。

 もちろん、「下部組織の人材で穴埋めできない場合は外部から選手を獲得する」という強化プランは継続されるはずだ。具体的な補強ポイントとして最も必要性が高いのは、左サイドバックとセンターバック。この夏の補強のように、フンメルス(ドルトムント)やベイル(トッテナム)といったビッグネームを“一本釣り”する可能性もあるが、戦術への適応を優先した場合は、バレンシアで頭角を現したアルバやスポルティング・ヒホンで活躍するボティーアら、バルサ育ちの人材が現実的なターゲットと言えるだろう。

 育成理念を貫き、クラブの理念を体現する。それが世界最強クラブ、バルセロナの揺るぎなき哲学だ。

【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(twitterアカウントはSoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではグラビアページを担当。

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