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【インタビュー】熊谷俊人(千葉市長)「クラブの新たなストーリーが始まる瞬間をサポーター、市民の方と見届けたい」

2014.12.02

12月7日(日)、残り一席となったJ1昇格をめぐりジェフ千葉とモンテディオ山形が激突する。大一番を前に、サッカーフリークとしても知られ、2009年当時に全国最年少市長として千葉市の市長に就任した熊谷俊人さんに、ジェフ千葉の昇格、サッカーへの思いを聞いた。

我々応援する者にとってもJ1でなければという想いが強い

――千葉は過去2年ともに5位で「J1昇格プレーオフ」に出場しています。2012年は決勝に進み6位の大分と対戦して0-1で敗れ、昨年は準決勝で4位の徳島と1-1で引き分けて、いずれも涙をのみました。

「そうですね。特に2012年の決勝は、引き分けでも大丈夫だし、きっとJ1へ上がれるだろうという想いが心のどこかにありました。実際、試合は0-0で進みましたが、終盤カウンターのような形で失点してしまった。しかも決めたのは元千葉の林丈統選手。結局そのゴールが決勝点となって負けてしまったわけですが、国立競技場にいながら何か悪い夢を見ているような感覚で、あまりに残酷で声を失ったのを覚えています。あのときのプレーオフのキャッチフレーズもたしかそんな表現でしたよね?」

――2012、2013年ともに「日本一残酷な、歓喜の一戦」というキャッチフレーズでした。

「そう、まさにその言葉通りの結果となりました。やはりジェフは『オリジナル10』のひとつですから、我々応援する者にとってもJ1でなければという想いが強かった。大分との決勝のときもJ1に行くものだという確信を抱いていたし、もしかしたら試合の途中から昇格が決まったあとのストーリーを考え始めていたひともいたかもしれない。夢を描いていたからなおさら、そう簡単に昇格できるものではないということを痛感させられた戦いでした」

――今年のキャッチフレーズは「夢と絶望の90分」に変わりました。

「この大会はとかく残酷な面が際立つ印象がありますが、近い勝点のチーム同士が戦う一発勝負、どちらにもチャンスがあり、つまりどちらも夢を描くことができる。すごくいい表現だなと思います」

――まさしく決勝でその一発勝負に臨む千葉の現状にはどんな印象を持っていますか?

「勝負強くなりましたよね。たとえ劣勢の展開でもしぶとく同点に追いつくなど最後のところで踏みとどまることができる。ヨーロッパのサッカーなどを観ていても思いますが、相手に勝点を渡さないことは非常に重要です。勝利はもちろん大事ですが、負けずに引き分けに持ち込めれば次に繋がっていく。ジェフが勝点1差で3位に上がったのも、関塚隆監督の指揮のもと、負けなくなった成果だと思います。もちろんプレーオフは一発勝負ですからそれでも負けることはあるでしょうけれど、少なくとも過去2年と比べたら今回は最も昇格に近づいているのではないかと思います」

――熊谷市長はどの選手に注目していますか?

「今季サイドの選手が移籍したなかで、不安を払拭してくれたのは中村太亮選手ですよね。また井出遥也選手と幸野志有人選手、町田也真人選手の若手3選手にはとくに期待しています。やはりチームには将来性が大事。負けても『今日はよかった』と思える試合をしてほしいし、未知の可能性が先に広がっているかいないかで同じ結果でもまったく違います。英プレミアリーグのチェルシーなどがそうですよね。若くて面白い。応援する側からすれば、これから成長していく未完のチームはすごく魅力的に感じますから、関塚監督の起用の仕方を含めて、あの3人を見ているとワクワクします。スピードがあってフレッシュでひたむきで、見ているこちらも爽やか気持ちになってガッツが出てきますね」

千葉のJ1昇格に立ち会える機会は今後一度しかない

――2003年に千葉市がジェフのホームタウンに加わって10年余り、昨年にはクラブを応援する「ジェフユナイテッド千葉絆会」も設立されました。

「10年という節目でもありましたし、私自身2009年に千葉市長の任に就いて以来、経済界をはじめ多くの方々とお付き合いをさせていただいているなかで、ジェフがJ2にいるあいだに広く呼びかけて会をつくらなければいけない、J2からJ1に昇格するときがチャンスだという想いがありました。というのも、ジェフのホームタウンは市原に始まっていますから、当時から応援されているファン・サポーターの皆さんには、Jリーグのスタートとともにクラブと歩んできた体験、いわば血まで通っているような熱さを感じます。同様に我々千葉市民にも共通の強烈な原体験が必要だと思うんですね。ですからJ2という下積み時代にできる限り関与するひとを増やし、J1昇格を果たしたときに自分は立ち合っていたんだ、ジェフをサポートしていたんだという経験を多くの方に持っていただきたいと思っています。サッカーのある町として千葉がひとつになっていくためにも大事なことだと思います」

――「サッカーのある町」、具体的にはどのようなビジョンを思い描いていますか?

「ジェフの試合があるときには、スタジアムはもちろん千葉市全体に黄色が増えるような、黄色に染まる町をつくっていかなければいけないと思っています。スタジアムから遠く離れた場所でも、試合がある日には黄色いものを身に着けて心のなかでジェフを応援しながら過ごす。試合のない日にはユナイテッドパークに足を運び、日向ぼっこしながら練習をゆっくり見学する。そんなライフスタイルが定着して初めて『サッカーのある町』になれると私は思っていますので、そういうまちづくりを我々としては目指していきたいですね」

――まちづくりの観点からもサッカーは重要な役割を担っているのですね。

「そうですね。私は市長として基本的にまちづくりに関心があるので、たとえばヨーロッパ各国を見ると、サッカーから刺激が生まれている町は少なくありません。町の隅々までクラブのカラーが浸透し、チームの強さに関わらずスタジアムが埋まるところもある。さらに言えば、サッカーだけでなく地元の総合型スポーツクラブとしての顔もある。そうしたアイデンティティの確立に、クラブはもちろん町としての歴史を私は感じるんですよね。ロンドンをはじめドルトムントやシャルケなどもよく取り上げられるかと思いますが、我々としても世界の町から勉強しなければいけないなとつねづね思っています」

――サッカーを観ていて、現在の仕事に通じるところはありますか?

「選手それぞれが有機的に連動してチームが形成されるように、私たちも職員一人ひとりに大切な役割があり、その役割を果たしながら組織として目標に向かっていくことが大事だと思っています。千葉市民の皆さんにもまちづくりに参画していただきたいという、我々がいま力を入れている呼び掛けにも通じると思います」

――サッカーのあるまちづくりは千葉市として進んでいますか?

「少しずつではありますが、進んでいると思います。地域にJリーグクラブがせっかく存在しているわけですから、短期的な勝ち負け以上に、ジェフと千葉市が一体化して盛り上がり活性化する長期的な視野が大切だと私は思っています。千葉市がホームタウンに加わってようやく10年、さらに10年、20年、50年と積み重ねて、スポンサーやサポーターを含め数も規模も情熱も、すべてをもっと高めたい。今回プレーオフに勝つことができたら、その歩みはきっと加速すると思います」

――最後に、J1昇格プレーオフ決勝戦に向けて、千葉サポーター、千葉市民にメッセージをお願いします。

「私は一度J1に昇格したらもう降格しない、降格してはいけないと思っています。言い換えれば、千葉のJ1昇格に立ち会える機会は今後一度しかないということです。それはまさに今大会のキャッチフレーズにある『夢』に繋がる、ジェフの長い歴史における非常に重要な瞬間だと思います。もちろん絶対に勝つという強い気持ちでいますが、勝負事ですし、過去の苦い経験を踏まえても結果は最後まで分かりません。ただ、仮に負けたとしても必ず次に繋がる経験になると私は思っていますし、いずれにしても重要な一戦、ひとりでも多くのひとに目撃者となっていただきたいですね。この機会を逃したらきっと後悔すると思いますし、味スタを黄色に染めて、クラブの新たなストーリーが始まる素晴らしい瞬間をファン・サポーター、千葉市民の皆さんとぜひ一緒に見届けたいと思っています」

協力=Jリーグメディアプロモーション

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