EURO2016特集|UEFA欧州選手権
2014.10.04

AFC U-19選手権 開幕直前! U-19日本代表・鈴木政一監督独占インタビュー

[ワールドサッカーキング増刊 サムライサッカーキング10月発売号掲載]

U-20ワールドカップ出場権を懸けたAFC U-19選手権がいよいよ10月9日に開幕する。若きサムライブルーを指揮するのは、ジュビロ磐田の黄金時代を築き上げた鈴木政一監督。長年の経験で養った確固たる哲学で、4大会年ぶりに世界への切符をつかみ取る。(インタビュー・文=後藤健生)

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[写真]=兼子愼一郎

「勝つだけ」ではダメ。チーム、選手のレベルアップを

―――今年のU-19日本代表はどういうチーム作りをしてきたのでしょうか?

鈴木 私がU-19日本代表の監督を引き受けた目的は2つあります。一つはもちろんU-20ワールドカップに出場させること。もう一つは、次のステップ。オリンピック代表あるいはフル代表に入った時に困らないような選手に育てることです。ですから、的確な判断でプレーすること、判断を共有することによって組織力をもって戦えるチームにすることを目的にスタートしました。

―――強化と育成の両立というのは難しいことですよね?

鈴木 僕はジュビロ磐田時代に育成・サテライト監督・スカウト・トップ監督・強化部長と現場関連の業務をすべて経験させていただきました。その中でトップチーム監督時には世界クラブ選手権への参加もあり、世界と戦う上でどんなチーム作りが必要か。また、選手全体を分析することで高年齢な選手構想であることからチーム全体でトライするための「ハードル」を設定し、選手にはサッカーの質の向上を目指す環境を作り、トレーニングではグループ・チーム戦術を中心に的確な判断と、判断を共有した中でプレーの精度を高めることを目的とし、ゲームにおいても対戦相手の分析は行うが自チームの分析によって常にレベルアップを図りました。その結果として2002年にはJリーグ完全優勝という大きな目標を達成することができたのです。

―――U-19日本代表の場合はどういう「ハードル」を与えたのでしょうか?

鈴木 日本の選手たちがアジア・世界と戦う上で、チームとしてはクリエイティブでアグレッシブな攻撃的サッカーを目指すこと。攻守において個人もグループもチームも仕掛けてボールを奪い、仕掛けてチャンスメイクをして得点できるチーム作りを掲げてきました。また、個々が的確な判断と、判断を共有した中でプレーの精度を高めること。(守備ゾーン・中盤ゾーン・攻撃ゾーン)全体のバランスを保つことをチーム全体に共有すること。個々の特徴を把握し合い、コンビネーションを高めることなどを要求してきました。

―――どうやって選手にそれを身につけさせるのでしょうか?

鈴木 まずはチーム戦術(どのように攻撃し、守備を行うか)をミーティングによって頭で理解させ、実戦で意識を持ってプレーすることで選手個々が共有し、何が良いプレーなのかを理解させる。そのためにはトレーニングの目的を明確にし、ゲームでの修正点・改善点として選手たちにイメージさせることが大切です。

―――鈴木監督のサッカーは磐田の時も、日本体育大の時もそうでしたが、選手たちが自然に、自由にプレーしているように見える。それでいて、チームとして一体になっているように見えます。

鈴木 そのためには判断を共有することと、味方の特徴を知らないといけません。スピードがある選手なら前へボールを出さなければいけない。そういう判断ができると代表に近い選手になっていく。僕はあまりベンチから声を出さないんです。ミスについて細かく言っても、プレッシャーになるだけですから。もっと生き生きと楽しくやってもらいたい。監督の最大の仕事は、試合までに良い準備をしてピッチに立たせること。準備が8割で、残る2割が選手へのアドバイスなど、試合中の仕事だと思っているんです。ただ、代表はクラブと違って準備期間が少ないから、ゲーム中の指示が3~4割になるかもしれません。例えば9月のベトナム遠征はAFC U-19選手権前の最後の大会だったので、結果にこだわりベンチからかなり指示を出しました。

―――確かに、クラブと違い代表では毎日トレーニングできません。

鈴木 そこが一番苦しんでいるところです。ベトナムやインドネシアなどは代表が毎日一緒に練習しています。そうすればコンビネーションの質が上がる。だけど、日本も韓国も集められる時間には制約があるので、なかなかコンビネーションの質が上がらない。そこはこれから仕上げていく部分です。1月のベトナム遠征はほとんどのメンバー、Jリーグに出場している選手も呼べたので良い経験になったと思っています。本年度は1月と7月以外はJリーグに出場している選手を招集することができませんでしたが、与えられた環境の中で最善を尽くしてきました。

―――一緒にトレーニングする機会が少なく、戦術的な擦り合わせなども難しかったでしょうね。

鈴木 いろいろな監督の下で様々なサッカーを経験してきたベテラン選手なら、いきなり代表に来ても違和感なくできると思います。でも、若い選手は一回呼んで合宿をし、最後のゲームでは良いパフォーマンスするようになっても、次に呼んだ時にはまた戻ってしまっていることもある。昨年はその繰り返しでした。だから、代表に招集する時に頭の中を整理してから来てくれということで、「こういうサッカーをやるんだよ」いうメモを渡していました。

そして本当は前に到達したレベルから練習を再開し、精度を高めることからスタートしたいところですが、一度前にやったことのイメージを共有させるためのトレーニングを入れていました。でも、このままではダメだと思って、今年から「選手は理解している」という前提で、最近はすぐに精度を上げる練習を始めるようにしています。ずっとケアしていると、選手たちが「またやってくれるからいいか」と思ってしまう。逆に、復習をやらないと、選手も「ちゃんと整理して行かないと」と思ってくれるんじゃないかと。

―――クラブと代表でポジションの違う選手もいます。

鈴木 例えば、松本昌也は大分トリニータでは左の中盤、代表ではボランチをやっていますが、彼なら問題ないと信じています。いくつかのポジションをこなせる選手は入れておかないといけませんからね。関根貴大(浦和レッズ)もそう。代表では逆サイドにボールがある時はインサイドポジションを取らせるけど、チームでは常に外に開いている。でも、そういう部分は、関根ならすぐ理解してくれると信じている。

UAE遠征時は南野拓実(セレッソ大阪)も、関根も連れて行けましたが、その時も関根はちょっと言っただけで逆サイドのポジションの取り方を理解してくれました。ただ、1月以降はJリーグに出場している選手をほとんど呼べなかったので、大会前の宮崎合宿での練習試合の予定を1試合から2試合に変更しました。やはり試合でイメージを共有させてからミャンマーに入りたいですからね。

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U-19日本代表のエースとして、活躍が期待される南野拓実 [写真]=白井誠二

世界大会に出る意義は大きい。そのためにも、まずは初戦

―――日本はU-20W杯出場権を3大会連続で逃し続けています。何が原因は何だとお考えでしょうか?

鈴木 前回大会の最終予選のゲームビデオを拝見しましたが、当時のチーム戦術や選手選考、監督の考え方もありますから、できればコメントは差し控えさせていただきたいところですが、私自身は日本人の特徴(サッカー的・性格的・身体能力的)などを考えて、良いところを最大限に生かしたサッカーを行うことが重要ではないかと考えています。

―――2年前は、パスは回っていても前に行く推進力がなかったように思います。

鈴木 私自身はボールを奪った時のカウンターと、ゲームをコントロールした中での積極的な仕掛けが大切になると思っています。

―――世界大会(U-20W杯)に出場することには、どういう意義があるとお考えですか?

鈴木 試合経験としては、大会に出なくても遠征すればいいとも言えるけど、やっぱり世界大会を経験することは大きい。将来オリンピックやフル代表に行くためにも4万人の観客の中でのプレーや、歓声でベンチの指示が聞こえないといった状況にも慣れておかなければいけない。9月のベトナム遠征で4万人の観客がいるアウェイゲームでも力を出し切れたのは、これまで経験を積んできた成果だと思います。

試合自体の経験もそう。SBSカップのコロンビア戦なんか、すごく良い経験だったと思うんですよ。日本だったら、突破したら時間が作れてチャンスメイクできたけど、世界相手では追いつかれて、つぶされちゃう。次にコロンビアと対戦する時にはどういうプレーをするか考えれば、ああいうミスは起きないし、奪われることも少なくなる。そういう点でも世界大会に出る意義は大きいですね。

―――U-16日本代表の吉武博文監督は世界大会に行っても試合ごとに選手を入れ替えていますが、鈴木監督はメンバーを固定して戦うことが多いですね。

鈴木 レギュラーははっきりさせたいと思っています。例えば、SBSカップでは3試合ともほぼベストメンバーで戦いました。なぜなら、AFC U-19選手権は1日おきの3連戦なので、そのシミュレーションです。一番良いのは最初の2試合に勝って準々決勝進出を決め、3戦目は主力を休ませて、決勝トーナメント1回戦に再びベストメンバーを使うこと。でも、サッカーは怖いものです。3連戦どころか、準々決勝まで4連戦になることもあり得ます。ですから、ベトナム遠征でも4試合使った選手もいました。

―――各年代別の日本代表は、やっているサッカーが違うような印象がありますが、それでいいのでしょうか?

鈴木 各年代で選手を育てるためにそのやり方が必要であるのなら、サッカーは異なってもいいと思います。育てる目的なら。フル代表に入るためにはオールラウンドで判断のスピードがある選手、プレー精度の高い選手に成長する必要があります。僕たちの役割はそういう選手を育て、送り込むこと。

あとはフル代表の監督が見て、誰を選ぶかだけですよ。小学生年代なら足が速ければそれだけで点が取れちゃうけど、レベルが上がればスピードを消されて何もできなくなる。スペシャルなものを持っている子にもオールラウンドなプレー身につけさせ、ドリブルもパスもできるようにする。大事なのは「勝つ」ことではなく、そういう選手を「育てる」こと。僕は日本体育大監督時代もそうでしたが、相手が2トップでもDFを余らせて守ることはしない主義なんです。DFはチャレンジとカバーができなければいけないから、人を余らせてやっていたら、その選手は守備で何もできない選手になってしまう。ボールに行かないといけない場面なのに、行かずにシュートを打たれてしまう。そんな選手のままでは困ります。

だから、システムという意味で言えば、各年代を同じにする必要はないと思うんです。システムというのは選手によって決まるものですから。僕が磐田監督時代に、なぜ3-5-2を採用したのかというと、サイドバックがいなかったからなんです。逆に中盤には良い選手が多かった。だから3-5-2を採用した。システムという形だけ当てはめても、チームはうまくいきません。

―――いよいよ本番のAFC U-19選手権ですが、厳しいグループですね。

鈴木 そうですね。ベトナムとは9月に対戦しているので、ある程度計算できると思いますが、韓国、中国がどうなるか。特に中国との初戦が大事になります。韓国は海外でプレーしている選手が7人ほどいるので、彼らを呼ぶのかどうかでサッカーが変わると思います。韓国にはU-16日本代表が負けたし、勝たなければいけないと思っていますが、何よりもまずは決勝トーナメントに進出しなければいけない。そのためにも、まず初戦です。

―――そうですね。素晴らしい結果を期待しています。頑張ってください!

鈴木政一(すずき・まさかず)。
1955年1月1日、山梨県生まれ。現役時代はDFとしてヤマハでプレー。引退後は指導者としてコーチやサテライトチームの監督を務め、2000年に磐田の監督に就任。黄金時代の礎を築き、02年にはJリーグ史上初の両ステージ優勝を達成した。その後、主にチーム強化部門で力を発揮。日本体育大監督を経て、昨年U-20日本代表監督の座を任された。
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