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夏休みに読みたいサッカー書籍はこの5冊! 広島県にゆかりのある人が楽しめる2冊も紹介

2014.08.07

『サッカーフリークの書店員によるブックレビュー』は、「日本のサッカー文化の普及啓蒙」を推し進めるべく、サッカー文化の成熟を促す書籍をどんどん紹介していく企画。サッカーと本をこよなく愛する書店員の皆さんが、現場ならではの視点から書評を執筆してくれます。

 今回のテーマは「書店員一押し! 夏休みに読みたいサッカー書籍」。書店チェーン啓文社の執行役員であり、ご自身も『尾道坂道書店事件簿』(本の雑誌社)というエッセイを出版している児玉憲宗さんが、この夏、じっくり読みたい必読書のベスト5をピックアップしてくれました。

5位 鉄板力

著者:平野満代
出版社:本分社
定価:本体1,000円+税

「お好み焼き ひらの」は今日もたくさんのお客さんでにぎわっている。おばちゃんとおばちゃんが焼くお好み焼きが、多くの客を魅了し、クチコミで常連客を増やしてきた。

 中でも近所にある広島県立広島皆実高校の生徒が多い。ひらののお好み焼きは安くて美味しくてお腹がいっぱいになるからだ。特にサッカー部員の食べっぷりは見事としか言いようがない。おばちゃんはそれがうれしくてまた腕を奮う。

 第87回全国サッカー選手権大会で、日本一に輝いた広島皆実高校サッカー部。興奮冷めやらぬ国立競技場での優勝インタビューで彼らはこう叫んだ。

「ひらののおばちゃん、やったよ」、「おばちゃんのお好み焼きのおかげで勝ったよ」

 高校時代の思い出には、部活の後、通っていた店の思い出は欠かせない。

4位 原爆少年サッカー魂

著者:今子正義
出版社:南々社
定価:本体1,500円+税

 メキシコ・オリンピックで銅メダルに輝いた日本代表には、監督を務めた長沼健(広大附属高)をはじめ、渡辺正(基町高)、宮本輝紀(山陽高)、小城得達(広大附属高)、森孝慈(修道高)と広島勢が5人いた。

 いずれも戦前に広島で生まれたが、幸運にも原爆の閃光を免れた。彼らは、原爆で廃墟と化し、グラウンドもサッカーボールも、何もかもなくなった広島市の中心部で、ひもじい思いをしながら根性を培い、たくましく成長した原爆少年だった。

「W杯サッカー日本の礎」という副題を持つ本書は、原爆後、広島が高校サッカー王国と呼ばれるようになるまでの苦闘や、黄金時代の記録をたどっている。そこには、広島の、日本のサッカー少年に魂を受け継いでいってもらいたいという願いが込められている。

3位 とまらない

著者:三浦知良
出版社:新潮社
定価:本体680円+税

 本書は、前著『やめないよ』と同様、日本経済新聞に隔週で連載されたコラムをまとめたものである。彼のサッカー哲学は、ビジネスでのリーダーシップやマネジメントに通じると、日経は考えたのだろう。私が愛するサンフレッチェ広島について書かれた部分はまさに「組織論」。以下、引用してみる。

サッカーチームには若手がいて、中堅がいて、ベテランもいて、バランスが取れて活気のある組織が強い。リーグ連覇したサンフレッチェ広島はいい例。集団として「これをする」ということをみんながわかっていて、積み重ねがある。ペトロビッチ監督のもとでJ2に降格しても監督は代えなかった。我慢する人事のできる、そんな組織になっている。

 私も読んでいて、自分の仕事と重ね合わせ、参考にしたい部分がたくさんあった。

2位 サッカーデイズ

著者:杉江由次
出版社:白水社
定価:本体1,600円+税

 熱狂的浦和レッズサポーターとして名高い「炎の営業マン」こと杉江由次さんが、自身のサッカーライフを描いた感動エッセイ。

 地元の少女サッカーチームに入った娘。そして、チームからの頼みを断り切れず、引き受けた“お父さんコーチ”。サッカーはやるのも見るのも大好きだけど、教えるなんてやったことがない。やがて始まる七転八倒の日々。サッカーを通じて娘やチームメイトの成長ぶりを目の当たりにするのは幸せなことだ。しかし、“お父さんコーチ”が一番成長したような気がする。

 悩み、苦しみ、練習に明け暮れる日々があったからこそ味わえる、敗戦の悔しさや勝利の喜び。私たち読者にも抱えきれない感動を与えてくれる一冊だ。

1位 ここからはじまる

著者:はらだみずき
出版社:新潮社
定価:本体1,500円+税

 デビュー作『サッカーボーイズ』(角川文庫)以来、はらだみずきさんの小説が好きで、欠かさず読んでいる。少年サッカーを題材にした作品が少なくないが、サッカー選手に限らず、家族やコーチといったまわりの人にもスポットを当て、互いの成長を描くところが大好きだ。

 本書『ここからはじまる』は、サッカーチームに所属する小学四年の息子を持つ父親が主人公。運動神経はそれほど良くないが、次第にサッカーへの思いが強くなる息子に対し放任すべきか、バックアップすべきか、立ち位置に悩む。いつしかサッカーをやっていた頃の自分と照らし合わせている。等身大の親子の成長の物語は、ほろ苦さもあるが、ラストはとても清々しい。

児玉憲宗(こだま・けんそう)
株式会社啓文社 執行役員店売本部長兼商品部部長
広島県、岡山県を中心に展開する書店チェーン啓文社の本部で働いています。『尾道坂道書店事件簿』(本の雑誌社)というエッセイを出しています。サンフレッチェ広島が好きで、Eスタによく行きます。実は私も15年ほど前から車椅子で仕事をしているので、自称「書店業界の羽中田昌」。啓文社の詳細はこちら(http://www.keibunsha.net

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