『サッカーフリークの書店員によるブックレビュー』は、当サイトの運営会社である株式会社フロムワンの企業理念、「日本のサッカー文化の普及啓蒙」を推し進めるためのコーナー。現場のプロフェッショナルたちが、それぞれの視点で、サッカー文化の成熟を促してくれる書籍を取り上げます。
初回の企画は「書店員一押し！ ワールドカップをとことん楽しむためのサッカー書籍ベスト5」。今回は、大分県の明林堂書店にお務めの前畑文隆さんが、ブラジル大会を思いきり満喫するための必読書5冊を紹介してくれました。
オススメ 1 フットボール百景
著者：宇都宮徹壱
出版社：東邦出版
定価：本体1,500円＋税
帯にあるのは「フットボールを巡る『ちょっと幸せになれる』100＋1の情景」という惹句。
週刊誌隔週連載の全120回（2008年7月～2013年7月）のコラムから厳選された100本を収録。この間に日本（と日本人）が経験した2010年のワールドカップ南アフリカ大会、2011年の震災と女子ワールドカップ、振り返るとそれぞれが大事な通過点であり、そこを経てきたこの国のサッカー界が今どんな位置にあるかが分かります。
世界各地、日本国内各地の写真も美しい。Twitterで著者をフォローすると一層親近感を持って読むことができます。
オススメ 2 ゴールのあとの祭り
著者：西部謙司
出版社：ベースボールマガジン社
定価：本体1,500円＋税
週刊誌連載、同名のコラムからいわく「比較的新しいものを100回分選んだ」。『フットボール百景』と違って図版がなくテキストばっかりですが、そこは西部さん、読ませてくれます。
その一番最後が「長友3人、柿谷100人」、2013年10月の記事である。「えっ？ サカマガっていつが最後だったっけ？」と思ってしまうほど最近の内容です。セレッソのホームゲームを観た帰りの地下鉄御堂筋線、乗客のピンク率の高さに圧倒され、その背番号のほとんどが8番だったという。写真がなくてもその壮観さは容易に想像できます。
このワールドカップが終わった後、子どもたちは誰のユニフォームに憧れるのだろう。
オススメ 3 サッカーは最初の5分を見よう
著者：後藤健生
出版社：学研パブリッシング
定価：本体1,400円＋税
タイトルに誘われ、「最初の5分」だけ観れば楽しめるんだな、よし、これで通ぶってみるかな、と思って目次を一見すると、サッカー観戦は試合が始まる前から終わった後まで一瞬たりとも気を抜けないことを思い知らされ、ちょっと身構えてしまいます。
でも「東京オリンピックから現代まで5000試合を現場観戦」した著者の後藤さんが興味深いエピソードをもとに優しく手取り足取り教えてくれるので、読み始めたら一気、最後には本当に「通」になっていること間違いありません。
オススメ 4 こう観ればサッカーは0－0でも面白い
著者：福西崇史
出版社：PHP研究所
定価：760円＋税
今大会の代表23名の選出に際し、ザッケローニ監督が最も悩んだのがボランチだった。この位置を誰にするかで他のポジションの人数が決まったという。
Jリーグ史上最強と言われたジュビロ磐田の黄金期を当時のブラジル代表キャプテンであったドゥンガとともにボランチで支えた福西氏による、ボランチの視点からのサッカー観戦法。ザック・ジャパンがなぜ「4－2－3－1」のフォーメーションを採用しているかがよく分かります。
聡明なスタイルとは裏腹に、ガツガツいくフィジカル的なプレーとマリーシアを生かした守備を得意とした福西氏は現在、NHKでサッカー解説をされており、今大会も数多くの場面でお目にかかれるでしょう。この本があればなお一層楽しめるはず。
オススメ 5 サッカー選手の言葉から学ぶ成功の思考法 2014
著者：サッカーキング編集部
出版社：朝日新聞出版
定価：1,300円＋税
タイトルからちょっと面倒くさい（失礼！）自己啓発本かと勝手に思い込み、敬遠しそうだったが読んで納得。選手それぞれがいろんな思いで戦っていることを知り、この人たちになら任せられる、この人たちをなんとしてでも応援しよう、という気にさせられます。代表選手の選手名鑑と併せて読むと楽しさ倍増です。
あえてここでは代表に選ばれなかった一選手の言葉を。
「今の代表メンバーはみんな《世界一》を狙っている。『ウソだろ？』って思うくらい真剣で純粋に」
いいなあ。
前畑文隆（まえはた・ふみたか）明林堂書店 大分本店 スタッフ
明林堂書店は大分県別府市に本社を置く書店チェーンです。ワールドカップ期間中、明林堂書店各店で「頼むぞ僕らの代表！SAMURAI BLUE ワールドカップ応援フェア」を開催中。大分本店では1・2階各フロアに特設コーナーを設けています。僕らの代表をみんなで応援しましょう！