2014.03.15

バルサイズムの継承者を探せ…偉大なベテランたちの意志を継ぐ理想の人材とは

[ワールドサッカーキング2014年4月号掲載]

ビクトル・バルデスとカルラス・プジョルが退団の意思を表明し、これまで先送りにしてきた後継者探しがいよいよ急務となった。クラブは偉大なベテランたちの意志を継ぐ理想の人材を確保できるのか。
プジョル、シャビ
文=工藤 拓 Text by Taku KUDO
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

世代交代の必要性がすぐそこまで迫る

 ジョゼップ・グアルディオラの下で3冠を成し遂げた2008-09シーズン以降、バルセロナはクラブ史上最高の黄金期を過ごしてきた。だが、人々は言う。「サイクルの終焉」は確実に近づいてきていると。

 もちろん、そう指摘されるのには理由がある。既に守護神ビクトル・バルデスが今シーズン限りでの退団の意思を表明。膝のケガから復帰後も満足なプレー機会を得られずにいるカルラス・プジョルも、つい先日、バルサ退団の意思を固めた。更に34歳を迎えたチャビも数年前から両足アキレス腱に慢性的な痛みを抱え、週2試合ペースの過密スケジュールに体が耐えられなくなってきている。

 代えの利かない存在として長年チームを引っ張ってきた彼らの穴を埋めるのは簡単なことではないが、本人の意思や時の流れに逆らうことはできない。世代交代の必要性はすぐそこまで迫っており、クラブは本腰を入れて彼らの代役探しに動き始めている。

 V・バルデスの後釜は以前から報じられてきたマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンでほぼ決まりのようだ。一時はアトレティコ・マドリーのティボー・クルトワも有力候補に挙がっていたが、こちらは保有権を持つチェルシーが売却に応じる気配がない。テア・シュテーゲンは1月にボルシアMGから提示された契約延長オファーを拒否、既にバルサの医療スタッフが極秘にメディカルチェックを済ませたとも言われている。

 ただ、経験がモノを言うこのポジションに、リーガでのプレー経験がない21歳を抜擢するリスクは小さくない。しかもバルサのGKには相手のプレスが掛かっている状況でもロングボールに逃げず、リスクを負ってショートパスをつなぐ度胸と足元の技術が求められる。また、味方が常にボールを保持しているため守備のリズムを作りにくい反面、数少ない出番でミスを犯そうものなら戦犯として非難される。つまり、バルサのGKは非常に損な役回りを強いられるポジションなのだ。

 V・バルデスでさえ苦しんできたこのプレッシャーは、恐らく経験してみなければ分からない。若きドイツ人GKがバルサで成功するためには、何より強じんな精神力が必要になってくる。

センターバックは即戦力を優先か

 数年前から先送りにしてきたセンターバックの補強も来夏は急務となる。守備能力は当然として、前掛かりに攻め続けるバルサにおいては、広大な守備範囲をカバーできる機動力とスピード、そしてGKと同様に足元の技術も必須となる。更に現チームの弱みである高さまで補う選手となると、現状では移籍金の高さを理由に獲得を断念したチアーゴ・シウヴァやレアル・マドリーが手放すとは考えにくいラファエル・ヴァランぐらいしか見当たらない。

 他の候補としてマッツ・フンメルス、マルキーニョス、ダヴィド・ルイスらの名前も挙がるが、金額の割に力不足の感が否めない上、軒並み何かが欠けている。その点、既にリーガで実績のあるマテオ・ムサッキオやイニーゴ・マルティネスは即戦力となり得るが、こちらもある程度の出費を覚悟しなければ獲得は難しいだろう。

 個人的にはリーガでの経験、手頃な移籍金、必要な能力を網羅し、左サイドバックにも対応するジェレミ・マチューが最も現実的なオプションだと思う。マチューも故障の多さ、30歳という年齢のデメリットはあるが、プジョルに加えてハビエル・マスチェラーノの退団まで噂され始めただけに、年齢、金額のどちらかを妥協してでも即戦力として使える選手を取っておくべきだろう。

チャビの後継者擁立は実質的に不可能

 来夏の必須項目ではないものの、「チャビ後の世界」もそろそろイメージしておかなければならない。チャビがもたらす独特のプレーリズムはバルサにとって唯一無二。最も近いタイプだったチアーゴ・アルカンタラが移籍してしまった以上、後継者を探すのは恐らく不可能だ。何せ、アンドレス・イニエスタやセスク・ファブレガスでさえ真似することができないのだ。

 もっとも、チャビと同タイプではなく、彼がいなくなった後にどんなMFが必要かと考えれば選択肢は広がってくる。現チームにない要素という意味では、来シーズンからトップ昇格するラフィーニャは面白い存在だ。他のラ・マシアの選手にない馬力を持ち、インサイドMFに加えて右ウイングや偽9番としてもプレー可能。外部からの候補ではダビド・シルバやコケの名前も挙がっているが、GKとセンターバックの補強が優先される来夏は、高額な移籍金がネックとなりそうだ。

 幸い、チャビの引退まではあと2、3年の猶予がある。その間にBチームのセルジ・サンペールや、現在獲得交渉中のクロアチアの新生、アレン・ハリロヴィッチといった10代の選手の台頭に期待するのも面白いだろう。

 いずれにせよ、一時代を築いたV・バルデスやプジョル、チャビが去った後のバルサが今とは別のチームになるのは避けようがない。この先どれだけタイトルを勝ち取ったとしても、我々はいつまでも「あの頃のバルサ」を懐かしむことだろう。