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J2への復帰を目指すガイナーレ鳥取開幕直前レポート

2014.03.08

 J1、J2が先週末に開幕し、今シーズンから新設されたJ3リーグが、3/9(日)にいよいよ開幕する。昨シーズンJ2で戦ったガイナーレ鳥取は今シーズンJ3の舞台で戦う。1年でJ2に復帰すべく、昨年までガイナーレでプレーしていた岡野雅行氏を新GMに、監督に松波正信氏を迎えたチームの今を聞くために、雪が降る鳥取を訪れた。
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J2昇格とJ3降格

 2009年シーズン途中、JFLで戦うガイナーレに移籍した岡野雅行。現役生活最後の4年半を過ごしたチームで2010年にJ2昇格、そして2013年にはJ3降格を味わった。数々の栄光と挫折を経験した彼にそのことを尋ねた。「現役生活20年間、本当に最高でしたね。教わったことがいっぱいあって、最高に楽しかったですし、僕みたいな無名な選手がみなさんにあそこまで支えられるとは思ってなかったです。最高の一言ですね。鳥取に来た時はJFLで、とにかくJ2に上げてくれというのが条件でした。移籍した次の年のシーズンにJFLで優勝し、J2に昇格できました。ジョホールバルのVゴールじゃないですけど、それくらい本当に嬉しかったですね。このチームでもJにいけるんだって、僕はちょっと奇跡だと思いました。ガイナーレって手作りのチームなんですよね。今、GMという仕事をしているから分かるんですけど、母体がないものを作る、何もない状態からチームを作ってJに上がれたっていうのが本当にすごいと思うんですよ」と語ってくれた。しかし続けて、「でも、現実はなかなか甘くなかった。チームも出来たばっかりだったので、Jリーグはレベルが高いっていうのは実感しましたね。チームのみんなもそうだと思いますけど、今回の降格でまざまざと思い知らされました。僕も20年間やってきましたけど、上がってからが勝負だっていうのを体験できました。選手はもちろん、フロントもそうだと思うので、そこは反省ですね」と昨シーズンを振り返った。

とにかく走る、とにかく動く

 GM就任のいきさつを聞くと、「J3に落ちたら現役を引退しようと思っていたので、東京に戻って何か仕事しようかなと考えていたんです。ただ、5年近く鳥取にいて色んな方にお世話になりましたし、そのままサヨウナラというのは何だかなという思いもありました。だけど、何をすれば分からなかったし、他のことをやったこともなかったので。そんな時に、社長から『GMをやらないか?』と言われました。『GMなんてできないですよ』って言いましたけど、現場が一番弱いから、とにかくチームづくりをしてくれと言われて、それならいいですよって引き受けました。もちろんデスクワークなんてできないですし、でも自分ができることを精一杯やろうと思って。ガイナーレのために役に立てるならと思って引き受けました」と語ってくれた。また就任から約2カ月、現在の状況を聞くと、「今、現場はすごくうまくいっているので、非常に期待しています。現場がやりやすいように、チームが良い方向に向かうように、必死で営業活動をしています。色んな方に頭を下げてお願いに行ったりっていうのは、実は現役時代もしていたことなので、その延長戦上にいるって感じです。ただ、フロントに入って感じたのは、本当に大変だなって。こういう人達がいてチームが成り立っているんだなって実感しています。選手の時の方がよっぽど楽ですよ(苦笑)。手作りでつくってきたので、普通だったらしなくていいこともしなきゃいけない。全国を動きまわって頭を下げて。分刻みで動いてます。とにかく動きまわって、色々なところに顔を出してガイナーレのためになればなと思います。選手の時と一緒ですけど『とにかく走る、とにかく動く』っていう。GMはゼネラルモーターズの略だって自分では言ってます(笑)」と、現役時代とそのスタイルは変わっていない。

開かれたクラブに

 3月2日、サポーターとの意見交換会「岡野GM座談会」を初開催。クラブの方針や運営、今シーズンのチームづくりなどについて意見を交わした。

「ガイナーレって今までサポーターとの座談会っていうのをしてなかったんですよ。そりゃやらなきゃまずいだろうって。で、僕が提案したんです。僕らはお客さんが来てくれて成り立っているから、お客さんの意見は絶対に無視しちゃいけない。だから僕は選手の時から、サポーターの方とご飯を食べに行ったりしていましたし、神戸の時なんかはサポーターと横断幕を一緒に作ったりしましたね。サポーターの声はちゃんと聞かなきゃって。意見交換会は毎月できればと思っています。今回は大きな形になっちゃいましたけど、今後はマスコミを入れないで食事をしながら色んな話ができればいいですね」

「J3に落ちたのは、もう一回やり直すチャンスだと思ってます。今まではバラバラだったと思うんですよ。J2に上がってから満足してしまったというか。みんなの意見がバラバラになったような感じがして。僕はみんなが一つにならないと絶対に良いチームになるとは思わないんです。ただでさえ小さい町ですから、選手・フロント・サポーターが一つにならないと。だから、色々な方の力が必要なんです。二度と同じ結果にならないように、今、僕は土台づくりをしてるんです。そのためにも、今までやってなかったことをやっていきたいですね」

ガイナーレを全国のみんなに知ってもらいたい

 また、将来の目標について、「鳥取って、僕にとっては田んぼしかないイメージだったんですよ。そこにサッカーチームができるっていうのは想像もつかなかった。でも、その鳥取のチームがJに上がったというのはまぎれもない事実です。チームも認知されてきたし、地域の皆さんがサッカーの話をされているのを耳にするので、もっと強くならないといけないなって思います。ガイナーレを全国のみんなに知ってもらえるように、鳥取といえばガイナーレという風にならなきゃいけないなと。あと、サッカーを通して鳥取を知ってもらえるように。いずれはサッカーといえば鳥取と言ってもらえるようになりたい。代表クラスの選手がガイナーレでプレーしてるってことになるのが理想ですね」と語ってくれた。

監督就任のいきさつ

 今年、2年振りにJの舞台に戻ってきた松波監督に就任のいきさつを聞くと、「指導者といった現場から1年間離れて、解説者などの仕事をしていました。違う角度からサッカーを見たり、いろんな方と話をする中で、『また現場に戻りたい』っていう思いが湧いてきたんです。そんなタイミングで岡野GMが大阪まで来て頂いて、お話しさせて頂きました。J3になって新たにチャレンジしたいといった中でお話を頂けたのは光栄でした。どこのチームでも良いというわけじゃなくて、しっかりしたビジョンや情熱があるチームでとは思っていました。岡野さんの情熱やガイナーレの可能性。規模的にもビッグクラブとは違うので、自分のチャレンジとしてはいいんじゃないかと。自分自身、これからキャリアを積んでいかなきゃと思っていたので、すぐに答えは出ました」と語ってくれた。

 就任して1ヶ月強、チームの印象を聞いてみると、「クラブとしては、手作り感があるなと。YAJINスタジアムにしろ、とりスタにしろ、サポーターとの距離が近くて非常に良い環境だなと思いました。また、地域に愛されるクラブになるために何かを生み出そうという社長の発想がたくさんあるところは勉強になります。実現していけば、Jリーグの理念である地域に根ざしたクラブになるんじゃないかと思いました。もうなってるんですけど、もっともっと鳥取に無くてはならないクラブになるんじゃないかという可能性を非常に感じました」とコメント。

 また、選手達に関しては、「若い選手が多く、プロフェッショナルに対する意識はまだ低いです。そこは小針であったり倉貫であったり、経験ある選手が伝えている部分と、なぜ彼らが長くプロでやっていけているかっていう良い手本があるので、そこを学んでいって欲しいですね。プロは結果を出さないといけないので、そのために自分が何をやらないといけないか考える必要があると伝えています。すべて自分に返ってくることなので、自分にしっかり投資をするというか。もちろん練習も必要ですし、休むことも必要です。色んな誘惑もあるだろうけど、そういったところに情熱を注がないといけないよと言っています。ただ、まだまだ余白が残っている可能性を感じられる選手が多いので、なにかきっかけができれば、選手としてJ1にだって行けるポテンシャルはあると思いますし、チームとしても非常に可能性を感じています」と答えてくれた。

開幕前のチームの雰囲気

 開幕まであと数日。チームの状況を指揮官に聞くと、「先週の日曜あたりから緊張感が出てきた感じですね。選手の表情が硬い気はします。仕上がり状況は、攻撃の質をもっともっと上げていく必要があると感じています。ただ、まだまだ開幕前ですし、伸びる要素はあるんじゃないかと。最初のスタート時点よりは5割6割といったところには来ていると思いますね。いまさらバタバタということでもないので、今までやってきたことを100%やれば結果はついてくるのかなと。開幕戦は硬い試合になると思います。我慢する時間が多くなると思いますが、自分達の時間が来るのを待って、そこをいかに生かすことができるかがカギですね」と、マイペースを崩さない姿勢を見せている。チームが着実に育っている証拠だろう。

今シーズンの抱負

 松波監督は今シーズンの抱負を、J3という新たなリーグと絡めて「U-22選抜とかも入ってきて、新設されたリーグっていう面では注目も高いと思います。その中で結果を残すっていうのも鳥取としては歴史に残るんじゃないかなと。そういった意味では価値のあるリーグではないかと思います。J2昇格とJ3優勝。これは選手・スタッフ・クラブとも共有していることなので、それに対して自分のできることを1年間100%やりきることですね」とコメント。また、岡野GMは「うちがJ2にいたっていうことでは、Jリーグを一番経験しているのだから、立場的に勝っていかなきゃいけない、絶対勝たなきゃいけないんですよね。そして、地域のみなさんがもっと関心持ってくれるように。そのためには強くないといけないですし、まずはJ2に戻るってことですね。その一点に今年は絞っていきたいです」と、Jリーグで戦ってきたチームとしてのプライドを覗かせている。

「強小六年 不撓不屈」をスローガンに掲げた今シーズン。J2返り咲きに向けて、撓まず屈せず最後まで戦い抜く姿を見せてくれるに違いない。

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