「おはようございます。2日間よろしくお願いします」
添乗員として、ACLアウェイ浦項スティーラーズ戦の観戦ツアーに参加してくれたお客さんに挨拶していると、感じの良い紳士が近づいてきた。
「岡山さん、今回のツアーよろしくお願いします」
セレッソ大阪の岡野雅夫社長だった。
「今回、僕の提案を受け入れていただき、ありがとうございました」
「うちのサポーターの皆さんも、とても楽しみにしているみたいだよ。今回の取り組みをきっかけに、セレッソ大阪と奈良クラブが良い関係を築いていきたいね」
「奈良クラブとしてお願いがあります。フォルラン選手に奈良クラブのユニフォームをプレゼントして、一緒に写真を撮りたいんですが、よろしいですか?」
「あはははは、いいですよ。スタッフに言っておきます。良い写真が撮れるといいね」
セレッソのサポーターだけでなく、全国のサポーターが注目しているフォルランは絶大な宣伝効果がある。大金をかけて獲得した選手やから、普通は難色を示しそうなものなのに、二つ返事で了解してもらえた。ありがとうございます。
セレッソ側のOKはもらえたから、次はスタンドでなく、スタジアムの中に入るパスを手に入れないとアカン。
Kリーグだったら浦項側に頼むだけで済むから簡単やけど、ACLはAFCが管轄しているから、顔パスでは入られへん。
「キドンヒョン、オレマンナミダヨ(キドン先輩、お久しぶりです)」
浦項時代のチームメートで、現在は韓国オリンピック代表でコーチを務めるキム・ギドンさんにスタジアム中を回れるパスの手配をお願いして、VIPのパスを手に入れた。
これで、どこにでもいける。
まず向かったのが、4年ぶりとなる浦項のサポーター席。
「お久しぶりです。帰ってきました。今は奈良クラブというチームで選手を続けています。みんな奈良に遊びに来てください」
俺が在籍していた時のコールをしてくれた。みんなが憶えてくれてたのがうれしかった。
セレッソ大阪側のゴール裏スタンドにも行った。
「オフィシャルツアーの添乗員として来た岡山です。本当はここで一緒に応援するのが筋かもしれないけど、両チームの応援をしているので、今日は真ん中で見ています。セレッソ大阪も頑張ってください」
どっちにもええ顔をして、他のチームのサポーターに出しゃばり過ぎやと思われても仕方がないのは分かっている。
18年で10チーム。しんどかったし、ツラかったし、いろいろな想いがある。それでもホンマに良かったと今なら言えるから、大目に見てほしい。
今年のACLには自分がプレーしたことのあるチームが4つ(横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、セレッソ、浦項)が出ているから、どこも優勝してもらいたいと願っています。
浦項とセレッソの試合は1-1の引き分けやった。
試合後、ミックスゾーンで取材を終えたフォルランに最大のミッション遂行の為に話しかけた。
不思議そうにしているフォルランにガンジーさん(白沢敬典通訳)が言ってくれた。
「奈良クラブはJリーグを目指していて、チームの認知度を上げるためにユニフォームをプレゼントする文化がある。だから、もらって一緒に写真を撮ってあげて」
ポルトガル語は分からんけど、たぶんこんな感じを言ってくれたはず。前監督のクルピさんに手渡す時に奈良クラブのスタンスを理解してくれていて、俺が言った以上に想いを伝えてくれた。
試合で結果を出せずに不機嫌やったフォルランが笑顔になって、良い写真が撮れた。ガンジーさん、ホンマにありがとうございました。これで練習を休ましてくれた奈良クラブのみんなにも顔が立つな。
最後にどうしても俺個人がやりたかったことをした。
どこからもオファーがなく、自分が何者なのか見失いそうになっていた俺を、サッカー選手に戻してくれたスティールヤードで、浦項のユニフォームを着て、思いっきり走った。あの頃の思い出とこれからの自分を噛みしめながら。
「皆さん、本当にありがとうございました。添乗員としては自分勝手な行動ばかりしてすみませんでした(笑)。だけど、サポーターの人たちがどれだけチームのことを想っているのかを改めて教えてもらいました。今度は奈良クラブの試合後に俺が添乗員になって奈良観光をする企画を立てるんで、そちらにも参加してください。それではあの掛け声でしめましょう。皆さん、大きな声でお願いします。Jリーグはセレッソ大阪! 地域リーグは奈良クラブ! ありがとうございました」
岡山一成添乗員、奈良でもするので乞うご期待。
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