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[FUJI XEROX SUPER CUP 2014特別対談]佐藤寿人(広島)×富澤清太郎(横浜FM)

2014.02.03

昨シーズン、最終節の大逆転劇でリーグ連覇を成し遂げたサンフレッチェ広島。一方、その広島にリーグ優勝をさらわれながら、決勝で広島を下して天皇杯を獲得した横浜F・マリノス。Jリーグの覇権を争った両クラブが2月22日、2014シーズンの幕開けを告げるFUJI XEROX SUPER CUP 2014で相まみえる。国立競技場での最後の開催となる同大会に向けて、新シーズンに向けて気持ち新たに臨む両クラブの主力選手がピッチ外で直接対決! 今回の特別対談に登場してくれたのは、U-16日本代表時代から旧知の仲だという二人。広島が誇るエースストライカー佐藤寿人、横浜FMの中盤を絶妙なバランス感覚でコントロールする富澤清太郎の両選手が率直な意見をぶつけ合った熱いトークをお楽しみください!

インタビュー・文=青山知雄(Jリーグサッカーキング編集長) 写真=兼子愼一郎

――佐藤選手と富澤選手は年齢が一つ違い。これまでも接点はあったんですか?

佐藤寿人 カンペー(富澤)とはU-16日本代表で一緒だったので、もうかなり長い付き合いになりますね。

富澤清太郎 懐かしいですね(笑)。

佐藤寿人 カンペーはもう天才でしたよ。僕は早生まれ組だったので、カンペーよりも学年は一つ上なんですけど、僕が入った時期にはもうチームができ上がっていて、そこに追加で入ったんですよ。カンペーはそのチームの中心選手だったので、年下だけどすごい選手がいるなと思ってました。

富澤清太郎 そんな褒めてもらっても……。そんなふうに見てたんですね(笑)。でも、ヒサ(佐藤)と今年横浜FCに移籍した飯尾(一慶)くんが早生まれでチームに加わって、その二人のチームだったと思うけど。

佐藤寿人 いや、そんなことはないでしょ。

富澤清太郎 二人の活躍がチームを勝たせてくれるか勝たせてくれないかみたいな。

当時はどんな選手だったんですか?

佐藤寿人 カンペーは前目のポジションだったよね。主にトップ下で、FWもできるタイプ。

富澤清太郎 まだボランチはやってなかったね。

佐藤寿人 今とは全然違う選手だったんで、プロに入ってプレースタイルが変わったなって思いますよ。でも、カンペーってシュートがうまいじゃないですか。それは昔からだから、知らない人はびっくりしたかもしれないですけど(笑)

――一方、当時の佐藤選手は?

富澤清太郎 ヒサは当時から完全にストライカーでしたね。プロになって、動き出しとかのプレーがさらに磨かれた感じがします。当時は結構強引に仕掛けてた印象があるんで。もちろん昔から左足はすごかったし、難しいシュートも簡単に入れてしまう。まあ、そこは今でも同じですけどね。

佐藤寿人 さっき、ちょうどカンペーと話してたんですけど、当時のU-16日本代表(U-16アジアユース選手権1998@カタール)のメンバーで今シーズンもJ1でプレーする選手を探していたら、僕たち二人しか残ってないんですよ。

富澤清太郎 たぶん、そうだと思うんです。

佐藤寿人 そういったところでも、自分たちが頑張らなきゃって思いますね。

――そんなお二人は現在、サンフレッチェ広島と横浜F・マリノスに分かれてプレーしています。昨シーズンの成績を見ると、広島がリーグ連覇を成し遂げ、天皇杯は準優勝。横浜FMはリーグ2位で天皇杯を制しています。今、最も覇権を争っているライバルと言っていい存在かと思いますが、昨シーズンの直接対決は横浜FMが3戦全勝を収めながら、リーグは広島が最終節の大逆転劇で連覇を達成しました。お互いのチームに対して、いろいろな思いがあるかと思います。

佐藤寿人 昨シーズンの対戦(第5節/2013年4月6日@エディオンスタジアム広島)ではカンペーにものすごいミドルシュートを決められて負けたんですけど、実は昨年の3敗だけじゃなくて、一昨年もカンペーに決められてて結果は1分け1敗。だから横浜FMには2年間勝ってないんですよ。

富澤清太郎 僕、引き分けの試合は出場停止だったと思うんですよね。

佐藤寿人 じゃあ、もしカンペーがいたら……(苦笑)。そういうこともあって、最近は勝てていない印象はもちろんありますよ。でも、それは苦手意識じゃなくて、本当に横浜FMが強いんだと思いますし、自分たちは最後の最後でリーグ優勝できましたけど、向こうはずっと首位にいて、僕らは追い掛ける立場でしたから。それに昨シーズンは3回対戦して3回とも負けてるんで、このままじゃいけないと思っています。今まで僕たちは自分たちのサッカーを貫くことで結果を出してきたけど、横浜FM戦に関しては多少は相手の長所を消しにいく必要があるかもしれないと思い始めてます。

富澤清太郎 でも、リーグ戦って年間を通じての結果じゃないですか。僕らは上位チームとの難しい試合で勝ちながら、下位相手に引き分けたり、中位に負けたり……。そういうところが優勝に届かなかった理由なんだと思う。もちろん広島も(勝ち点を)取りこぼす部分はあったと思いますけど、大きな取りこぼしが僕たちよりも少なかったんじゃないかな。広島はそういう部分で常にぶれず、自信を持って安定した戦いを見せて、落ち着いてプレーできた。だからこそ最後の最後で1位を持っていかれたんだと思うんです。

――直接対決は一方的な結果が出ていますが、素朴な疑問として、お互いにやりやすさ、やりにくさはあるのでしょうか。

富澤清太郎 僕としては広島戦が一番面白いんですよ。広島はボールをつなぐスタイルを前面に押し出して、自信を持ってプレーしてくる。僕はボランチだから本当に頭を使うんですよ。向こうがフリーでボールを持った時に相手選手のポジショニングを見て一足早く動き出したり、嫌なポジションを取られた時に自分がそれをどう消していくのかだったり、そういう頭脳戦をずっと繰り返しているわけです。体力的な部分よりも目と頭がすごく疲れる。でも今、一番やりがいがある相手ですね。

佐藤寿人 まあ、僕たちはやられちゃってるからね(苦笑)。自分たちは基本的にボールを保持して攻めるサッカーをやってきたけど、横浜FMと対戦する時は結構相手にボールを持たれる。キープ率はほとんど変わらないんじゃないかな。もちろん自分たちがある程度、守備ブロックを作って守っているから持たれてしまう部分もあるんですけど、横浜FMはボールを持たせたら仕事ができる選手ばかり。個人的な意見として思うのは、横浜FM戦ではやっぱり相手にボールを持たせてはいけないということですね。前からプレスを仕掛けて、向こうが大きく蹴らなきゃいけないくらいの展開に持っていかないと。横浜FMには時間と空間を与えたら何でもできる選手がそろってますからね。あと、対戦していてFW目線ですごいと感じたのが、一つのボール保持者に対してパスコースを作るサポートの動きが本当に多いこと。距離感と選択肢が多いので、前線の選手が孤立してしまうことが少ない。裏を返せば、僕たちはそこを孤立させなきゃいけないんですよね。そこは昨シーズンの対戦で感じた反省点です。

佐藤寿人

――かなり手の内を明かし合っていますね。

富澤清太郎 たぶん、この熱戦がどんどん成長していくんじゃないかな。横浜FMも自分たちのスタイルをベースに戦っているんですけど、広島戦は他のチームと対戦する時よりも相手の良さをどう消すかに気を使う必要がある。今言った部分だけじゃなくて、そういう積み重ねをしていくことでお互いに成長して、どんどんレベルの高い好ゲームになっていくんだと思います。あと、僕は個人的に広島との相性がいいので(笑)。

佐藤寿人 そうだよ。カンペーには昨シーズンも、その前のシーズンにも決められてるからね。しかも「これを決められたら仕方がない」っていう、普通じゃ入らないようなすごいゴールを。忘れもしないもん。エディオンスタジアムの試合で、大雨の中で決められたミドルなんて本当にすごい一発だった……。

富澤清太郎 あれは試合前から狙ってたんですよね。いけるんじゃないかって。

佐藤寿人 一昨年もすごくなかった?

富澤清太郎 一昨年はシュンさん(中村俊輔)のコーナーからの……。

佐藤寿人 ヘディングだ。

富澤清太郎 一応、自分なりには分析するんですよ。このチームにはこういう部分が狙いどころかな、とか。それが偶然ハマっただけかな。

佐藤寿人 でも、確かにうちがやられるとしたらこうだろうなというパターンで取られてる。横浜FMに対してはある程度、守備のブロックを低めに作ることで、どこかにエアポケットができやすくなる。だから遠目からシュートを打たれたことはあるんですけど、遠い位置から危ないシーンを作られることはそんなに多くない。それが素晴らしいコースに飛んで、なおかつ強烈なシュートだったんで防ぎようがなかった。セットプレーの失点も注意すべき点なんですけど、そこも一昨年に決められてるし……。しっかり抑えなきゃいけないですよね。俺がストライカーなのに、自分が1点も取ってなくて、カンペーに決められてるから、どっちがFWか分からない(笑)。

――じゃあ、富澤選手は今年も……。

富澤清太郎 もちろん狙っていきたいですね(笑)。

佐藤寿人 もう、カンペーは広島戦以外で活躍してくれよ(笑)。

富澤清太郎 広島戦が一番面白いからね。もちろんリーグ戦の一試合だし、普段どおりいくけど、燃えるっていうか、サッカーをやってるっていう充実感が強い。でも、広島戦に関してはチームのみんなにも勝ってる印象がないと思いますし。

佐藤寿人 あれだけ勝ってるのに? 俺たちなんて本当だったら“3度目の正直”で天皇杯で勝ちたかったのに、それも返り討ちにされてるんだよ。

富澤清太郎 広島戦の週はみんなの会話がすごく多くなるんですよ。相手の特徴を話しあったり、対策を練ったり。

佐藤寿人 俺たちからしたら、広島戦だけ余裕なんだろうなって思ってた。

富澤清太郎 違う違う。たぶん一番気にしてる相手なんだと思う。シュンさんも試合の映像をチェックして、相手がこう来るだろうから、うちはこうしようって積極的に話しかけて、チームメート同士の認識をすり合わせるようにしてるくらいだし。他の試合では見られない光景なんで。

佐藤寿人 そうなんだ。俺らとしては負けてる印象のほうが……いや、印象じゃないね。負けてるからね(苦笑)。だから今回のFUJI XEROX SUPER CUP 2014は本当にモチベーションが高いよ。さすがに4回連続して負けるわけにはいかないから。

――昨シーズンの大会は佐藤選手の素晴らしいゴールで広島が制しました。得点後に見せたリボンビジョンに流れる富士ゼロックス社のロゴを使ったゴールパフォーマンスも印象的でした。

佐藤寿人 大会を長くスポンサードしていただいている富士ゼロックスさんに対して、僕ら選手としては、その感謝の気持ちをゴールパフォーマンスで表現できるのではないかと思ってやらさせてもらったんです。でも、少し残念なことに自分たちの立ち位置がうまくいかず、テレビ画面にあまりうまく映らなかったんですよね。そこは反省材料です。

――今シーズンも何か考えているんですか?

佐藤寿人 まだ時間があるので、いいアイデアを選手の中で出し合っていこうと思っています。まあ、ゴールパフォーマンスをするためには、まずゴールを決めなければいけないんで、カンペーよりも先に決めたいですね。

富澤清太郎

――横浜FMはどうしましょうか?

富澤清太郎 どうですかね……。

佐藤寿人 何かやってよ。って、それだと俺らが決められちゃうことになっちゃうけど(苦笑)。

富澤清太郎 まあ比較的、ベテランが多いチームなんでね(苦笑)。

佐藤寿人 でも、ボンバー(中澤佑二)とか、結構好きなタイプでしょ?

富澤清太郎 大好き(笑)。案外嫌いじゃないと思うんだよね、あの人たち。

佐藤寿人 やられたくはないけど、じゃ……。

富澤清太郎 お願いされても責任は取れないですからね(笑)。じゃあ、ここはシュンさん、お願いします!

佐藤寿人 そういう部分でも大会を盛り上げていかないとね!

――いよいよ2014シーズン開幕、そしてFUJI XEROX SUPER CUP 2014が近づいてきました。昨シーズン、頂点を争ったライバルとの一戦は、新シーズンに向けた良い試金石になると思います。今大会に向けて、そして新シーズンに向けた意気込みをお願いします。

富澤清太郎 何としても(タイトルを)取りたいとみんなも思っています。ましてや相手が広島ということで、ワクワク感や楽しみが強いですね。内容はちょっと玄人好みの試合になる可能性があると思うんですけど、それこそチーム力や個の能力の高さが試される試合になるでしょうし、広島とのレベルの高い試合を制すことができれば、すごく自信にもなる。そういった部分をしっかり意識して、リーグ戦や9年ぶりの出場となるACL(AFCチャンピオンズリーグ)につなげられるような好ゲームをしたいですね。

佐藤寿人 今年はワールドカップイヤーということもあって、普段はサッカーを見ないような人も今年は意識的に見ようとしてくれているかもしれないと思っています。日本代表の試合もありますけど、身近に見れる試合と考えたら、開幕前はこのFUJI XEROX SUPER CUP 2014が一番のカードになると思うんです。そこで「やっぱりJリーグって面白いな」と思ってもらえるような試合をしたいし、もちろんサッカーファンの皆さんにそう感じてもらうことも大切。サッカーの楽しさを感じ取ってもらえるような、質の高い試合ができればと。それにここで勝つと負けるとでは、直後に始まるACLやリーグ戦への影響が違ってくる。もちろん内容は求めていきたいけど、この一戦では結果も大事したいですね。

――では、お互いに一言ずつメッセージをお願いします。

佐藤寿人 僕としてはカンペーにゴールを決められないように抑えて、自分がゴールを決める。それしかない(笑)。そうなればチームの優勝が近づくと思うので。とにかくカンペーにゴールを決めさせません。

富澤清太郎 そうですね……。ヒサにボールが入る時が広島の良い時だと思うんで、自分がゴールを決めることよりも、ヒサのところに縦パスが入らないように、今まで以上にしっかりと頭を使って、きっちりコースを切っていきたいと思います。

佐藤寿人 そうなんだよ。切られると本当に動きようがないんだよ。お願いだからコースを空けてくれって感じ。

富澤清太郎 ダメです(笑)。

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