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国際育成コーチに聞くチェルシーの指導法「サッカーを楽しみながら」

2013.10.27

 プレースタイルや性格が異なる十人十色の選手を育て上げる。ヨーロッパでは、一流クラブの多くがこの教育現場に近い繊細さが求められる若手育成という分野で成功を収めている。下部組織から昇格し、10代にしてトップリーグでデビューを果たす選手は数多い。こうした人材を育て上げるメソッドというのは、サッカー好きならば興味が湧いてしまうものだ。

 10月25日に神奈川県横浜市のマリノスタウンで開催された「チェルシーのFC技術、情熱すべてをキミに」というスローガンを掲げる『adidas Chelsea FC Clinic 2013』は、そんな探究心を満たしてくれる絶好の機会となった。

 チェルシーは、若手の登竜門と言われるFAユースカップを2010年と2012年に制したほか、2013年に準優勝を収めるなどアカデミーで特出した成績を残している。過去にはジョン・テリー、ジョシュ・マクイークランなど一流選手を排出してきた。こうした実績を持つチェルシーアカデミーの若手育成に関するビジョンとはどのようなものなのだろうか。クリニック後、日本の子供たちを直接指導したチェルシーの国際育成コーチであるジュリアン・ハート氏に話を聞いた。

–今回のクリニックを通して、子供たちに伝えたかったことは何ですか?
「短い時間で指導するのは非常に難しいのですが、まずはチェルシーのスタイルを紹介したいと思いました。創造力を生かす速いサッカーです。近年のチェルシーは、そうしたサッカーで様々なタイトルを獲得してきました」

–今回のクリニックに参加した年代の子供たちの育成で意識しなければいけないことは?
「13歳くらいの子供は、一人ひとり成長する時期が違うので難しい質問ですね。まずは、サッカーを十分に楽しむことが大事だと思います。また、サッカーはチームスポーツですが個人プレーを生かす場面がありますので、その部分に取り組まないといけません」

–チェルシーでもそうした指導をしているのですか?
「そうです。チェルシーでは1年間を通して様々な練習に取り組んでいます。アタッカーならばディフェンス。様々なシチュエーションを用意し、苦手なプレーや経験したことのないポジションでプレーさせます」

 クリニックを通して感じたのは選手を型にはめない指導だ。ミニゲームではフィールドプレーヤーがゴールマウスを守り、GKはピッチ横でフリーマンとなって試合に加わっている場面が印象的だった。様々な経験を積むことで長所と短所を認識させ、異なるポジションの考え方を身に付けさせる。ハート氏が語った指導法を垣間みることができた。

 また、興味深かったのはゴールセレブレーション。クリニックではシュートを決めた子供に、必ずゴールセレブレーションを課していた。緊張を和らげることが目的の1つだったが、子供たちにとっては新鮮に映ったようだ。

 クリニックのMVPを受賞した子供の1人は、印象に残った場面にゴールセレブレーションを挙げていた。普段は求められない感情を表現する方法に苦戦していたようだが、照れながらも独自に編み出したパフォーマンスを披露する子供もいた。こうした遊び心から自由な発想が生まれ、プレー中のアイデアへと変わっていくのかもしれない。

 型にはめない指導と、サッカーを楽しむ遊び心。2時間程度のクリニックで少しだけ触れることができたチェルシースタイルは、参加した子供にとっても、取材者にとっても貴重な経験となった。

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