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[リーダー対談]長谷川健太(ガンバ大阪)×貴乃花光司(貴乃花部屋親方) 「家族と同じです。本当の自分の子供ぐらいの感覚はありますね」

2013.10.18

写真=静岡朝日テレビ

 10月8日にガンバ大阪の監督、長谷川健太氏の著書『一流のリーダーたちから学ぶ勝利の哲学 今すぐ実践したい指導の流儀』が発売された。著者とスポーツ界&教育界の名将たち7名による対談集で、一流の指導論や組織論、マネジメント論を気楽に学ぶことができる本書から、貴乃花光司親方(貴乃花部屋)との対談の一部を紹介する。

長谷川 稽古を見学させていただいて、すごく熱くなりました。見ていて疲れるくらい鬼気迫るものがあったんですけど、毎日あんなに練習されてるんですか。

貴乃花 そうですね。大体ああいう感じでやってます。気を抜いて大怪我をして再起不能ということだけは避けたいので、どうしても厳しいところは厳しくなってしまいます。

長谷川 毎日あれだけ練習して、怪我をしないほうが不思議なぐらいですね。

貴乃花 ええ。ただし、転び方ですとか、そういう訓練をしながらやっていますので。相撲の場合、何トンもの当たりの比重がありますから、怪我だけは気をつけないと。そこに関しては、教えるほうとしても危機感を持っています。

長谷川 稽古中にも、転び方とか手のつき方とかを仰っていましたね。

貴乃花 はい。体重がある子たちなので、丸く転ばないといけない。転んだだけで手首を折ったりしますから。相撲は際どいときこそ顔から落ちろとよく言われるんです。早く手をついたほうが負けですしね。

長谷川 すり足で寄っていけという話をされていたじゃないですか。あれは、かかとが上がっていると怪我をしやすいからですか。

貴乃花 そうですね。それと、かかとからつま先、土踏まずの力を使わないとやはり相手に力が伝わらないので、攻撃にならないんです。ただ、それぞれ人間は身体の使い方の癖がありまして、その癖をいかに稽古場で直せるかというところが大切なんです。

長谷川 すり足で寄っていくほうが大変ですよね。

貴乃花 はい。そう言えばうちは毎年、2泊3日ぐらいで15歳のサッカー日本代表の子たちをお預かりしてるんです。その子たちも四股を教えると上手に踏みますよ。

長谷川 そうなんですか。あれぐらい真剣な稽古をあの年代で体験するのは、相当いい刺激になると思います。

貴乃花 いま子どもたちは遊ぶ場所がなくなって、家のなかも西洋式になって、裸足で土の上に立つということがあまりないと思うんです。ですから、子どもたちにはなるべく土踏まずで土をつかむ感覚を覚えてほしい、と思ってやってるんですけど。

長谷川 なるほど。ところで相撲の場合は、場所と場所の間が大体1カ月半くらいですか?

貴乃花 はい。

長谷川 その間、毎日あの時間帯に4、5時間、稽古をするんですか?

貴乃花 様子を見ながら、一週間に何回かは休みを入れたりしています。それと、午後はジムに行かせています。ローテーションで、うまく身体作りをしていこうと。

長谷川 今日、一番初めに稽古されたのは、まだ若い子だったと思うんですけど、彼が最後に練習したレベルになるまで何年ぐらいかかるんですか。

貴乃花 本人がやる気を出してやったら、もう4、5年ぐらいで。

長谷川 5年ですか……。

貴乃花 ええ、なれると思います。

長谷川 相撲部屋には、16歳くらいで入ってくるんですか。

貴乃花 そうです。15歳で入った子が一番若いです。

長谷川 そのような若いお子さんを預かって、親方はまず最初にどんなことを教えているんですか?

貴乃花 相撲部屋の場合は、やはり生活を丸ごと引き受けますので、まずはこの相撲部屋の生活に慣らすことから入ります。でもやっぱり、若いから誰もがホームシックになるんです。それでもとにかく帰る場所は実家じゃなくてこの相撲部屋、ここしかないんだよというところにうまくはめ込んでいく。まあ、いまうちにいる子たちは志願してきた子ばかりですからね。あとは炊事とか洗濯、掃除のやり方ですね。家族と同じです。血の繋がりはないんですけれども、それ以上の関係というか、本当の子供と同じぐらいの感覚はありますね。

長谷川 それぐらい愛情を持っていないと、なかなか……。

貴乃花 そうなんです。だから厳しくも言うんですけど、ちゃんと押して引いてをしてあげないと、ネガティブな状態になったら戻ってくるのに時間がかかるんです。いまの若い子は5年周期くらいでどんどん繊細になっていると思うので、相撲部屋で5年周期で元に戻すという作業をしています。

長谷川健太(はせがわ・けんた)
1965年、静岡県生まれ。ガンバ大阪監督。清水東高等学校、筑波大学、日産自動車でプレーし、Jリーグの創設に合わせて1991年に清水エスパルスに加入。決定力の高いFWとして1999年まで活躍した。J1通算207試合45得点、日本代表27試合4得点。現役引退後、浜松大学サッカー部(現・常葉大学浜松キャンパス)のサッカー部を指揮、2004年に日本サッカー協会S級指導者ライセンスを取得し、2005年から2010年まで清水の監督を務めた。サッカー解説者を経て、2013年にG大阪の監督として現場復帰を果たしている。
貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年、東京都生まれ。貴乃花部屋親方。第六十五代横綱・貴乃花。二子山部屋(当時は藤島部屋)入門時から最年少幕下優勝、最年少幕内優勝、最年少全勝優勝など数々の記録を樹立し、1994年に横綱に昇進。生涯戦績は794勝262敗。幕内優勝22回、殊勲賞4回、敢闘賞2回、技能賞3回。2003年に引退を発表して、30歳で一代年寄貴乃花を襲名する。現在は貴乃花部屋の師匠、日本相撲協会理事ならびに地方場所(大阪)担当部長を務める。

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