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東アジアカップ コリャコリャ日記 第1回「選挙特番より熱いやつをよろしく」

2013.07.21

日本代表を率いるザッケローニ監督 [写真]=Getty Images

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文/竹田聡一郎

 ツケを払うべき時がきた、といった感じだろう。

 アルベルト・ザッケローニが日本代表監督に就任して、3年が経とうとしている。
 日本代表として初のイタリア人監督で、本人もナショナルチームを率いるのは初めてだ。就任まで、マヌエル・ペジェグリニ、ホセ・ペケルマン、マルセロ・ビエルサと候補者のビッグネームが気泡のように浮いては消え、某新聞は一面で誤報を出したほどである。原さんは常に火消しなのか言い訳なのか知らんけどそれをしながら、監督代行まで務め大忙しだった。個人的にはアーセン・ベンゲルを狙ってフィリップ・トルシエをとってきた件を思い出した。

 しかし、そんな僕の悪い予感や協会のすったもんだをよそに、ザックジャパンは順調すぎるほど順調だった。アルゼンチンに勝ち(2010年10月)、アジアを制し(2011年1月)、1年あまりのべ16試合で一度も負けなかった。協会は契約延長をオファーしサインをもらった(2012年5月)。さらにその秋にはアウェイでフランスにも勝った(2012年10月)。

 チームを構成する選手たちもプレミアやセリエA、ブンデスをはじめ、欧州で主力となりつつあった。選手の口から「W杯優勝」という大きな言葉がでるようになったのは自然の流れかもしれない。

 ただ、アジア制覇に酔い、ザックを礼賛することに腐心して、我々、協会もマスコミもファンも、誰もが疑うことを忘れてしまった。昨年、見事なカウンターでフランスに勝った後、専門誌が行なった「ザックジャパンを支持しますか?」というアンケートでザックの支持率が80%を超えたのを記憶している。
 
 ツケとは例えば、遠藤や長谷部のバックアッパーである。ザックジャパンの背骨である彼らの負傷や出場停止にどう対応するのかの解答はまだない。また、本当に彼らがベストチョイスなのか。

 さらにスーパースターとなった本田だが、“エア移籍”なんて言葉が生まれるほど彼の所属と所在は揺蕩っていて、仮にこの夏、ACミランに移籍してもポジションが約束されているわけではない。本田に依存しすぎなのではないか。 

 いちばん根が深いのがCBである。コンフェデを観ていても現時点では世界のアタッカーをシャットアウトできるとは思えない。吉田と今野をファーストチョイスにする理由と、あと10ヶ月で世界と戦えるようなポテンシャルを秘めた若手を提示しなければならない。

 世界では、劣勢の中で明らかなコンセプトを持ったジョーカーも必要だ。コンセプトという意味ではハーフナーは明確なものを持っていたが、なんせ控え目にいっても木偶である。単発でもいい、結果を出せる飛び道具がほしい。

 これらの課題を我々は、アジア制覇やまぐれ勝ち(というと若干、筆が滑った感があるが、ある意味では的を射ているだろう)にかまけて追求してこなかった。

 しかし、ありがたいことに、コンフェデ杯がそれを気付かせてくれた。世界との距離は確かに縮まっているけれど、決してカップに劇的に近づいているわけではない。

 そこで、上記のようなツケを清算するための東アジア選手権である。

 具体的に挙げると、森重真人はリスクを負いながらもミスなくビルドアップが、時には決定的なクサビを入れることができるのか。豊田陽平はオーストラリアの大男相手に制空権を奪えるか。槙野智章は持ち味のトリッキーな攻撃参加で違いを作れるか。山口蛍や扇原貴宏は長谷部と遠藤よりも大きなスケールと滑らかな連携を中盤で誇示できるか。齋藤学は切り札に、あるいは柿谷曜一朗は新エースに、すべてを挙げるとキリがないが、それぞれ期待されている個性と長所を強調し、ザックジャパンというパズルにはまることを示してほしい。

 そしてザッケローニがどのピースを選ぶかによって残り10ヶ月の準備期間でニッポンをどう強化するかが見えてくる。見えてこなければいけない。CBひとつとっても森重を選ぶのであれば、最終ラインからリスクを背負ってポジショニングをするという意図だし、例えば鈴木大輔や栗原勇蔵を吉田麻也と組ませるのであれば、ポゼッションは二の次でとりあえず最終ラインにフタをしたいという優先順位が透けてくる。

 そうやって個と組織を融合させ、それを共有しないことにはブラジルやイタリアには勝てない。コンフェデで痛感したとおり、まだまだ我々はサッカーが弱いのだ。あがいて模索しなければならない。

 前置きが長くなってしまったが、大会期間中、こうしてコリャコリャとザックジャパンを批判ではなく、分析と懐疑というスタイルで、それでもブルダックのように激辛に斬って行こうと思っている次第だ。

 というか、今、韓国にいるファンもマスコミも、ユナイテッドやガナーズの来日より池上彰の選挙特番より、10人を超える俊英の代表デビューを選んだんだから、それなりのものを見せてくれんと暴れるぜ、っていう話ですわ。では第一戦、いってみよう。

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著者/竹田聡一郎(たけだ そういちろう)
1979年神奈川県生まれ。同い年の小野伸二にヒールで股抜きされたことを妙な自慢としながら、フリーランスのスポーツライターとして活動。戦術やシステムを度外視した「アンチフットボールジャーナリズム宣言」をして以来、執筆依頼が激減したのが近年の悩み。著書に蹴球麦酒偏愛清貧紀行『BBB』(ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅/講談社文庫)と、スルガ銀行のサッカーweb「I Dream」で連載中のコラムを書籍化した『日々是蹴球』(講談社)がある。
twitter:@takedasoichiro

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