2013.06.12

柴崎 岳(鹿島アントラーズ)「熱く、冷静に見据える未来」

サムライサッカーキング7月号 掲載]
21年前、Jリーグが産声を上げた翌年に生まれた寡黙な青年は今、日本でもっとも注目を集める若手となった。ゲームを掌握するパスと、自己を冷静に分析する能力はとても若手とは思えないが、それでいて胸の内にたぎる想いは情熱的だ。その視線はどこを捉え、見つめているのか。
柴崎岳
インタビュー・文=浅野祐介 写真=佐山順丸

絶対的な自信と慎重さを生み出す謙虚さ

──サッカーを始めたのは何歳の時ですか?

柴崎 フットサルですが、練習に初めて行ったのは小学1年生の冬です。二人の兄の影響でサッカーを始めました。

──11人制のサッカーを始めたのは?

柴崎 小学2年生の春ですかね。

──当時のポジションはどこでしたか?

柴崎 FWでした。

──点取り屋だったんですか?

柴崎 結構入れていましたね。フットサルをした時も、最初に出た試合で点が取れて、楽しかったです。そこで取らなかったらやめていたかもしれないです。

──プロを意識したのはいつ頃ですか?

柴崎 意識という意味では、サッカーを始めた頃からあったかもしれません。

──青森山田高校時代は1年生からレギュラーでしたが、当時は自分のどういうプレーに自信を持っていましたか?

柴崎 パスには自信がありました。僕のプレースタイルではそこに自信がなければいけませんし、そのポジションで重要となる部分をしっかり伸ばして、どんどん自信を深めようと思っていました。パスやトラップは人並み以上に自信があったと思います。

──2年生の時に、高校選手権で準優勝を果たし、鹿島アントラーズと仮契約を結びました。プロでやっていける自信はどれくらい持っていましたか?

柴崎 半々でしたね。ただ、それはすごく良いことだったと思います。自信があるだけでもいけませんし、ネガティブになり過ぎてもいけません。

──2011年4月29日のプロデビュー戦は覚えていますか?

柴崎 覚えています。緊張しましたね。

──ピッチに立つと落ち着きましたか?

柴崎 そうでもないですね。呼ばれた時はすごく興奮しました。たった数分の出場でしたが、僕にとってはスタートだったので、全力でやろうと思いました。

──同年の10月にプロ初ゴールをマークしましたが、初ゴールを決めた時はどういう心境でしたか?

柴崎 僕自身は初ゴールという感じがしませんでした。既に何試合か出場していましたし、「やっと取れた」、「1点取れて良かった」という自分がいました。大喜びという感じではなかったですが、自信にはなりましたね。

──1年目はリーグ戦13試合の出場でした。シーズンを終えた時のプロとしての手応えはどうでしたか?

柴崎 すごく自信になったシーズンでした。なので2年目は、1年目よりもやれるという感覚がありましたし、1年目よりもやらなければいけないと思いました。試合出場数ももっと伸ばしたい、伸ばしていかなければいけないと。

──12年はヤマザキナビスコカップのタイトル獲得を含め、目に見える形でチームに貢献したと思います。2年目を終えての感想はいかがでしたか?

柴崎 2年間プレーし、新人という感覚ではなくなっていますし、常にもっとやらなければいけないと思っています。タイトルを獲得したことで満足するのではなく、その経験は次に生かしていかなければいけないと考えました。

──鹿島の一員として、タイトルを獲得したことで得られたものはありますか?

柴崎 こういう思いは何回でもしたいと思いましたし、それを求めてやっているのだと感じました。タイトルが懸かった試合に出場していると、違った気持ちが生まれ、達成感がありました。

──Jリーグアウォーズではベストヤングプレーヤー賞を受賞しました。表彰された時に、世界の同世代を見るともっと伸ばしていかないといけない、という主旨のコメントをしていましたが、世界という視野で、どういう部分を伸ばしていきたいと考えていますか?

柴崎 国によっていろいろな特長があるので、日本人選手が持っているスタイルを確立して、”日本のサッカー”を出していかなければと思います。日本人選手は世界の選手にはない部分を持っていると思いますし、それを前面に出してやっていきたいです。いろいろな国でレベルの高いサッカーが行われているので、そこに身を投じてレベルアップすることもそうですし、それを還元して日本のサッカーに取り入れるのも大事だと思います。

──日本人選手の良さや特長はどういう部分だと思いますか?

柴崎 完璧主義というか、プレーに対してパーフェクトにやろうという真面目さや勤勉さを持っていると思います。オフェンスもディフェンスも常に全力でやります。プレー面でいうと、敏捷性が優れていて、ヨーロッパの選手が日本人のドリブラーに対して手を焼くシーンがありますしね。身体が大きいわけではないですが、だからこそやるべきサッカーがありますし、もっと通用する部分もあると思うので、それを見付けていかないといけません。

日本代表に定着して海を渡るという青写真

柴崎岳
──09年にU-17日本代表としてU-17ワールドカップに出場しました。ブラジル、スイス、メキシコと対戦し、3敗を喫しましたが、世界との差はどの辺りに感じましたか?

柴崎 「通用しない」とは感じませんでしたし、立場が逆転していてもおかしくない試合もありました。まだ17歳でしたから、これからが勝負だと思う部分もありました。技術も負けていませんでしたし、その歳で、その試合に勝つことがすべてではないので、そういった経験を生かして差を縮めていきたいと思いました。選手として伸びるのはもっと後だと思っていました。

──日本代表を意識したのはいつ頃ですか?

柴崎 漠然とですが、日本代表に入りたいとは常に考えていました。

──12年2月のアイスランド戦で初招集となりました。どういう気持ちでしたか?

柴崎 鹿島の合宿中にスタッフからいきなり「おめでとう」と言われたので、最初は何のことか分からなかったです。A代表は良い経験ができる場であり、そこでプレーできることに驚きと嬉しさがありました。

──代表の選手たちと一緒にプレーしてみて感じたことはありますか?

柴崎 国内組のみだったのですが、代表の空気感に触れる勉強になりましたし、普段は一緒に練習ができない選手たちなので、違った刺激がありました。

──日本代表に加わったことで、代表への思いや意識、普段の練習への取り組み方で変わった部分はありましたか?

柴崎 また行きたいと思いましたし、自分に足りない部分を見付けられたと思います。自分のプレーがどれくらい通用するかを図れる場所でした。それを持ち帰ってどれだけ改善できるか。鹿島で結果を残すことが、代表に呼ばれるためには重要なのだと感じました。

──来年はW杯が開催されますし、今年はコンフェデレーションズカップがあります。その2大会に向けて、柴崎選手はどういうビジョンを描いていますか?

柴崎 自分が呼ばれるかどうかという点では、コンフェデ杯は難しいと思っています。そこで選ばれるのがすべてではないですしね。その後の親善試合に呼ばれ、そこで良いパフォーマンスをして、というふうに徐々に呼ばれるようになりたいです。最終的には来年のW杯でメンバーに入ることが目標です。

──海外への興味は持っていますか?

柴崎 もちろんあります。将来的にプレーしてみたいと思っています。

──挑戦したいリーグ、普段よく見ているリーグはありますか?

柴崎 見ているリーグと行きたいリーグは違うと思います。今はヨーロッパを中心にいろいろ見ていますね。

──挑戦してみたいリーグは?

柴崎 体格的にプレミアリーグは難しいと思いますが、ブンデスリーガでもセリエAでもリーガ・エスパニョーラでも、リーグの全チームがその国のサッカーをしているわけではないです。チームによって違った特長を持っているので、その辺も加味したいですね。

──スタイルとして注目しているチームはありますか?

柴崎 いろいろなスタイルを持っているチームがあるので、一概には言えないですね。個人的には、自分のポジションの選手を見て、良いところを学ぼうと思っています。ロングボールを蹴るサッカーでも、ショートパスをつなぐサッカーでも、同じポジションの選手を見るようにしています。

──参考にしている、よく見る選手はいますか?

柴崎 試合の中でポジションが同じ選手を見ています。

──鹿島の先輩でいうと、内田篤人選手がドイツのトップレベルで活躍していますね。先輩の存在で刺激を受けることはありますか?

柴崎 先輩とはいえ、一緒にプレーしたことはないので、特別に注目しているというわけではありませんが、今は多くの日本人選手がヨーロッパでプレーしていますし、そういう選手たちの試合を見て勉強しながら、「自分だったらどうすればいいか」を考えています。通用するかしないかは、プレーだけではなく環境の問題も大きいと思うので、情報として得ていたいと思います。

大切なことはサッカーだけにあらず

柴崎岳

──プロを目指している中高生は、日々どういう気持ちで練習に取り組んでいくべきだと思いますか?

柴崎 本当にプロを目指しているのであれば、行動も習慣も変わると思います。練習は積み重ねなので、何が足りないのかを考えて行動することが重要です。それができない選手も多いと感じていますが、それができればプレーも変わります。監督やコーチには優秀な人がたくさんいるので、練習メニューを聞けば教えてくれると思いますし、あとは取り組む中での自分の意識が大事です。一つひとつの練習に集中して取り組み、続けること。僕はそれをやってきたことで今の仕事に就けたので、狙い通りだったと思います。

──柴崎選手自身が10代の頃に取り組んでいたこと、考えていたことで、今にもつながっているものはありますか?

柴崎 今思えばサッカーだけではないということですかね。練習をすれば上手くなるのは当然ですが、サッカー以外の面を伸ばしていくことも、サッカーが上手くなる一つの要素だと思います。自分の考え方や、人にどう接するかという人間性の部分が非常に大事だと思います。人として成長することが、サッカー選手としての成長につながると思います。僕自身がそういう環境で育ってきました。礼儀作法を大切にする部活でしたし、その中で自分を磨くことが、プロになれた一つの要因でもあると思います。

──高校の部活で意識して取り組んでいた練習メニューはありましたか?

柴崎 いろいろなボールを蹴りたいと思っていました。左右両足、高い球、低い球、速い球、遅い球、回転のあるなし。受ける人がその状況で受けやすいボールを出すことを考えていました。

──若い世代がトップレベルと対戦していく場合、どういうことを吸収していってほしいと思いますか?

柴崎 そういう機会は本当に貴重だと思います。自分の持っているレベルが高ければ高いほど、そういった場所に行く機会も自然と多くなります。裏を返せば、レベルの高いところでやりたければ、自分が上手くなるしかないです。そう何度もない経験だと思いますし、普段とは違う刺激を得られると思うので、その機会を大事にして、常に自分が上手くなるために考えることが必要だと思います。

──なるほど。最後に、今シーズンはどういうシーズンにしたいと思いますか?

柴崎 鹿島のタイトル獲得に貢献することです。リーグ、ナビスコ杯、天皇杯、スルガ銀行チャンピオンシップの4つをすべて獲れるようにやるだけですし、個人としても成長できればと思います。