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マンUの“伝説”ギグス「まだプレーを楽しめるのに、引退する理由がどこにある?」

2013.05.17

デビュー当時のギグスは、快足自慢の左ウイングとしてリーグを席巻した。

[ワールドサッカーキング0606号掲載]

マンチェスター・ユナイテッドの黄金期を支え続け、数々の栄光を経験した。23シーズンに及ぶそのキャリアは、既に「伝説」の領域に達している。それでもまだ、ライアン・ギグスの目は過去ではなく、未来を見続けている。

ギグス
インタビュー・文=クリス・ヘザラル Interview and text Chris HATHERALL
翻訳=田島 大 Translation by Dai TAJIMA
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

 4月22日、マンチェスター・ユナイテッドはアストン・ヴィラを破り、2シーズンぶりの優勝を決めた。試合が終了した時、自身13回目となるプレミアリーグ制覇の瞬間を、39歳のライアン・ギグスはピッチ上で迎えていた。この試合で、彼は90分間フル出場しただけでなく、2つのアシストまで決めてみせた。

 ギグスのリーグデビューは1990-91シーズン。プレミアリーグがまだ「ディヴィジョン・ワン」と呼ばれ、スカイスポーツの衛星中継も、オールド・トラッフォードのメガストアも存在しなかった時代だ。今では信じ難いことだが、マンチェスター・Uは20年以上もリーグタイトルから遠ざかり、「終わったチーム」と見なされていた。そこに、17歳のギグスは突然現れ、すべてが変わった。

 それから23年。ありとあらゆるタイトルを手に入れてなお、彼はピッチに立ち続けている。「生けるレジェンド」はまだ、そのストーリーを完結させるつもりはない。「このチームには、今まで以上にエキサイティングな未来が待っていると信じている」

 過去ではなく、未来を見続ける精神。それこそが、ギグスを「レジェンド」たらしめる理由なのだろう。

タイトル奪還はスペシャルだった

――まずはお祝いの言葉からだ。プレミアリーグ優勝おめでとう。君にとって13回目の優勝、その1カ月前には、クラブとの契約を1年間延長した。グッドニュースだね。

ギグス ありがとう。優勝は何度味わってもいいね。そのために現役を続けていると言ってもいい。僕の年齢になると心からそう思うんだ。タイトルを手にする瞬間を、チームメートと一緒に味わい続けたいってね。

――昨シーズンは最終節でマンチェスター・シティーにタイトルを譲ってしまった。さすがにこのままじゃ引退できないと思っただろう?

ギグス まあ、そうだね。その意味でもタイトル奪還はスペシャルだった。あんな形でタイトルを逃した次のシーズンに、(ロビン)ファン・ペルシーの華麗なハットトリックで優勝を決めることができた。ファンにとっても最高の展開だったと思うよ。

――プレミアリーグのタイトルを奪還できた最大の理由はどこにあると思う?

ギグス 戦う姿勢、勝利への意識で、ユナイテッドが他のチームを上回ったということだろうね。特にシーズン序盤、センターバックにケガ人が続出しても大崩れしなかったのは、単に選手層が厚かったからじゃない。ベストメンバーがそろわなくても絶対に勝つという気迫が大事なんだ。

――今シーズン、優勝を意識したのはいつ頃だった?

ギグス クリスマス頃かな。ケガ人が戻ってきて、課題だった守備が安定し始めた。逆に、攻撃陣には優秀な人材がそろっているから、あまり不安はなかったよ。

――優勝を決めたアストン・ヴィラ戦はフル出場したけど、最近はコンスタントに試合に出ているわけじゃない。不満を感じる?

ギグス  いや、ここ数年はずっとそんな状況でプレーしてきたから、もう慣れたよ。あまり気にはしていない。むしろ、そのおかげでシーズン後半の重要な時期に向けて、いい準備できたんじゃないかな。大切なゲームではピッチに上がっていたし、チームに貢献できた実感もある。

――試合に出られない時期があっても焦ることはない?

ギグス もちろん。しっかり準備して、チャンスを待つ。他の選手と条件は変わらないよ。コンディションが万全ならサー・アレックス(ファーガソン監督)は必ずチャンスをくれるからね。

チャンスを作れるしゴールも決められる

――今シーズンは公式戦の通算出場数が1000試合を超えた。偉業を達成した感想は?

ギグス 月並みな言い方になるけど、誇らしい気持ちでいっぱいだ。だって、ユナイテッドの一員になった時、僕の最初の目標は「ファーストチームで試合に出ること」だったんだから(笑)。その頃から、僕はずっと努力してきた。ただ、1000試合出場を自分一人の力で達成したとは思っていない。素晴らしい監督とチームメートに恵まれたことに感謝している。

――メモリアルの1000試合目は、物議を呼んだレアル・マドリー戦だった。あの敗戦はショックだろう?

ギグス 僕は「どの試合にも必ず学べることがある」と信じている。だから、割と冷静に受け止めているよ。もちろん、思い出すのも嫌なくらい悔しいことは認めるけどね。

――なるほど。単純な質問だけど、これまで1000試合もプレーしてきて、フットボールに飽きたりしない?

ギグス (笑)。いや、むしろ逆だね。僕は年齢を重ねるにつれて、以前よりもこのスポーツを純粋に楽しめるようになった。昔よりもフットボールを深く理解しているし、プレーできるうちに楽しもうという意識もある。例えばチャンピオンズリーグの優勝にしても、最初の時(98-99シーズン)より2回目(2007-08シーズン)のほうが喜びは大きかった。

――もう何度も聞かれていると思うけど、改めて教えてほしい。君はあとどれくらい現役を続けるつもりなんだろう? ファーガソン監督は、君ならあと2年はプレーできると言っていたけど。

ギグス どうだろう。こればかりはやってみないと分からないな。チームに貢献できる限りはプレーしたいけど、僕の年齢になると、さすがに2年後のことは考えられない。

――つまり、現役引退の時期は具体的には決めていない?

ギグス そうだね。確かに、僕にはそれなりの経験があるし、ピッチ外の様々な部分でチームを助けられるとも思っている。だけど、ピッチ上でもまだやれるってことを忘れてほしくはない。僕はチャンスを作れるし、ゴールも決められる。まだプレーを楽しめるのに、引退する理由がどこにあるんだい?

ファーガソンは異次元の監督だ

ギグスがファーガソン監督、1年間の契約延長について言及。続きは『ワールドサッカーキング0606号』で!

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