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フリースタイルフットボールで、サッカーをより楽しく 横田陽介(株式会社Ball Beat代表、「Ball Beat Crew」リーダー)

2015.11.24
横田陽介

「いまだに自分のスタイルが一番気に入っているし、自分のプレーが一番かっこいいと思っています」

 自信に満ちた表情で語るのは、2008年にフリースタイルフットボールの世界大会「Red Bull Street Style」で準優勝に輝いた横田陽介さんだ。

 横田さんは現在、フリースタイルフットボール集団「Ball Beat Crew」のリーダーとして活動しており、国内外でパフォーマンスを行っている。その他にも、都内を中心にフリースタイルフットボールスクールを運営したり、フリースタイルフットボール日本一を決める大会「Japan Freestyle Football Championship」をオーガナイズしたりするなど、シーンの普及に幅広く携わっている。

 近年、個人としては徳田耕太郎さんが、チームとしては「ALEG-Re」が世界チャンピオンに輝き、流行の兆しを見せるフリースタイルフットボール。その世界でパイオニア的存在である彼が、シーンの魅力や今後の展望を熱く語ってくれた。

サッカーを楽しむツールとして、フリースタイルフットボールを始めた

 横田さんがフリースタイルフットボールを始めたのは、高校3年生の時だった。サッカー部を引退後、指導者への道を歩み始めたが、実際にコーチになった時、指導する子供たちの心をつかめるように、という思いから、フリースタイルフットボールを練習し始めたという。しかし、始めて半年もたたないうちに日本のトップレベルに到達し、次第にフリースタイルフットボーラーとしての道を歩み始めるようになった。

「始めたばかりの頃は、やっている人が少なかったし、大会やパフォーマンスに出る機会もほとんどなかったですね。普段は一人で練習していましたが、1カ月に1度、代々木公園にみんなで集まってYJAMと呼ばれる練習会をするのが楽しかったです」

 シーンが発展を遂げていく中、2008年に「Red Bull Street Style」が行われた。フリースタイルフットボール史上初となる世界各地で予選を行うこの大会、横田さんは約80人が出場した日本予選を勝ち抜き、世界への切符を手にした。

 半年後にブラジルで行われた世界大会では決勝戦に進出し、フランス代表の選手に敗れて準優勝となった。42カ国の選手が参加した大会で世界2位という快挙を成し遂げたが、帰国後の反響はあまり大きなものではなかったという。

「自分の生活が激変したわけではなかったですね。メディアでの露出は一時的に増えましたが、パフォーマンスの機会が増えたわけでもないです」

 大会のしばらく後に、当時所属していたチームから独立してソロ活動を続けていたが、一人でフリースタイルフットボールをする中でのパフォーマンスの幅に限界を感じていたという。その限界を超えるために結成したのが「Ball Beat Crew」である。

「チームみたいにみんなが同じ目標に向かって進むというよりも、同じ船に乗ってみんなが違う目標に向かっている、そんな仲間を作ろうと思いました。だから、あえて『チーム』ではなくて『クルー』と名付けたんです」

 Ball Beat Crewのメンバーは、今も違うチームに所属して別々の目標を追いかけながらも、同じ「船」に乗って活動している。

横田陽介

フリースタイルフットボールとサッカー

 高校3年生の時にフリースタイルフットボールと出会い、10年近くシーンの中心として活躍してきた横田さんだが、「つらかった経験はなかった。楽しいことしかやっていないので」と、きっぱりと言い切る。

「自分の場合はサッカーの延長線上にフリースタイルフットボールがあって、サッカーをより楽しむためのツールの一つだったんですけど、大会やイベントが増えてカルチャーが大きくなっていくと同時に、サッカーとは違った魅力も感じるようになってきました。その頃にはフリースタイルフットボールのことが大好きになっていましたね」

「サッカーはいつまでプレーしていたんですか?」と良く聞かれるそうだが、サッカーの延長線上としてフリースタイルフットボールを始めた横田さんには「俺の中ではまだサッカーをしている」という感覚がある。実際に東京都フットサルリーグのチームにも所属し、その感覚は横田さんのプレースタイルからもうかがえる。

 フリースタイルフットボールでは、ボールを足元からできるだけ離さずにリフティングをするために、爪先でチョンチョンと無回転のリフティングをするプレーヤーが多い。だが、横田さんはサッカー選手と同様、インステップで縦回転をかけながらリフティングをしている。

「サッカーから離れ過ぎず、でもサッカーにはない魅力を持っているプレースタイル」

 これが横田さんの掲げる理想である。

オーガナイザーとしての責任

 冒頭でも紹介したとおり、横田さんはプレーヤーとして活動するだけでなく、大会のオーガナイズも行っている。

「自分が大会に出た時、オーガナイズが細かい所までしっかりしていなくて選手たちの努力や実力とは違った部分で有利・不利が決められて、悔しい思いをしたことがあるんです。周りの選手も同じようにモヤモヤしているところがありましたが、これはフリースタイルフットボールと距離がある人が大会をオーガナイズしていることが原因だったと思うんです」

 フリースタイルフットボールの大会は一般企業などが主催することも珍しくはなく、プレーヤーの声が反映されていないことは多い。まだまだ未完成なフリースタイルフットボールのシーンを確立させるべく、横田さんは「自分にしかできない役割」を全うしている。

「自分にしかできない日本大会を作って、こうやって大会を開くんだよっていうノウハウを伝えたいですね。たぶんやろうとしている人も、やろうと思ってできる人も自分しかいないので」

 今春に自身のオーガナイズで開催した「Japan Freestyle Football Championship」も、来年は規模を拡大して行う予定だという。しかし、オーガナイザーとして活動することの難しさも感じているようだ。

「自分の会社(株式会社Ball Beat)が主催ということで、すごく仕事が多くて、最後の一週間くらいは電話もメールもひっきりなしでした。来年の準備がそろそろ始まりますからね……」

 それでも、フリースタイルフットボールというアンダーグラウンドなカルチャーを拡大し、仲間を増やすために、横田さんは足を止めない。

「自分はフリースタイルフットボールを通して様々な活動をしているのが本当に楽しいし、これだけ楽しいことがあるというのをみんなに知ってもらって、自分と一緒に楽しむ仲間が増えてほしいですね」

横田陽介

ボール一つで豊かに

 フリースタイルフットボールの魅力について、横田さんは数秒間悩んだ末に「何でしょうね」と答えた。

「いろいろありすぎて一言じゃ表わせないですけど、フリースタイルフットボールがあることで人生が豊かになりました。そうやって、それぞれみんなが持っている好きなことをやればいいんじゃないかと思います」

 フリースタイルフットボールを始めて間もない頃、横田さんはフリースタイルバスケットボールやダブルダッチ、BMXなどのプレーヤーと共に全国を駆け巡り、パフォーマンスを行った。その時に他のカルチャーから刺激を受けたと同時に、サッカーの延長線上として捉えていたフリースタイルフットボールが、ストリートカルチャーでもあることを実感したそうだ。

 ストリートの仲間が集まる「SatisAction」というパーティーを定期的に開催しているのも、当時の影響が大きいという。このように他のカルチャーとの交流が深まり、自分の世界が広がることも、フリースタイルフットボールの大きな魅力だろう。

「ストリートの先輩たちは外の世界にすごく興味を持っていて、同時に自分たちの存在を伝えようと外へ向かう力が強く、視野が広いです。その姿勢を自分も見習っていて、自分が他のジャンルと絡むだけでなく、絡むことによって他のジャンルの人がフリースタイルフットボールに興味を持ってくれる。そんなWin-Winの関係を作れればいいんじゃないかと思います」

 最後に、サッカーファンに向けて、フリースタイルフットボールの楽しみ方を教えてくれた。

「フリースタイルフットボールを、サッカーをより楽しむための一つのツールとして利用してみてください。一つでも技ができたらサッカーが楽しくなるけど、プレーするだけがフリースタイルフットボールではないので。自分も含めていろんなプレーヤーがいるので、活動を追い掛けて応援するのも楽しいんじゃないかと思います。自分の生活をほんの少し豊かにするために、フリースタイルフットボールを利用してください」

インタビュー・文=田中紘夢(サッカーキング・アカデミー
写真=兼子愼一郎

●サッカーキング・アカデミー「編集・ライター科」の受講生がインタビューと原稿執筆を担当しました。
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