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サッカー×エンターテインメントの新たな可能性を探りたい 高橋健史(FC大阪 クラブ事業部マネージャー)

2015.09.03
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「試合観戦以外の目的でも、スタジアムに足を運んでいただきたいと考えています」

 そう語るのは、FC大阪クラブ事業部マネージャーの高橋健史さんだ。さらに自信に満ちた表情で、チームの魅力を的確に分析する。

「我々の試合を一度見ていただければ、友達や家族の付き添いなどで来られた方でも楽しんでいただくことができると自負しています。JFLだからと言って、上のカテゴリーのチームに比べて退屈な試合を披露するわけではありませんよ」

運営という新たなやりがい

 FC大阪は現在JFLに所属しているプロサッカークラブだ。大阪府社会人リーグで初優勝してから順調にカテゴリーを上げていき、2015年にJFL昇格を果たした。飛ぶ鳥を落とす勢いでステップアップしており、ガンバ大阪、セレッソ大阪に続く“大阪第三のクラブ”として、将来的なJ1リーグ昇格を目指している。

 JFLに昇格したことにより、メインとなるスポンサー収入、グッズ収入以外に、チケット収入という新たな資金源を獲得した。ここから先のカテゴリーであるJ1、J2、J3には、各地域を象徴するクラブが数多く存在している。その中で存在感を示すには、生で見たいと思えるような試合を披露すること以外にも、様々な策を講じる必要がある。高橋さんが取り組んでいるのは、そのような業務だ。

 高橋さんは2009年、選手兼スタッフとして徳島ヴォルティスからFC大阪に加入した。

「選手だけでなく、フロントスタッフとして所属させていただける点に魅力を感じましたね。当時はプロリーグに所属していない状態でしたし、これからクラブをどんどん大きくしていく必要がある中で、クラブ運営に携わらせていただける点にやりがいを感じました」

 クラブの運営という、これまでとは勝手が違う役割を担うようになったが、困難に感じたことは一度もなかった。

「このクラブは自分にいろいろなチャレンジをさせてくれました。どんどんカテゴリーが上がっていくにつれて、やれることが増え、ファンや支援してくださる方が増えて、自分たちでクラブを作り上げているんだということを実感できたので、全く苦じゃなかったです」

「また来たいな」と思っていただきたい

 2015年からJFLに上がり、チケット収入を得られるカテゴリーになったため、クラブの運営を安定させるためにも、観客動員数を伸ばす工夫が必要になる。

「私たちはサッカー好きな子供たちを観客動員のターゲットの一つに設定しています。そのため、試合前にサッカー教室を開いたり、スタジアム全体を使ったなぞなぞイベントをしたりと、子供たちがスタジアムに来てくれるきっかけ作りをいろいろ考えていますよ。子供たちが喜ぶ企画をすれば、保護者の方がついて来てチケットを買って入場してくれますし、イベントを開催することで、試合自体はもちろん、それ以外の部分でも魅力を感じていただける。『また来たいな』と思っていただけるよう、努力しています」

 FC大阪は試合以外でも集客が望めるようなイベントや企画を数多く考えている。その中で一際、目を引く取り組みが、『FC大阪広報ガールズ』やFC大阪公式ダンス&ヴォーカルユニット『As Bonitas』(アス ボニータス)だ。広報ガールズはスタジアムでのグッズ販売やレポート、ファン感謝祭等のイベントへの出演など、文字通りFC大阪の広報として活動し、As Bonitasは試合会場でのハーフタイムショー等のパフォーマンスや選手と一緒にイベント活動などを行っている。

「これらのグループを作ることで、彼女たちのファンを作り、そこからFC大阪のファンやサポーターになっていただくのが狙いです。彼女たちが活動をしていくうちに、彼女たちのファンができたんですね。中には、彼女たちがスタジアムに来るということで足を運んでくださる方もいて、その方々にも試合を観戦していただけますし、その中で『サッカーって面白いな、FC大阪って面白いな』と思っていただけるとありがたいなと。実際、そういうきっかけから我々のサポーターになっていただくケースも多いですね」

 また、これから先はメディアへの露出も考えているようだ。

「カテゴリーがより上になるにつれて、彼女たちの知名度も上がってくると考えています。その結果として、彼女たちだけのイベントや、単独でのメディア露出を増やしたいですね。また、選手と一緒にメディアの取材を受ける機会を頂けるようになり、グループを作った成果も出てきていますね」

 サッカー以外のイベントを開催することで、FC大阪を身近に感じてもらい、そこからサポーターになってもらう。こういう試みができるのも、FC大阪の強みの一つである。

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理想は海外クラブ

 FC大阪のチャレンジ精神は、チーム強化にも表れている。

「我々は、JFLのチームとしては珍しく外国籍選手が在籍しています。複数の海外クラブと提携し、ブラジルにサッカー育成組織を持っているんです」

 FC大阪は、ブラジルの強豪グレミオ、ポルトガルのマリティモといった、様々な海外クラブと提携しており、かつブラジルのポルトアレグレに拠点を持ち育成組織を運営している。そのよう活動は外国籍選手の獲得だけが目的かと思いきや、そうではないようだ。

「私たちの理想は、海外クラブのような運営形態です。海外クラブって、サッカー以外のスポーツ事業にも力を入れていますよね。そういうクラブになって、そこに自分たちの強みであるエンターテインメントを掛け合わせていくのが理想です。海外クラブは日本のクラブよりも優れたノウハウを持っています。また、現地のクラブと提携することで、日本にいる選手たちを我々のクラブから海外クラブへと導くためのルートができます。そうすれば、選手のグローバル化、国際化が進み、お互いに良い効果が生まれると考えています。そしてブラジルに育成組織を持つことで、海外独自のポテンシャルを持った選手がFC大阪のメソッドで育ち、そのまま海外や日本で活躍する。育成組織であるFC大阪-Brasil出身の選手が世界で活躍することもクラブの目標としています」

 では、FC大阪の課題は何なのだろうか。

「まだまだ魅力あるクラブづくりが足りていないと思います。もっと多くの方に応援していただけるようなチームにしたいですね。ホームタウンなどの細かい部分も今後は進めていかなければなりません。Jリーグに上がるためには、あらゆる側面での強化が必要です」

 G大阪、C大阪という2大クラブがある中で、FC大阪のファンの数を増やしたいと語る高橋さんの目に、FC大阪のチャレンジ精神が垣間見えた。

 また、昨年からFC大阪は、FC大阪高等学院という通信制の高等学校を運営している。従来のように定時制の高校等と提携を組むわけではなく、直接、運営に携わっている。これはクラブチーム初の試みだという。

「FC大阪高等学院に入学する生徒は、ユースチーム所属の選手だけはありません。様々な事情により高校に通うのが難しくなった生徒も受け入れています。そういう生徒たちには、ホームゲーム運営の手伝いを課外授業に取り組むなど、サッカーに触れ合える機会を作っています。そういう中で、社会性を少しでも身につけてくれればいいかなと思いますね」

 海外クラブの運営形態を参考にし、様々な事業に取り組もうとする姿勢があれば、目標であるJ1昇格はそう遠くない未来に実現できるかもしれない。

  FC大阪のチャレンジ精神に呼応するかのように、スタッフとして精力的に活動を続ける高橋さん。チャレンジ精神を持ち続ける秘訣について、このような考えを持っている。

「人によって目標は違いますけど、それを達成したいっていう思いだけではかなわないと思うんですね。達成するために今、何が必要かを考え、どういう人に会って、どんな話をして、そこからこんな企画を作ろうっていう道筋を自分で立てる必要があると思います。特にサッカーに携わりたいと考えていらっしゃる方は、目的を達成するための道筋を考えながら行動していただきたいですね」

インタビュー・文=今村俊介(サッカーキング・アカデミー
写真=CORACAO 齊藤友也

●サッカーキング・アカデミー「編集・ライター科」の受講生がインタビューと原稿執筆を担当しました。
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